第2話




「今日は久しぶりの休みだな…俺も緋奈のやつも………さて、一仕事やりますか。あの馬鹿を叩き起こすという一仕事を」







「…寝てるなぁ」


「すぅ……すぅ」


「寝顔は可愛いんだがな、寝顔は…あぁ、もう…また服が捲れて少しは一人の女性というのを自覚しろってんだ。布団も最早足にしか掛かってないし。まっ、さっさと起こすか。

起きろ緋奈、起きろー」


「…ん…んん…」


「揺すりはダメか…こうなると大声もダメだから……あ、そうだ。コホン…あーあー、よし…バイトの時間だぞー!」


「っ!!ば、ばいと?い、いかなきゃ…って、あれ?」


「よし、おはよう」


「……バイトは?」


「今日は休みだぞ」


「…嘘ついたの?」


「おっと殺気が…って、そろそろ起きて欲しいんだよ」


「んん…やぁだ」


「甘えるな。今日は布団を干したいんだよ」


「勝手に干せばいいじゃん…おやすみー」


「寝るな!お前が退かないと干せないんだよ!」


「なぁ…もぉ……休みなんだからゆっくりさせてよ」


「ほんと、朝弱いよな。普段とは大違いだ」


「なんだとぉ…?……すぅ」


「寝たな?おい。……ぶっ飛ばしてやろうか、こいつ」


「すぅ………すぅ」


「ちっ…今日はどうしても布団干したいし午後からは少し天気も怪しいからな。仕方ねぇ…よいしょっと!!」


「くかぁ……」


「重たっ……もう少し痩せろよ」









「っふぅ…姫様抱っこも楽じゃねえんだよ」


「…お疲れさま〜」


「っ!起きてたのかよ」


「私を持ち上げたあたりでね〜。…そら、急に体が浮いて振動が来るんだもん、起きるって」


「ならさっさと起きろカス」


「カス?……まぁ、今はまだ眠たいからいいや。で、起きなかった理由はただ単純に達也が私をお姫様抱っこしてる、きゃーって思ったから」


「揶揄ってるな?」


「さぁ?」


「さて、もう一回姫様抱っこしてやろうか?」


「お、やってみ」


「ソファーに寝っ転がってる癖に偉そうだな。ちなみに、抱き上げ後はこれでかと言うほどに回るぞ?」


「…降参」


「よし」


「…まぁでも、眠いのは本当だからもう少し寝させてくれよん」


「…仕方ないな。少し待ってろ」


「?」





「ほれ」


「わっ、毛布」


「体冷やさないようにな。おやすみ、俺は適当に動いてるから」


「……ん。おやすみ」





◆◆◆




「っっぁぁああ〜、終わった。ようやくひと段落。…あいつにも手伝わせてたらもっと早く終わってたな。で、まだ寝てるのか?」



「くかぁ……」


「…猫かよ。ずっと寝てるじゃねぇか、えっと?今は11時半か。もうそろそろお昼ご飯作らねぇとな……その前にもう起こしておくか。そろそろ起こさないと夜眠れなくなって騒ぎ出す未来が見える。おーい、起きろ緋奈」


「……ふぁぁ……」


「どんな声だ。起きろってんだ。このまま寝てるならお昼抜きだぞー」


「ふぁい…………うん」


「…起きたか?おーい」


「起きた…ふわぁぁ…ん?…顔近いよー」


「あぁ、すまん」


「ふっ………つぁぁ、起きた!!」


「元気一杯だな」


「うん」



「…おはよう緋奈。よく眠っていたようで」


「ん、おはよっ。よく眠れたよ」


「朝からいい笑顔だな。ほれ、顔洗ってこい。髪もボサボサだからな」


「はーい」



「…さて、お昼を作るか」






「私元気!完全に目が冴えたよ!」


「そうかい、俺はもう疲れてる」


「布団も干して掃除もして…本当お疲れさまです」


「少しは手伝って欲しかったと終わってから思った」


「それは無理。休日はじっくりと眠る、それが私だからね」


「そうか」


「今度は達也が寝たら?疲れてるんでしょ?」


「いや大丈夫。寝るだけの休日はあまり好みじゃないんでな」


「そっか。膝枕でもしてやろうかとおもったのに」


「嘘をつくな嘘を」


「嘘じゃないよ」


「…まっ、どっちにせよお前に膝枕されるくらいなら枕持ってきて寝るが」


「なんで!?」


「どうせ悪戯するだろうし、長時間となるとお前も足が痺れて大変だろ?それに動くことも出来なくなるんだからな」


「それはそうだけど…私の優しさってやつ?」


「そんな優しさはいらん。ただこうやってくだらん会話をしてくれてる事が俺にとって一番嬉しいからな」


「そっか。…そっか……」


「どうした?なんか嬉しそうなオーラ出てんぞ」


「なんでだろうね〜?二つ前の言葉、そっくりお返ししとくわ」


「?あいよ」


「分かってない様子ね。あんたらしいっちゃらしいか」


「…お礼を言えばいいのか?」


「さぁ?」


「…まっ、そんな事より昼飯食べるぞ」


「おっ、今日のお昼は?」


「焼きそばです」


「わーい、朝起きて1発目が焼きそばー」


「朝1発目からラーメンとか焼肉食うやつよりマシだろ」


「それもそう。…早く食べよっ」


「そうだな。飲み物は茶だからな」


「はーい」


「んじゃ」



「「いただきます!」」








ーーーオマケ



「美味しい」


「そっか、それはよかった」


「達也の料理は本当に美味しいよね」


「…何を狙っている」


「え?」


「お前が俺を褒める時は何か我儘を言う時とか何か隠しているときだ」


「酷いっ!私はただ普通に褒めてるだけだよ」


「そうか?」


「なんでそんなに疑うのよ!」


「日頃の行い」


「うぐ…」


「それに、一から手作りじゃない料理を美味しいって言われてもな…」


「達也の料理は全部美味しいよ?」


「…例え嘘でもそれは嬉しいな」


「嘘じゃないってば!」


「たまにはお前の料理も食べたいけどな」


「……卵焼きなら」


「焦げたやつか?」


「だって私には料理無理だもん!」


「教えてやるって言っているのに逃げてるだろ」


「めんどくさい!私の命を維持しているご飯は全てあんたが作るの!」


「おっと、じゃあお前が苦手な野菜だけにしてやろう」


「許してください」


「お前は料理をしろ。俺が教えてやるから」

 

「……分かった。……前向きに検討しておく」


「それしないやつだろ!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る