第2.5話




「「ごちそうさまでした!!」」



「いやー、食った食った」


「焼きそばって意外とお腹膨れるからねー」


「だな。さて、洗い物しなくちゃな」


「…手伝うよ」


「……どういう風の吹き回しだ、貴様」


「はぁぁ!?人が親切心で手伝ってあげよっかなー?って思って言ってあげたのにその言い方はなに!?」


「普段手伝うか?って聞いたら絶対に嫌って言うお前が自ら手伝うと言った。そら、あんな言い方するわ」


「……今回は普通に親切心」


「……あいよ。ちゃんとマジな目してので嘘じゃないと分かった」


「マジな目って…」


「俺にしか分からんやつだと思うがな。…まっ、あんがとな」


「どーいたしまして」












「お前って…普段は皿洗いとかしねぇのに、ごく稀にあんなこと言うからな〜」


「悪い?」


「いや、むしろ緋奈っぽくていい」


「どゆこと?」


「普段はめんどくさがる癖に、ああいう俺が疲れてたりしたら手伝う。ちゃんと人を見てるって言えばいいか?そんな感じだな…」


「そう?」


「それもあるお陰でお前に対する好感度がマイナスに行かないからな」


「え、マイナス?」


「そら、お前。朝は無理やり起こすまで寝るわ、朝ごはん食べないわ、手伝いもしないわ、好感度もマイナスに突入するぞ」


「えー。…でも?」


「でも、何か買ってきて欲しいとかって言ったら帰りに買ってきてくれる所や、さっきみたいに手伝ってくれる所を見ると安心感?があるっていうか」


「つまり?」


「腐れ縁、友達としてお前はめちゃくちゃ大好きだなってこと」


「…無自覚系ってよく言われない?」


「言われないな」


「ほんと?…さっきみたいにさー、気軽に異性に大好きって言ったらダメだからね?例え、友達としても」


「…異性?」


「……どーゆう意味よ」


「異性ってどこにいるんだ?」


「ぶっ飛ばすわよ」


「ぶっ飛ばすわよ、とか言ってる凶暴なゴリラなら居るけど」


「よし、喧嘩買うわよ!!」


「あぁ、分かった謝るからその拳を下にな?な?」


「もうダメよ」


「ゴリラって言った事は謝るから!美人、美人でいい?」


「ダメ。何度もそんな事を聞かされてきたわ」


「これでどうだ!!美人!超絶美人、顔が良い、頭も良い、胸はそんなにない、瞳が綺麗、くびれもキュッとしてて細い、肌が綺麗、足がスラッとしてる、程よい肉付き、友達として本当に大好き、料理出来ない、お前と話してる時が一番楽しい、朝起きない、朝弱い、時々見えそうになる所がマジでドキッとさせてくる、めんどくさがりや、実は優しい奴。他に…えーと」


