第11話




「なぁ、緋奈」


「なに?」


「その袋の中に何が入ってる?」


「…普通の飲み物とお菓子」


「それ以外には?」


「こ、これで全部だけど?」


「それ、以外、には?」


「ご、ゴム」


「お前…ほんとっ、あの日以降酷いぞ?少しは我慢しろ。年中盛ってるメス猿」


「なっ、酷い!!」


「事実だ」


「む……だってぇ」


「だってもなにも無い」


「あれすると達也の事がもっと好きになるもん…それに、気持ちいいし」


「欲に溺れんな。それも高いんだから……これ以上欲に溺れて勝手にゴム買ってきたら、絶対にしないからな」


「っそれは嫌!!我慢する!」


「…頼むわ。代わりにハグとかキスで我慢してくれ」


「いいけど…長いよ?」


「……はぁ」


「私の欲を満たしてくれたら、それでいい」


「満たしても直ぐに飢えるその欲を毎回満タンに満たしてる俺は大変なんだが」


「ごめんって……毎回げっそりしてるもんね」


「死にそうだ」


「でも、あんたも毎回楽しそうよ?」


「……」


「いつもは私の欲があんたを搾り取るけど、たまーに、私の欲が満たされた後でも…虐めてくるよね?」


「…たまには、な」


「ほんとは、もっとしたいくせに」


「お前と同じにするな。我慢出来るからな」


「……ちゃんと我慢する」


「あぁ、頼むわ」


「…じゃあ、禁欲だっけ?そんな生活始めるわ」


「おっ、いいな。俺もやってみるか」


「…最初が辛いだけでそれさえ耐えたらなんとかなるわよね?」


「多分な」


「……やってやる。絶対に耐えるわ」


「そうだな。頑張るか」






「…さて、そう宣言して…まぁ、暇ね」


「休みだしな」


「映画見たいわね」


「急だな」


「でも、面白そうな映画やってないわね」


「だな」


「あっ、ねぇねぇ」


「なんだ?」


「なにもありませーん」


「ぶち……ふぅ。危ない危ない……殺害予告しそうになった。じゃあ代わりに……抱くぞ?」


「抱く?…えっ、あー…ぅー、結構ですー」


「おっ、ちゃんと断れたな」


「…ほんと、最悪ね。あんた」


「はっはっは」


「その手には乗らないから」


「まだ数分だしな。あと数日経ったら引っかかりそうだけどな」


「……」


「自覚あり、と」


「だって……さっきのでさえ危なかったもん。気軽にあんな事言わないで」


「すまんすまん」


「…次言ったら、もう禁欲やめて搾り取るから」


「…ほんまにやめろよ?」


「こっちのセリフよ。もう言わないでね?」


「分かってるっての。…あと、その…」


「なによ、ハッキリ言いなさい?あんたらしくないわよ」


「いや、俺以外の連中にさ…その、ナンパっていうか誘われても絶対に行くなよ?」


「なに?心配なの?私が他の男に寝取られるんじゃないかって」


「……」


「絶対に行くわけないわよ。私はあんたのもの、この体も心も、全てあなたのもの。そうでしょ?純粋無垢なこの体もあなたの痕跡を刻まれてるし、私の心もあなたが好き。その一色に染まってるの。それは、あなたも実感してるでしょ?」


「…まぁ、な」


「だから、私はあなた以外に靡かない。私が靡くのはあなただけ」


「わ、分かった分かった」


「…ねぇ、達也。そんなに心配なら、私を拘束したら?」


「は?」


「鎖で私を繋いで、絶対に離れないようにって」


「…それくらいにしとけ。それ以上は俺が許さん」


「冗談、冗談よ」


「ならいいが…って、おい、近けぇな」


「ふふっ、別にいいでしょ」


「…まぁな」


「…にしても、あんたって変わったわよねー」


「…なんだ?急に、アンチか?昔の方が良かったって言う」


「違うわよ。…まっ、言わなくてもいいか」


「気になるが…まぁいいか。なぁ、緋奈。お前って狂ってるよな」


「は?ぶっ飛ばすわよ」


「いや…さっきの発言的に、狂ってるだろ」


「…むぅ。嫌なの?」


「嫌ではないぞ。むしろ、愛されてて嬉しいな」


「そっかぁ。嬉しいなー、嬉しいなー、嬉しいなぁ……好きだよー」


「おーう」


「…普通だなぁー。もー少し嬉しそうな反応してもいいんじゃない?」


「慣れ」


「…ずるっ」


「慣れはどうしようもねぇだろ。なんだ?俺も好きって言えばいいのか?」


「んー、オプション付きで言って欲しいかな?」


「オプション付き…か?」


「うん。まず、強くハグして、私の耳元にかかってる髪の毛をサッとやって、耳朶を数回甘噛みして、その後に大好きか愛してるをボソッと囁いて欲しい」


「…うわぁ」


「引いてんなぁー」


「まぁ…あぁ、おん」


「……してくれないの?」


「…して欲しいのか?」


「うん。はい、いらっしゃい」


「なんでだよ。お前が来る側だろ」


「…いいの?」


「おーう」


「…やっぱ無しで。心の準備が出来てない」


「自分で言っててそれか…」


「仕方ないでしょ?…それにー、多分我慢できなくなっちゃうよ」


「…懸命な判断だ」


「…あんたが抵抗したらいいのよ?」


「抵抗か。…お前、たまに俺でも勝てない力出さねぇか?」


「まっさかー」


「本当だぞ。ゴから始まってリで続いてラで終わるあいつみたいにな」


「……ねぇねぇ達也?」


「な、なんだ?」


「ふふふっ、死ぬ?」


「俺は死なん」


「そっか。でも、殺すっ…」


「…返り討ちにしてやる」


「望むところ…」


「「くくく……」」」






ーーオマケ


「……ま、負けた」


「はっ、雑魚め」


「…あんたも死にかけでしょ」


「…中々に強かったぜぇ」


「手のひらドリル………ねぇ、達也」


「ん?」


「手、繋いでいい?」


「……おう」


「ありがとっ。……握り潰したいけど」


「感謝の次にやべぇ発言聞こえたな」


「達也のその手は私に触れるためにある大切な手だからね」


「言い方なんか嫌だな」


「あと、私の体を弄ろうとするためにね」


「おい」


「なに?事実だけど」


「…ちっ。なぁ、緋奈」


「んー?」


「抱きしめていいか?」


「っ!…い、いいよっ」


「おう。ーーやっぱ小さいな」


「なに?あんたが大きすぎるのよ」


「そうかもな……あったけぇな。暑いくらいだが」


「ふふふっ、そうね……あったかい。もっと、密着面を増やしたいくらい」


「これ以上は無理だけどな」


「顔も…触れ合お?」


「は?…あー、どうやって?」


「ほっぺた同士合わせよ?」


「こ、こうか?」


「うんっ……あったかい」


「…あぁ」

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