第4話 知りたい先輩
翌日、早速麻耶は友人の美穗に尋ねてみた。
「ねえ美穗。先輩で由美って美人タイプの人って知ってる?」
美穗は見た目可愛いのだが姉御肌で、その微妙なギャップが絶妙で男子からも女子からも人気があり交友も広く、結構情報通だった。
「やっぱり知らずは本人ばかりなりだったか」
「え、何」
想定外の返答に戸惑いながらも由美を知っている様子に関心を深める麻耶。
「去年の夏休み明け、どこからだったかよく知らないけど転校してきた先輩でしょ」
「私知らない」
「ふう~。さっき言ったのはね、その美人タイプの由美先輩とあなたとどちらを彼女にしたいか男子が騒いでいたの気づいていなかったのねって事。まあ、あなたは航お兄様命で航様も麻耶以外の女子に無関心なご様子でしたから」
由美の説明に少しケンがあるように聞こえたが、それよりも気になる語句があった。
「航様って何」
「そこ突いてくるか…あのね、あなたの兄上女子の推しがすごぐ多かったの。それこそ在校の女子だけで無く近隣の学校の女子からも。それで名前を語る時には様を付ける暗黙のルールが出来たの。まあ、航様があなた以外の女子に無関心と言うこともあったのだけどね」
「…そう、なのね。気付かなかった」
「だからね、あなたに近づく女子は航様目当ての子も多かったのよ。まあ男子の方は言わずもがなですがね」
「男子はともかく女子は将を射んとすれば…ですか?ひょっとして美穗も」
「正直そんな気もあったけどね、でも可憐で頭も良くて性格も悪くないのに少し天然な所がなんか私がいなきゃって思ちゃったんだよね」
どうリアクションすれば良いのか答えを出せず、美穗を崇めるような眼差しで
「?ありがと?」
と、とりあえず返しておく。
「たらしか。それより何で由美先輩のことを?ひょっとして航様の…」
「まだ確定ではないのよ、ちょっと気になって」
「とっても気になるけど、それに二人がシスコン、ブラコンではないことがってブラコンの方はまだなんとも…ともかくシスコンでないことは証明された。これは大事件よ」
「ちょっと、ブラコンって何よ!私は違うわよ。航兄いもシスコンでは無いわ」
「ははは、まあ半分は冗談よ。でもあなたたちを見ていると入り込む隙が無く見えていたのは事実よ。仲が良いって言う以上にね。まあ、身近にいる異性が近所でも評判の美男美女なら他の異性が見劣りするのも判るけどね。そんな事よりもっと航様と由美先輩の関係を詳しく話しなさい!」
人に聞かず、まず自分で調べるべきだったと後悔する麻耶だった。
航と由美の出会いが中3の終わり頃だったことが麻耶にとって幸か不幸かはなんとも言えないが、二人が付き合い始めて半年程経つが航は由美を麻耶に会わせることは無かった。
麻耶が航と同じ高校を受験するため、その対策で時間が取れないこともあったが航がその事を避けている感もあった。
相変わらず麻耶に優しく気遣いしてくれているため、今は受験勉強を優先して落ち着いたら会わせてくれるようお願いしてみることにしていた。
麻耶の学力なら合格出来るだろうとの担任の先生は言ってくれているのだが油断は禁物だ。
同じ高校に通うようになれば会う機会も出て来るはずだ。
航も了承して会わせてくれるだろう。
その高校を受験する理由はそれだけではないがモチベーションの一つなのは正直有る。
結果は嬉しいものとなった。
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