第10話




「……っ、あぁ……あ?…朝、か。腹減ったなぁ……あ?なーんで緋奈…あー、そうか。そうだったわ」


「すぅ……すぅ」


「気持ちよさそうな顔して寝やがって……実際そうだったんだろうけどな。……はぁ、ついに、か」




「こいつ…本当にやばいな。溜すぎだろってんだよ………あー、腹減ったな」


「んん……。んぅ?………あっ、おはよっ。達也、えへへっ…とうとうシちゃったね」


「おはよう緋奈。…そうだな」


「えへへっ、大好き」


「昨晩飽きるほど聞いたっての……あと、近いわ」


「…あっ、本当だ。無意識とは恐ろしい…」


「…割と本当に無意識だっただろうな」


「んー、なんていうか多分あれだと思う。腐れ縁…ただの付き合ってる関係の時より心開いたから?」


「あー、それはあるな。…付き合ったとは言え自分の気持ちには気付いたが、心の距離はそんなに変わらなかったもんな」


「うん。でも、それも一気に、ね。ふふっ、こうやってお風呂以外で裸を見られても恥ずかしくないくらいに心の距離は縮まったんじゃないかな?」


「どうなんだろうな…」


「さぁ?」


「まっ、変わったんなら変わったでいいけどな。さて、俺は腹減ったから朝食作ってくるわ」


「えー、もう少し一緒に居ようよ」


「どうせ後で一緒だろ」


「それじゃ嫌なの」


「めんどく…なんでもねぇ」


「おい、めんどくさいって言おうとしてなかった?」


「……」


「ねぇ、達也?ねぇ、ねぇ、ねぇ」


「近いわ!!って、密着すんな。無い胸を押し付けてくんなっての」


「は?」


「おー、怖っ」


「昨晩はこんな胸でも嬉しそうにしてたの、忘れたの?」


「それはお前…無しだろ」


「事実でしょ?ほら、あんたが大好きな緋奈様のお胸よ?」


「……お前」


「わっ……た、達也?」


「あんまり調子乗んなよ?」


「ひゃっ…ひゃい。た、達也」


「ん?」


「し、したいなぁ」


「……お前、アホか?」


「なんで!?」


「俺を殺す気か!ただでさえ腹減ってんだよ」


「いいじゃん。朝から私と繋がれるんだよ?」


「お前は良くても俺は嫌なんだよ」


「……」


「…ちっ、しゃあねぇな。これだけしといてやるよ」


「にゃ……」


「っよし、これで…いいだろ」


「な、なにしたの?」


「自分で確認しとけ」


「…あっ、分かった!キスマークってやつでしょ!」


「おう」


「ふふっ、もう完全に私は達也のものになっちゃったわね〜」


「そうだな。絶対に離さないからな?」


「嬉しいっ…大好き、大好き」


「もう飽きるほど聞いたっての……」


「何度でも聞かせてあげるから」


「それは恐ろしいな」


「ふふふっ」






「…朝食食べてからさー、無気力に襲われてるんだけど」


「俺もだ…」


「絶対昨晩のせいだよね」


「だろうな…俺も普通に腰痛ぇ」


「なんで…って聞くのは馬鹿か」


「そうだな。記憶喪失ってことで病院連れてくレベルだな」


「そんな?…まぁ、そっか。激しかったもんねー」


「お前がな?」


「あんたもでしょ」


「「…お互い様」」



「…もう一回したいなぁ」


「ダメだ。我慢しなさい」


「分かってるよ。でも、あの感覚は忘れられないもん」


「そうかい……俺としては疲れてんのにまだ求めてくるお前が恐ろしかったよ」


「求めることの何が悪いの?」


「限度を考えろ」


「何回だっけ…3?」


「多分な。……あー、数時間前の出来事だしな。あれ」


「だねー………」


「おい、目がやべぇぞ」


「大丈夫、大丈夫。私は普通よ」


「嘘つけ」


「ねぇ、達也ー。枕になってもらってもいい?」


