第12話 真夜中のドライブデート(3)

「でも、大地が居てくれて本当に嬉しかった。……うん、今度は絶対、大地に連絡するよ」


 ブラックは嬉しそうにそう言うと、思いっ切り腕を上げて伸びをした。


 スレンダーな体を猫のようにしなやかに伸ばした姿は、凄く綺麗だった。


「さあ、帰ろうか」

「ああ」


 二人は帰り道も楽しく話をした。サイコレンジャーで一緒に戦った思い出やこれからのことまで。


「AIってどうして私達をサイコレンジャーに選んだんだろうね。もっと強力な超能力を持った人も居たと思うのに」


 ブラックが感じている疑問を、ブルーも考えたことがあった。


「確かに不思議だよな。でも、一人一人で見ると足りないところはあるけど、俺達は助け合って最高のチームになっていると思う。それが選ばれた理由じゃないかな」

「そうか……ホントそうよね。私もサイコレンジャーの一員になれて良かったと思ってるよ」


 二人ともサイコレンジャーの存在をどれほど大切に思っているか感じられた。ブルーはそれが凄く嬉しかった。



 ブラックの住むアパートに到着した。


「どこかに連れ込まれると思ってたのに、家まで送ってくれたんだ」


 アパート沿いの道路に車を止めると、ブラックは冗談交じりにそう言った。


「俺は弱っている女の子に手を出したりしないのさ」


(あ、そうか……そうしても良かったのか?)


 ブルーは惜しいことしたと思いながらも、顔には出さずにカッコつけた。


「へー、それは紳士ですね」


 ブラックが皮肉で返してくる。もう完全にいつもの調子に戻っていた。


「本当に今日はありがとう」


 ブラックが急に真面目な顔になる。


「別に良いさ。また今度、恩返ししてもらうから」

「今度か……今度じゃなく、今返したいな」


 ブラックは両手をブルーの頬に当てると、自分の顔を近づけてきてキスをした。


「じゃあね」


 驚いたブルーがリアクションする間もなく、ブラックはドアを開けて出て行く。車を降りた後も、ブラックはブルーの方を見ることも無く、アパートの中に消えて行った。


 ブルーはせめてブラックがどんな表情をしていたのか確かめたかった。女の子からこんなことされた経験のないブルーは、今のキスをどう受け止めるべきか分からないのだ。


(冗談だったんだろうか? 挨拶程度のことだったのか?)


 ブルーは呆然として、自分の唇を指でなぞった。

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