航海日誌3
足元に紙があった。これを丸めて放り投げれば、掃除機ロボットという、生まれながらの束縛が反応するに違いない。
「フフ…ん⁉︎、体が勝手に!」
やはり、掃除機ロボットは紙に向かった。
「やだ!俺もうゴミ吸いたくない!」
叫び声が聞こえてかわいそうだが、しょうがない。
しかし、私にはこんなふうに聞こえた。
「やだ!俺もう残業したくない!」
確か、2年前に同僚が放った言葉だ。その後同僚は過労死してしまったが、あの掃除機ロボットも彼と同じ運命になるのだろうか?
「いや、物思いにふけている場合ではない!」
老けている……いやいや!
私は窓から飛び降りた。
「ッ、痛えッッ」
すぐさま路地裏に隠れた。
そういえば、宇宙船にGPSが搭載されていたんだ。始めからそれで探せばよかったのに。
しかし、今は昼間。このまま外へ出るわけにはいかない。
「そこに誰かいるか?」
突然誰かに話しかけられた。こっちに近づいてくる。どうかそのまま行ってほしい!
「…うわぁ⁉︎誰だ⁉︎」
見つかってしまった。急いで逃げなければ。
「ちょっと待て。お前宇宙人だろ?」
「…⁉︎」
やはり、予想通り。
「宇宙人、ついに見つけた〜」
「…私をどうする気だ」
「おお、日本語話すのか。そうだな、とりま政府に売る」
「⁉︎」
人身売買ではないか!
私は本能的に逃げた。
「あ、逃げるな商品!」
私は誤って人混みの中に飛び出してしまった。
「やばい!!!!!!」
「なんだあれ」
「宇宙…人?」
「気持ち悪い見た目!」
……UFOを盗撮される宇宙人もこういう気持ちなのだろうか?
私には走って逃げるという選択肢しかなかった。
「ただい…あれ?地球人さん?」
私はいつしか林の中にいた。外からパトカーの音や人々の声、ライトの光、カメラのシャッター音。もう夜なのに、外が明るい。
なんだこの、人が大勢いるのに、孤独感を感じる。私に味方はいないのだろうか?
……宇宙人に人権はないのだろうか?
…諦めちゃ駄目だ!絶対に生還してみせる!ちょうどいいことに、音を出す装置があった。
ガイガーカウンターだ。突然音を出すため、あんまりこの装置は好きではないが、こういう時のためにあるのだろうなぁ。
ガイガーカウンターを取り出すと、やはり突然音を出した。
「なんだ⁉︎」
「エイリアンが故郷の惑星と通信してるんじゃないか?」
「この音、なんだか懐かしいなぁ」
「どうでもいい、多分今がチャンスだ。突撃するぞ」
男たちが林に一斉に入ってきた。宇宙船は向こうだ!近い!
私はガイガーカウンターを林の中に放り投げると、一目散に宇宙船の方に向かった。
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