第5話 ピンクの新兵器(2)

 今回の怪人は老人養護施設に現れた。施設に入居している老人たちに暴言を吐きまくっているらしい。


 メンバーがヘリコプターで現場に着くと、施設の入り口で戦闘員を周りに侍らせた怪人が、大きな声で老人を罵倒していた。


「許さんぞ、ダーティーワーズパンサー! 成敗してくれる!」


 緑川本部長が先頭に立って、怪人に決め台詞を言い放つ。横にいるレッドは寂しそうだ。


(しかし、緑川本部長も怪人の名前を知ってるんだ……はっ、もしかして、怪人の名前を知らないのは俺だけ? みんな知ってるのか?)


 本部長も当然のごとく怪人の名前を呼んでいるのが、ブルーには不思議だった。ふと視線を感じて振り向くと、ピンクが同情の笑みを浮かべてブルーを見ている。


(やっぱりそうなのかあー)


 怪人はヒョウの頭に黒いラバースーツ。セクシーな体付きから女性のようだ。両肩の部分にスピーカーが埋め込まれている。


「来たな、サイコレンジャーとババア! 返り討ちにしてくれる。やってください、戦闘員の皆様!」


(暴言を吐く癖に、パワハラは怖いんだなあ)


 戦闘員が一斉に襲い掛かって来る。緑川本部長を守りながら、メンバーは戦闘員を迎え撃つ。


「戦闘モードチェンジ!」


 戦闘員と戦っている最中にパンサーが叫んだ。


 サイコレンジャー達が戦闘員を蹴散らすと、そこにはスピーカーが付いた棺のような箱が残されていた。


「この中にダーティーワーズパンサーが居るわ。この箱、かなり装甲が厚くて、防御力高そうよ」


 ブラックが透視した情報をみんなに伝える。


「俺がやる! 限界硬化パンチ!」


 イエローが硬化させた拳を打ち込むが、相手にダメージを与えられない。


「超絶スピードキック!」


 レッドが叫んで何かやったみたいだが、速すぎてみんなには何をしたのかよく分からない。ただ、敵は屁とも感じて無いようだった。


「二人ともショボい攻撃だね。あんたら、いつもボス戦では何の貢献もしていないんじゃないの? ブルーを馬鹿にしてるけど、役立たずはあんた達の方だね」


(良いぞパンサー! もっと言ってやれ、その通りだ!)


「ブ、ブルーより役立たずなんて、最大限の屈辱……」

「どうしてだよ!」


 ブルーは納得できないが、レッドとイエローは、図星を突かれたように、がっくりとうなだれる。


「そこの覗き見の女も、透視能力でメンバーに入れて貰ってるけど、本当はエロサービス担当要員だね。戦闘スーツで顔が見えないから、ブスでも勤まるから良かったね」

「なっ、私がエロサービス要員だって!」


(クックック、ブラック、真っ赤になって肩を振るわせてやがんの。もっと言ってやれ、いい気味だ)


「ブルー! 得意の第六感でなんとか反撃しなさいよ!」


(ええっ! 怪人に言い返せないからって、ブラックが八つ当たりしてきた。もう、仕方ないなあ、何か閃け……)


「分かった! あいつの攻撃は悪口だ! 悪口を言われないように気を付けろ!」

「お前今まで何を見てたんだ! もう散々悪口言われてるだろ!」


 ブルーは三人同時に非難された。


「怒るなよ……だって閃いたんだもん、しょうがないだろ……」

「こんな馬鹿をメンバーに入れなきゃならないなんて、同情するね。居ない方がマシなぐらいだと思っているんだろ?」

「何を! うちのメンバーはそんな薄情じゃないぞ。みんな助け合って戦ってるんだ! そんな風に思ってないよな、みんな!」


 ブルーは振り返って同意を求めたが、みんな他の方向を見て、ブルーと目を合わせようとはしない。


(マジか……)


「で、でも、でもね、ブルーにも良いところはあるんだよ! 人から頼まれたら嫌だと言わないし、みんなにジュースを買ってくれたりするんだよ!」


(ブラック……俺のことを庇ってくれるんだ……)


「それはパシらせてるだけだから」

「うっ……」

「ブラック、そこで絶句すんなよ! 反論しなきゃ認めることになるじゃないか!」

「うう……パシらせてるだけだったわ……」


 結局フォローになってなかったブラックの言葉に、ブルーがっくりとうなだれた。


「次はピンクだね。優しそうな偽善者面してるけど、腹の中じゃみんなを見下しているんだね。いつも自分が一番って思ってるんだろ?」

「違う、私はそんなことを思って無いわ。うっ、パンサーの心の中は憎悪が渦巻いている。私まで黒い気持ちに巻き込まれてしまう……」


 パンサーの悪口攻撃を受けて、ピンクは反撃しようと意識を読むが、悪意に当てられ気持ち悪そうにうずくまる。


「ピンク、今こそチョーカーのボタンを押すのだ。それでお前の力が解放される」


 後ろに退避していた、緑川本部長がピンクにアドバイスを飛ばす。


「分かりました。サイコスキル、レベルアップ!」


 ピンクがチョーカーのボタンを押すと、目の輝きが増し、トランス状態に入ったような表情になる。

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