「もっ、もういいわよ!!」


「え…こ、殺さない?」


「殺さないわよ!!……あぁ、もう…さっきの失言に関しては許してあげるわ」


「よかったぁ…」


「でも、時々混ざってた胸がないだの、料理できないだの、の発言は許さない」


「え…」


「しーーね♪ちゃんと、優しく殺してあげるから」


「あ、ちょ…まっ!!?」


「あははっ!」






◆◆◆



「リピートアフターミー。私、冴島達也は二度と鈴音緋奈に逆らいません。逆らった場合、どんな言うことでも聞きます」


「私、冴島達也は二度と鈴音緋奈に逆らいません。逆らった場合、どんな言うことでも聞きます…はぃ、これでいいです…か?」


「うん、いいよ。許してあげるわ」


「た、助かった……」


「じゃあ、これから私に逆らわないでね?」


「え」


「約束したでしょ?さっき」


「く、口約束だ」


「そんな理由で逃げるんだ。あんたの母親にあることないこと言うわよ」


「マジでやめろ。それをしたら俺もお前の母さんに……無駄遣いしてるので何とかしてくださいって言うぞ」


「それはダメ」


「ならお互い、何も無かったことにしよう」


「…仕方ないわね」


「約束もなし」


「……今回だけよ」


「ホントマジで愛してる」


「ぶっ殺すわよ」


「やめい」











「にしても……達也?よく、あんなに私を褒める言葉が出てきたわね」


「ん?…あぁ、普通だろ」


「ふ、普通?」


「外見上のことしか言ってないからな。内側…性格とかその辺りのことを言うか?」


「や…それは、照れる」


「照れ顔見てみてぇけどな。滅多に見れるもんじゃないからな」


「やめてよね?あんたに褒められるとなんか…むずむずするのよ」


「そうかい。…まっ、でもあん時言った事は全て本当だからな?」


「……そっ」


「おー?照れてるな」


「照れてないわよ」


「そうか?お前は無自覚かもしれんが、照れてる時は親指を人差し指の第二関節に置く癖あるぞ?」


「えっ!?」


「慌てたな?」


「あ…」


「嘘です。そんなんありません、お前は照れてる時は普通に顔を見られたくないから顔を背けるくらいしかしません」


「っっ!!!」


「いやー、久しぶりの照れ顔」


「っあんたねぇ!」


「まっ、可愛かったぞー」


「……ありがと」


「おっ、また照れ顔。明日は槍でも降るかもな」


「お、覚えておきなさいよ」


「今の俺になら何してもいいぞー。なんたって、珍しい緋奈の照れ顔を見れたからな。満足満足」


「………ほんとに、こういう時のこいつ嫌い」


「褒め言葉だ。イラつくか?」


「…イラつくの前に、恥ずかしい……」


「…地球滅ぶかもしれん。なにが、こいつの身に起こってる?」


「失礼だよ!」


「お前が恥ずかしい?そんな単語をお前の口から聞く事になるとは思ってもなかった」


「な…私だって恥ずかしい時は恥ずかしい言うよ!」


「じゃあこれから言えよ?」


「え」


「恥ずかしくなったら恥ずかしい。おけ?」


「…おーけ、カス」


「よし、さっき言った褒め言葉全て撤回するわ」


「はぁ?」


「代わりにれをお前に送ろう、心して聞け」


「なによ」


「褒められ✖️(バツ)、褒められるとすぐに照れる」


「……本当に覚えておきなさい」


「はっ、事実を言ったまで」


「今日、あんたが風呂行ってる時に突入してやろうか?」


「…ご勘弁を。…って、それは逆に役得、ん?でも入ってくるのは緋奈だから……あ、

目の毒か」


「どっちの意味よ。害になるのか欲しくなるのか」


「前者」


「バスタオル巻いてるとは言え私の裸が目に毒なの?」


「おう」


「おーけ、包丁もっていくわよ」


「マジでやめろよ?」


「じゃあ…あんたのスマホ」


「それされるくらいなら、包丁のほうがいい」


「…刺されたいの?」


「刺されたら頑張ってお前の事を刺し殺す」


「道連れかしら」


「心中だな」


「意味が違うでしょ!」


「ん?そうなんか?同じじゃねぇの?」


「はぁ……道連れは、された側がした側に同じことをやって同じ目に合わせるの、した側がされたくなくても。例えるなら…無理やり同じ行動を取らせるって感じ。で、心中は相思相愛の男女が合意の上で一緒に死ぬの」


