棒を辿る

@miz-

棒を辿る

 無数の金属の棒が、目の前の空間を縦に区切る。何等分にもなった目の前の空間に一切見覚えはない。ただ、今この場に産み落とされたという漠然とした自覚が、若干の恐怖を纏って私を覆った。


 私は目の前の金属の棒を握って立ち上がった。


 ––––– あたりをもう一度見回してみる。目の前の金属の棒が、一直線ではなく、円の一部のように、少し曲がって配置されていることに気づいた。不思議に思った私は、その金属の棒を辿って歩き始めた。

 最初はその棒が円形に並んでいると思い進み始めた。しかし、何の目印もないその空間では自分の位置がつかめず、自分の辿っている棒が円形に並んでいるということは確認できそうになかった。そのため、自分のいる場所が内側なのか外側なのかもわからないままに進むしかなかった。


 途中、金属の棒から離れるように進んでみようかとも思ったが、それらの反対側には何も見えず、頼るものもなく進むのも怖かったため、結局棒をなぞって進むことにした。

 



 ––––– どれほど歩いたかはもう覚えていない。なぜ棒に沿って歩き続けたのかもわからない。私はもう、歩くことに疲れ果てていた。その時、十数本先にある棒がひどく錆びているのを見つけた。私はその錆びた棒まで歩いたら終わりにしようと思った。


 その錆びた棒にたどり着いた私は、その場で眠りについた。私の"辿り"はそこで終わった。

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