「いきなりとんでもねぇ事言い出すな」


「横になりたいもん」


「俺の方がなりたいんだよ…」


「なら、膝枕してあげようか?」


「いや、いいわ」


「なんでよ」


「嫌な予感がする」


「…ちっ」


「おい、かす」


「なによ。あんたに膝枕させて…ふふふ、あんたの寝顔を堪能しようかと思っただけよ」


「嘘の香りがする」


「…なんで?」


「嘘付かずに真実言ったら…ハグしてやる」


「体を弄ろうかと思っておりました。はい、正直に言ったのでハグプリーズ」


「はぁ………嘘だと言ったら?」


「ぶっ殺す。本当に、冗談抜きで」


「…はいはい。おいで、緋奈」


「わーい。それっ」


「うっ……少し勢い殺せや」


「やぁだ。それより、私も抱きしめたんだから達也も抱きしめて」


「はいはい」


「わーい。……今更だけどあんたって、言葉では面倒くさそうにしてたり嫌そうにしてるけど、案外私のお願い聞いてくれるよね?」


「そりゃな」


「?」


「本当に嫌ならちゃんと言ってるしな。めんどくさい時はあるが……まぁ、こうやるのも嫌じゃないからな」


「…そっか」


「…あー、恥ずかし。このまま折りたい」


「物騒!!…って、私が折られるからやばい!?そんなことはさせません!」


「どうやって?今のお前は無力だぞ?」


「……空いてる手をあんたの首にやって、締める」


「その前に折るぞ」


「差し違えても殺す」


「無理だ」


「やだ。一人で死ぬのはやだ。死ぬならあんたも死にたい」


「……ほんとっ、そんなセリフをすぐ言えるの尊敬するわ」


「わっ……ふふっ、それが私だからね。だからもっと強く抱きしめていいよ?」


「……あぁ」






ーーオマケ



「今日何しよっか」


「そうだな……ゲームでもするか?」


「あり」


「まっ、その前にもう少し抱きしめるがな」


「嬉しいことを言ってくれるね〜」


「ははっ、そうか。…これくらいか?」


「もちっと強く」


「あいよ」


「んっ…それくらい。もっと強くてもいいけど…」


「これ以上は少し怖いな」


「でしょ?なら、これでいいわ。……あんたに強く拘束されてる感じがして好きなのよ」


「前も聞いたな」


「何度でも言うわよ?……あと、こうされてると凄く気持ちが昂るの」


「そ、そうか」


「…引いてる?」


「少し」


「……」


「まぁ、昂ってもちゃんと俺が抑えてやるよ」


「…ほんと?」


「おう」


「本当にほんと?」


「……おう」


「じゃあ、今の私…とっても気持ちが昂ってるの」


「…あぁ」


「なんとかして欲しいなぁ〜」


「…判断ミスったか。軽率過ぎた」


「ねぇねぇー、早くぅ」


「うぜ…なんでもない」


「おい、今うぜ…まで出てたよね?」


「それより、聞くが…どうしたらその気持ちは抑えることが可能なんだ?」

 

「…うーん」


「おい」


「いや…考えてはいたんだけど、恥ずかしくなった」


「何を考えていたんだよってんだ…お前が恥ずかしがるなんて相当だぞ?言いたくないならまぁ…言いたくなるくらいに気持ちを昂らさせてやろうか?ほれっ」


「〜〜〜!!!…ねぇ、達也ぁ」


「なんだ?言いたくなったのか?」


「うん」


「なんだ?」


「………その、ねっ?したいなぁ」


「……最初からそれが狙いだったな?」


「うん…ダメ?」


「はぁぁ…………ったく、しゃあねぇな」


「ありがとっ。それで、今夜?」


「いや」


「?」


「真っ昼間からだ」


「きゃっ…ふふっ、私幸せ」


「そうかい」








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