第11話 ブラック&ホワイト(2)
「最近優太君は元気にしてるの?」
並んで歩いていると、ブラックがブルーに質問する。
「ああ、あの三人とも友達になったみたいだし、心配事も無くなって元気にしてるよ」
「そう、良かった。頑張った甲斐があったね」
「若葉とみんなのお陰だよ。ホント感謝してる。俺だけだったら、こう上手くは行かなかったと思うよ」
「私、ホントに大地のことを見直したの。優太君の為に一生懸命なあなたにね」
「ありがとう」
ブラックが余りにも素直に褒めるので、照れ隠しに軽口をたたこうかと思ったが、ブルーも素直にお礼を言った。
売店に着いたので、二人はみんなの分まで飲み物を購入した。
サイコレンジャー達と同じ海水浴場。ビキニと羽織った薄手のパーカー、頭の女優帽まで全てを白で統一したスレンダーな美女が、シルバーグレイの長袖シャツとサングラスを身に着けたスリムで長身の男と並んで歩いている。白と銀のセレブ風カップルは、歩くだけで周りの目を惹きつけていた。
「どう? 死神、たまには海水浴も良いでしょ」
「私はこの日差しとべとべとした空気が苦手です。将軍が行くと言わなければ絶対に来てませんね」
「もう素直じゃ無いなあ」
二人は休日に海水浴場を訪れた、ホワイト将軍と死神執事だった。
ブルーとブラックは飲み物を入れた買い物袋を下げて歩いていた。すると前方から目を惹く白と銀の男女が歩いて来る。ブラックはその女性、ホワイト将軍の顔を見ると驚いて立ち止まった。
「お姉ちゃん……」
歩いて来たホワイト将軍もブラックの顔を見て驚く。
「若葉?」
同じように相手を見て驚いた二人だが、その直後の行動は違った。ホワイト将軍は嬉しそうにブラックに向かって駆け寄って来たが、ブラックは強ばった表情で立ちすくんでいる。
「久しぶり! 元気だった?」
将軍はニコニコとブラックの手を取るが、ブラックの表情は硬いままだ。
「どうして私に向かってそんな笑顔になれるの?」
ブラックの呟いた言葉に、空気が凍り付く。ブルーと死神も声を掛けるのをためらい、二人を見守るしかなかった。
「私を捨てて、自分だけ出て行ったのはお姉ちゃんでしょ? 今更笑顔で久しぶりって、どういう神経してるの?」
妹の反応が予想外だったのか、将軍の顔から笑顔が消える。
「行こう」
「あ、ああ……」
ブラックはブルーに声を掛けてビーチパラソルの場所に向かう。ブルーは一瞬ホワイト将軍の表情を窺ってから後ろに続いた。
「良いんですか?」
そのままブラック達を行かせて良いのか分からず、死神は訊ねた。
「うん……」
ホワイト将軍はショックを引きずり、ブラック達の後姿を見送りながらそう答えた。
と、その時、海水浴場のあちこちで悲鳴が上がる。
「どうしたんだ?」
ホワイト将軍が悲鳴を聞いて叫ぶ。
「あっ、うちの戦闘員達が暴れています!」
ワルダ―の戦闘員達が浜辺に現れ、海水浴を楽しむ人々に嫌がらせをしている。
「まさか、今日は休日だぞ」
「あれはパープル将軍の配下の者のようですね」
死神は戦闘員の服に付いているバッジを見てそう判断した。
「チェンジ! バッドモード!」
ホワイト将軍が腕を胸の前でクロスして叫ぶと、一瞬で彼女の体は純白の戦闘スーツに変化した。
「将軍!」
「味方であろうと、私の休日を邪魔する奴らは容赦しないよ。片っ端から片付けてやる」
「分かりました。お供します」
死神も「チェンジ! バッドモード!」と叫び、シルバーの戦闘スーツに変身した。
「見て、ワルダ―の戦闘員達が!」
仲間の元に帰ろうと歩き出したブラックは、浜辺に戦闘員が出現したことに驚く。
「日曜なのに出て来るのかよ……」
「あっ、お姉ちゃんが……」
ブラックは辺りを見回して、ホワイト将軍の変身シーンを目撃する。
「あれ、この前の露出狂のお姉さんのコスチュームに似てるな」
「あれは確か、ワルダ―幹部のホワイト将軍……」
「ワルダー幹部って……」
ブラックの姉がワルダー幹部だったことに、ブルーは言葉を失う。
ホワイト将軍もブラックが見ていたことに気付き、二人は見つめ合う。
「サイコチェンジ!」
ブラックはホワイト将軍に見せつけるように、サイコレンジャーに変身する。
ブラックとホワイト将軍はそのまましばらく無言で見つめ合う。それぞれの横に居るブルーと死神執事も声を掛けることが出来なかった。
「大地、戻ってみんなと合流しよう」
「ああ、そうだな」
ブルーもサイコレンジャーに変身して、みんなの元に戻った。
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