「へぇ…なら、道連れになるのか」


「そうね。…って、私は殺されないわよ」


「俺だけ殺されるのか。絶対に道連れにしてやる」


「なんでよ」


「死んでもお前が居たら退屈しなさそうだしなー。天国や地獄があるのかしらねぇけど…あったとしたら俺は天国、お前は地獄だな」


「……嫌よ。発見されてニュースになった時にどんな報道されると思ってるのよ。

お風呂場に片方裸、片方バスタオルの男女が包丁で胸を刺されて死亡よ?」


「…完全に色んな考えが出てくるな」


「でしょ?だから死ぬのはあんた」


「まだその話やるか!?」


「……そうね、じゃあこの話は終わりにしましょ」


「おう…って、本当に風呂に来ねぇよな」


「…さぁ?」


「…別に来てもいいけどちゃんとしとけよ」


「あら、そこはポロリするようにしとけじゃないの?」


「アホか。例え相手が俺でも自分の肌が見られるんだぞ?俺は見られるのは別に構わんがお前は嫌だろ。人それぞれだが…」


「……まぁ、どうなのかは私にも分からないわ。それを確かめるために行くね」


「え……マジでくんの?」


「行くけど」


「…お前が俺と一緒に風呂入る?マジで?」


「初めて…かしら?」


「……いや、二、三回あったぞ。全部酔った時だった気が…」


「あぁ…酔って思考回路がホワホワになった時にね。特になんも起こらなかったわね」


「だな。てか…マジで記憶に無い。ただ、そんな感じだった気がするってだけで」


「私も。だから、今回が初めてってことにしとこ」


「…マジでくんの?」


「なに?嫌なの?」


「嫌というより…お前は本当にそれでいいのか?」


「えぇ。別に見られてもって感じがするし…見られたら見られたで責任でも取って貰おっかしらね〜」


「ニヤニヤすんな」


「見せるつもりはないけど、仮にポロッちゃったら、責任取る?」


「まぁ……お前がいいのならべつに取るぞ?」


「あら素直」


「文句はないからな。…でも、本当にちゃんとしとけよ」


「分かってる」


「…頼むわ」





◆◆




「来たよー」


「本当に来たのかよ!?」


「有言実行だからね。…それに、達也もタオル持ってる時点で予想してたんでしょ?」


「…まぁな」


「んじゃ、私も洗うから退け」


「おい」


「ちゃんとバスタオルは結んでるから本当に外れないから安心しなさい。だからこっちを見てもいいわよ」


「そうか。なら遠慮なく……本当にちょっとしか胸ないな」


「…ちょっと包丁持ってくる」


「冷水ぶっかけんぞ」


「いきなり冷水かけられたら心臓麻痺起こすのでやめてください」


「なら包丁持ってくんな」


「…じゃあお風呂上がってからゆっくりと…ね」


「刺し殺すってか?…って、またこの話に戻るのか」


「…もういっか。さっさと洗って湯船に入れ」


「命令口調やめろや。…ったく」











「「あぁぁ〜〜」」



「お風呂が広い所を選んで良かったな…」


「ね〜、私たちが入っても余裕あるからね」


「…その分暑いが」


「それは諦めよ」


「…今更なんだが、今やってることって最早腐れ縁の域超えてるんじゃねぇのか?」


「どうなんだろ。このくらいはまだ腐れ縁の範囲じゃないの?自分で言うのもなんだけど…私たちって互いにもう心を開いてて許してるじゃん」


「まぁな」


「だから、この程度って感じじゃない?裸を見せ合うとかなら腐れ縁を超えて恋人になると思うけど、ただ普通にお風呂入るだけなら混浴だと思うな」


「そんなもんか…確かに、ここでお前の姿に対して情欲とか抱かない時点でそうなるな」


「襲われたら責任取ってもらうだけだから。…でも、何も思ってもらわないとなると私的には女としてどうなのかな?と思うけど」


「それこそ今更だろ」


「それもそうね。部屋であんな薄着してるし、ブラ着けてない時が多いわよ」


「…本当に目のやり場に困るんだよ」


「見なきゃいいじゃん」


「それが無理なのが男なんで。…てか、俺がいるのに普通に着替える時とかあるよな」


「そうだけど?なに」


「気にならねぇのか?と思ってな」


「別に気にならないわよ」


「仮にだ。仮に俺が見ちゃったらどうするんだよ。今んところはないけど」


「下じゃなかったら別にいいわよ」


「上はいいのかよ」


「大きさが違うだけであんたのと同じよ?」


「極論過ぎねぇか?」


「でも、同じよ?ただ無駄な脂肪がついてるだけで」


「お前の場合はついてる脂肪は少ないけどな」


「…今の私ならあんたを溺死させられるわよ」


「やめろや」


「話変わるけど、あんたって絶対性欲少ないわよね」


「…ディスか?おい。枯れてるって言いたいのか」


「違うわよ。ただ、女絡みの話なんて滅多に聞かないし、こうやってバスタオル巻いてるとは言え目の前に裸の女が居るのに興奮してる様子はないし」


「俺の股間見ながら喋るな。ったく…なんていうかな。理由は何個かあるんだよ」


「へー、どんな?」


「一つ目は俺が女と絡み始めて、仲良くなって…ってなったらまずお前にバレるだろ?そうなると揶揄われるのが見えてるから。

二つ目、まぁ一つ目と似たようなものだが…仲良くなり始めたらシェアルームが出来なくなるだろ?

三つ目、純粋にお前以上の良い女が見つからん。容姿もそうだし。腐れ縁で、話があって…などなど。こんなところだな」


「なるほどねー…つまり、半分以上私のせいか」


「そうは言ってないが…似たようなもんだな」


「そっかー。でも、なんか嬉しいな」


「嬉しい?」


「あんたと友達…親友、腐れ縁…一緒にシェアルーム出来て良かったなぁって思えたのよ」


「……俺も嬉しいよ」


「……そっ」







ーーーオマケ



「やっ…顔見ないで」


「俺もだ…あんな事言うもんじゃねぇな」


「うん…」


「マジで体が熱い…」


「顔じゃなくて?」


「顔もだ」


「そっかー。…ねぇ」


「ん?」


「も少し、浸かってよ」


「どした?酔ってるのか?」


「そんなわけないじゃん。…こんな事をするのは多分最後だしね」


「そういうことか。…そうだな、もう少しだけゆっくりしとくか」





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