第7話






「お、おはよう」


「あ、あぁ…め、珍しいな。自分で起きるなんて」


「どう言う意味よ」


「まっ、丁度朝ごはんもできたから食べるぞ」


「うん」



「「いただきます」」


「「……………」」




「ねぇ、達也」


「っ…な、なんだ?」


「この空気から今すぐ逃げたいんだけど…」


「俺だってそうだ……」


「…昨日のあれって、夢じゃないのよね」


「まぁ…そうだな。現実だった」


「そう……昨日の私は絶対に、おかしかったわ。だって、あんな…あんな……うぅ」


「まぁ、あれはなぁ……俺もあんな事したからな」


「…はぁ、慣れるまであんたと接し方が分かんなくなるやつじゃん」


「…そうだな。まっ、すぐに慣れるだろ」


「うん………正式に、これからよろしくね?達也」


「っ…っあぁ、ほんと…好きだ」


「っあんたってやつは…」


「ごめんって……ついな」


「……私も、大好きだよ」


「……また、ディープキスするぞ」


「みゃっ"!?」




【大学にて】

 



『…なんか、お前変わったな』


「は?なんだ突然」


『いや…なんか、雰囲気っていうか幸せオーラを感じるぞ』


「なんだそれ?」


『俺が逆に聞きたいわ。先週の金曜会った時はそんな感じじゃなかったから…お前、この土日でなんかあったな?』


「…いや、なんにも」


『嘘下手だな。お前は嘘つく時必ず前髪を触るぞ』


「えっ?マジ?」


『おう』


「……ちっ、そうだよ。この土日でな…って言うより昨夜だな。昨夜ちょっとな」


『ふ〜ん。…まっ、前髪触るとかは嘘だけどな』


「はっ!?」


『見事に引っかかって自分から言ってくれたから助かるわ。で、何があったんだよ』


「…後で覚えておけよ」


『何があったんだよ、早く教えろよ。今更とぼけるなんて真似は出来ねぇぞ』


「…っ死ねよ。…昨夜な」


『……今、俺に死ねって言ったよな』


「昨夜な」


『無視かよ!?…まぁ、お前だから許す』


「俺に恋人が出来た」


『へぇ、恋人か。恋人……………っはぁ、可哀想に』


「は?」


『お前、今の今まで初恋もない色のない人生で、大学入って俺や他の奴らにも馬鹿にされてきて相当心にきてたんだな。それに気づけなくてごめんな……気づけなかったせいで、お前は…そんな、そんな見えすいた嘘を言うようになっちまってっ…俺は、俺はぁ…なんてことをぉ…おぉぉぉ』


「…また明日な。俺帰るわ」


『ちょいちょいちょいちょーい!!!待てや!今の流れ的に帰るのは違うやん。えっ、本当に恋人出来たん?』


「だからそう言ってんだろ…」


『oh…冗談だと言ってくれよ、ボブ』


「ぶっ飛ばすぞ」


『で、相手は?密かにお前に想いを抱いているもの先輩という威厳のせいで中々感情を伝えられない四年の人か?それとも、今はここに居ないけどたまに見かける黒髪ショートの子か?あぁ、この前お前が助けた子のことな?…いや、もしかして高校の時に同クラスだったあのボーイッシュな奴か?…いやいや、もしかしてあの後輩のポニーテール、犬っぽい、まさにラブコメの後輩キャラ!ってイメージのあの子か!?』


「どんだけ選択肢いんだよ!!って、あの先輩そうなのか!?初めて知ったぞ!」


『えぇぇぇぇ!!違うのかよ!!じゃあ、誰だよ!』


「…緋奈だよ。鈴音、鈴音緋奈」


『緋奈?…あのお前と腐れ縁の?…ないないない、冗談も大概に………マ?』


「マ」


『…………………………し、幸せにな』


「その間はなんだよ。…まぁ、あんがとな」


『しっかし、お前とあいつかが……まぁ、ある意味一番ありそうで無いっていう感じだったなー………まっ、とにかくおめでとうな』


「おう、あんがとな」




〜〜〜〜

【一方】





『…ねぇ、緋奈。さっきからどうしたの?講義もずっと上の空だったけど』

 

「へっ?あ、うん。ちょっと、ね…」


『ふ〜ん、達也君と何かあったの?』


「なんで分かっ!?……違うわよ」


『そこまで言ったのなら諦めなさい…まぁ、達也君の事じゃないなら勉強くらいだと思ってたけど……何があったの?』


「…言わないわよ?」


『ふ〜ん。当てて見せるから』


「やれるもんならやってみなさい」


『達也君が入院した』


「違う」


『達也君が誰かと付き合った』


「っ違う」


『?……達也君が…いえ、あっ、そうそう。さっき達也君が女の子と歩いてたのを見かけたわよ。しかも、腕を組んで』


「はぁ!?ちょっと、それどう言うことよ!!詳しく教えなさいよ!」


『…えーと、あっ、えーと……確か、四年の人だった気がするわ』


「誰よ、その女。………私のものなのに…」


『ふーん、そういうことね』


「なによ」


『ちなみに、さっきのは全て嘘だから安心しなさい』


「へっ!?」


『それより…ふふふっ、達也君の事が好きになっちゃったのよね?どう、正解でしょ』


「違うわよっ!!私がっ!達也と!付き合い始めたのよ!!」


『……そこまで行ったのね。…後で友達に伝えとくとして……おめでとう』


「なぁ……ち、違っ」


『何が違うのかしら?…それで、何がどうなって達也君のことを好きになったの?』


「どうなって…?……分かんないわよ。気づいたら、かしら」


『そう。……キスはしたの?』


「な、なんであんたに言わなきゃならないのよ!!」


『一応、恋愛の先輩としてアドバイスしてあげようかな?と思ったのに……アドバイスがあれば、達也君を翻弄できたり出来るかもしれないわよ』


「………キスはしたわ」


『おぉ!どんなキス?』


「ディープキス………舌を絡ませるやつ。達也の方から」


『………段階飛ばし過ぎでしょ』


「分かってるわよ!でも、昨日の私も達也も、テンションおかしかったから」


『あの緋奈がねぇ…ふふっ、一つアドバイス』


「……なに」


『やられたらやり返す。やられっぱなしはね、ダメになっちゃうから気をつけるのよ』


「?」


『そうねぇ、今日にでも達也君の耳食べたら?』


「ふぁ!?」


『ふふふっ、前の緋奈なら面白がって直ぐに肯定するのに…自分の想いを自覚したらこうも乙女になるものなのねぇ……』


「うぅぅぅ……」


『でも、どうせあんた達のことだから早くて明日、遅くて1週間程度でその感覚も慣れて前みたいな感じになるでしょうね』


「それは、私も思うけど」


『そうね。

緋奈、おめでとう。これからの人生、きっと嫌なこともあるかもしれないけど、絶対に楽しいから、達也君に愛想尽かしたらダメだから。約束して』


「うん。約束するわ」


「『ふふっ』」






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