第10話 僕のヒーローはブルー(3)

「高速の貴公子、サイコレンジャーレッド!」

「さとりの貴婦人、サイコレンジャーピンク!」

「正義のブルドーザー、サイコレンジャーイエロー!」

「スキャンアイレディ、サイコレンジャーブラック!」


 メンバーたちがそれぞれ遊具の上で決め台詞とポーズを決める。


「みんな……」


 ブルーは泣きそうになるぐらい嬉しかった。なぜみんながここに居るのか? 不思議ではあったが、そんなことはどうでも良いくらい、ピンチに現れてくれたことに感激していた。


 ブラックが顎でブルーの番だと促す。


 ブルーはブラックの意図を理解して、サムズアップした右手を前に突き出す。


「勘が良いだけの男、サイコレンジャーブルー!」


 ブルーまでポーズと台詞を決めたので、子供たちは呆気にとられる。


「とう!」


 四人はジャンプして、子供達の近くに着地した。


「君たち、弱い者苛めは駄目だぞ」


 レッドがリーダー格の子供の肩に手を置く。


「お、お前らも偽者じゃないのか! コスプレしてるだけだろ!」


 リーダー格はビビりながらも、生意気な口を利く。


「超絶スピード!」


 レッドはそう叫ぶと、三人の子供たちの間を凄いスピードで駆け回る。


「あれ? 僕、今日は宿題忘れて先生に怒られたのね」


 ピンクが一人の少年の頬に手を添え、優しく呟く。


「ほら、俺の腹を思いっ切り殴ってみろよ」

「なんだと! 痛い!」


 イエローがリーダー格の少年を挑発して殴らせ、痛い思いをさせる。


「ああ、鞄の中に漫画なんか入れて。学校に持ってっちゃ駄目だぞ」

「ご、ごめんなさい……」


 ブラックが残りの一人の頭を撫でながら注意する。


 メンバーがそれぞれの能力を披露し、子供達の瞳が驚きからだんだん憧れに変わっていく。


「ありがとう、ブルーさん!」


 優太がブルーに抱き着く。


「ちゃんと助けを求めてくれたな」

「あっ、もしかして、ブルーさんは大地さん!」


 ブルーは優太の頭を優しく撫でた。


「俺は誰でも無い。サイコレンジャーブルーだ」


 ブルーがそう言うと、優太はニッコリと笑って頷いた。


「さあ、ブルーさん、帰りましょうか」

「ああ」


 レッドは最後までブルーがリーダーかのようなお芝居を続けている。


 ちょうどその時、ヘリコプターのプロペラ音が聞こえてきた。迎えまで手配済みだったのだ。


 子供達に別れを告げ、メンバー達はブルーを先頭にして、ヘリコプターに向かい歩き出す。


「みんなありがとう。でも、どうしてここが?」


 ブルーは振り返り、みんなの顔を順番に見回した。


「ごめんね、大地君。若葉ちゃんが大地の様子が変だから調べてくれって、何度も言うから……あなたから漏れ聞こえてきた情報を教えちゃったの」

「あっ、私だけじゃないでしょ! みんな心配してたじゃない!」


 ブラックが慌てて、三人を順番に指差しながら叫ぶ。


「でも、大地が子供の為に頑張ってるって知って、若葉ちゃんは見直したって言ってたよな」

「ちょっと剛士さんもやめてよ!」


 ブラックは耳まで真っ赤にして焦る。


「大地がリーダーのようにお芝居しようって、提案もしてくれたよね」


 レッドまでブラックをからかい出す。


「か、勘違いしないでよ! 私はあの優太って子が心配で……」

「若葉、本当にありがと。優太も俺も心から嬉しかったよ」


 ブルーはブラックの肩に手を置いた。


「それにみんなも……」


(俺が優太を心配していた時、メンバーも俺を心配してくれていたんだ)


「ホントにありがとう」


 ブルーは心からそう思った。


 その後、ブルーの人気投票数は五人になった。

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