第13話 信じ合える二人(3)
「次は対向車線に出て二台抜いてから戻って」
「えっ? 対向車線?」
「大丈夫、信じて」
対向車線に出ると、前から車が迫ってくるが、二台抜いて戻るとなんとか間に合った。
「左車線に入って、少し速度を落とす。すぐにもう一つ左車線に移ってアクセル!」
そんな感じで、車線変更しながら、ドンドン車を抜かして前に進んで行く。
ブルーは怖かったが、ブラックのスキャンアイを信じようと思った。彼女の言葉通りに動いている一体感が心地よい。
「あれが先頭よ」
ブルーが指摘した車を抜き、二人の車が先頭車となった。
「スピードを少しずつ落としながら蛇行運転して!」
ブラックは後ろを振り返りながら指示を出す。ブルーはその指示通り、車を操作した。
何度も車を接触させられたが、少しずつスピードは落ち、最後には警察のバリケード前で停止させることに成功した。
「やるな、大地。素晴らしい運転だったよ」
追い付いて来たレッドがブルーを褒める。
「いや、若葉の指示通りに運転しただけだから」
みんなとんだ残業をさせられたが、なんとか解決して解散となった。
「若葉の正確な指示で成功したな。ホント大胆で驚いたよ」
ブルーは帰りもブラックを乗せてアパートまで送っている。
「自信があったからね。絶対に悪いことにならないって」
「えっ、どうして?」
「だって『勘が良いだけの男、サイコレンジャーブルー』が運転しているのよ。大地の第六感が警告しない限り、事故る訳ないって信じてたから」
ブラックは楽しそうな口調で、誇らしげにそう言った。
(そうか、俺が若葉の『スキャンアイ』信じていたように、若葉も俺の『第六感』を信じてくれてたんだ)
ブルーは最高に幸せな気分に包まれた。
「あ、あのさ、今度の土曜日に、またドライブに行かないか? 若葉の好きなところで良いから」
(さっきの言葉の続きは言えなかった。でも良いか。焦らず自分の気持ちに素直になれば)
「ええっ、このでこぼこの車でドライブするの?」
「まあ、ちゃんと動くから大丈夫だろ」
「もう、適当ね。でも良いわ行ってあげる。そんなこともあるかと思って、他にもCDを持って来てるから。ここに置いておくね」
ブラックは彼女らしい笑顔を浮かべてそう言った。
「うん、ありがとう」
「それから、さっきの言葉の続きは、もっとムードのある場面で言ってよね」
ブラックが告白の言葉を遮った理由が分かった。どんな場面で伝えるべきか? ブルーは妄想を巡らせた。
(最高の場面で俺の素直な気持ちを伝えよう。若葉はきっと受け入れてくれるさ)
「みんな、おはよう!」
深夜の暴走行為を阻止した翌日、一番最後に出勤してきたブラックは、いつも以上に明るい挨拶で作戦室に入って来た。
みんな驚いて一瞬顔を見合わせたが、すぐに笑顔で「おはよう」とブラックに挨拶を返した。
(やっぱり若葉は可愛いな……)
ブルーは作戦室に入って来た笑顔のブラックと目が合い、改めてブラックのことを好きだと感じた。そう素直になれた自分にブルーはとても満足だった。
「もう、大地はまた寝ぐせのままじゃない。カッコワル―イ」
ブラックがブルーの撥ねた毛をつまむ。
「やめてくれよ~。寝坊して直している時間が無かったんだから」
ブラックのいつもの調子に、ブルーもいつものように言い返す。みんなは二人のやりとりを微笑ましく眺めている。
それはブルーにとって何気ない日常で、別の意味で幸せなひと時であった。
「大地君、今日の日記に書くことが出来て良かったね」
ピンクが笑顔でブルーをからかう。でもそれは祝福してくれているのだと、ブルーは感じた。
「へえ、まだ日記が続いているんだ。案外マメなんだな」
イエローが感心したように話す。
「いや、日記ってやめ時難しくないか? なんかやめた途端に悪いことが起きそうで」
「何なのよ、その呪いの日記は!」
ブルーはブラックに突っ込まれる。
「大地はムードメーカーだからな。日記で自分を見つめて成長してくれるとチームとしても有難いよ」
レッドがリーダーとして優等生発言をする。
「そう、俺は日々成長する男だから、これからも見ていてくれよな」
ブルーはブラックの反応を知りたくて、彼女の顔をチラリと見る。その視線に気付いたブラックはニッコリ笑って頷く。
「そうね。もっともっと成長して欲しいから、大地のことずっと見ているわ」
そうブルーに言ったブラックの笑顔は、いつも以上に優しかった。
とその時、天井のパトランプが回りだし、ブザー音が響き渡る。
みんな引き締まった表情で顔を見合わせた。
「サイコチェンジ!」
全員が同時に叫んでサイコレンジャーに変身し、颯爽と出撃する。
(俺達はどんな困難があっても、これからも平和な社会を守り抜く。全員のチームワークと正義の心で)
了
あとがき
最後まで読んで頂きありがとうございました。
一応これで完結となりますが、ご要望が多ければ続きも書きたいと考えていますので、コメント欄にでも書き込んで下さいね!
世界を守れ!(笑)サイコレンジャー5 滝田タイシン @seiginomikata
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