第7話 恋心

 荘志とお祭りを楽しんだ後の電車の中、美琴はついニヤニヤしていた。


 美琴はもう一度、荘志に貰ったウサギのキーホルダーを眺める。

 そして、にやけた笑みを浮かべる。


 ――今日の荘志くんもかっこよかったなぁ……。


 美琴は、荘志のことが好きだった。

 悪質なナンパから守ってくれたあの時から、美琴は荘志に惚れていた。

 そして、明るく、優しく、夢に向かって真っすぐな荘志を見て、ますます荘志のことが好きになっていった。


 それに、荘志が美琴と同じ大学を目指すと言ったときはとても嬉しかった。


 美琴は荘志に勉強を教えたり、お弁当を作ったりと、自分なりに頑張ってアピールをしていたが……、


 ――きっと荘志くんは私のことなんとも思ってないんだろうなぁ……。

 大体、あんなにかっこいい荘志くんが私のこと好きにならないだろうし……。


 それが美琴の見解だった。


 二人は、どこかすれ違いな恋をしていた。


 ――いっそ想いを伝えちゃおうかな……。いや、それはダメだよね。今はお互い受験生だし、荘志くんの邪魔はできない。それに、告白したら今の関係もなくなっちゃうかもしれないし……。

 美琴は複雑な恋心を思い悩ませる。


 ――こんな気持ち、いつぶりだろう……。

 美琴はふと思った。

 美琴は中学、高校とほとんど恋をしてこなかった。


 そんな美琴にとっては、今の生活ができるだけでも夢のようだった。

 こうやって、毎日荘志と一緒に勉強して、おしゃべりしながらご飯を食べて、一緒に帰って……。

 荘志と一緒に居られるだけ、幸せだった。

 好きな人に色々頑張ってアピールするのも、楽しかった。


 美琴は、この毎日が大好きだった。


 ――今は、お互いのため、そして荘志くんのために我慢しよ!


 美琴はキーホルダーを握りしめながら、そう決意した。





 駅に着く間際、美琴はふと、さっき会ったのことを思い出す。

 まあ、もうあの人・・・とは二度と会わないだろう……。



 美琴は、そう思っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る