第10話 誓いとパイ圧と言葉攻め
「皆さん、本当にお世話になりました」
俺は神殿にいる人たちに深々と頭を下げる。
長かった修行がようやく終わった。
ここで何があったのかを深く語るのはやめておこうと思う。
ただ神殿は本来男子禁制の地。そんな女の花園に、俺という超モテ男がやって来たのだ。
それはもう本当にあり得ないくらいエロ三昧だった。
しかも婚約者が常に目を光らせているという状況なのもあって、他の女性に興奮してぶっ倒れるという醜態を晒すわけにもいかない。
正に生き地獄とはこのことである。これが俺の日常生活の縮図だと思うと恐ろしくなるほどだ。
貞操逆転の世界とは正にこのことを言うのだと思う。
でもそのおかげで女性への免疫がかなりついたのは間違いない。
これで空から降ってくる裸の女を見ても、気絶しない程度の男にはなれただろう。
……多分。
「シュヴァルツ様。私はここに残り、今一度、聖女としての務めを果たしたいと考えております。なので、ここでお別れですね……」
そう言い、ナターシャは口元を――俺が最も
ここに来てから、俺とナターシャは毎日キスをしていた。
彼女の体に溜まった穢れの量は半端じゃないはずだ。きっと一朝一夕で落ちることはないだろう。
もちろん、彼女はもう国の所有物なんかじゃない。
本来は神殿に残る義務なんかないが、逆に言うと神殿に残ることを選ぶのもまた彼女の自由。
もちろん、これがナターシャの本意ではないことくらい俺にもわかっている。
だけど俺は自分のことで手一杯な状況だ。
しかも俺が記憶を失くしたのは、魔族の仕業のか、人の仕業なのか、それとも全く関係ないのかすらわかっていないときた。
そんな不確かな状況で、軽々しくナターシャの身の安全を守れるとは言えやしない。
悔しいけど、この神殿以上に彼女が安全に暮らせる場所はないだろう。
それもこれも、全部俺が不甲斐ないせいだ。だから彼女は自分の人生を歩めないでいる。
もちろん、いつまでもこのままにしておくつもりはない。
立派な男になって、必ずナターシャを迎えに来よう!
「紅葉を見に行くという約束を覚えていますか?」
「……え?」
驚いた表情を浮かべるナターシャ。
まさか俺がこんなことを言い出すとは、微塵も思っていなかったのだろう。
「思い出したんです。秋になったら、俺はあなたと一緒に紅葉を見に行く約束をしていたということを。それまでに俺は、あなたに俺の傍が世界で一番安全な場所だと胸を張って言える男になります。だから、少しだけ。あと少しだけ。ここで俺のことを待っていてくれませんか?」
俺の言葉がよほど嬉しかったのだろう。ナターシャは目に涙を浮かべた。
「私を誰だと思っているのですか? あなたが魔王を倒して帰って来る日を、ずっと待ち続けていた女ですよ! 待つことには慣れております。だから――だから、必ず迎えに来てくださいね……?」
そう言い、嬉しそうに笑うナターシャ。
俺はそんな彼女の手を強く握って誓う。
「必ず迎えに来ます!」
そうして、俺はナターシャに見送られながら馬に跨った。
「シュヴァルツ様! 次に会う時は、私を普通の女の子と同じように、あなたに恋をさせてくださいね!!!」
俺はそんな彼女の声に片手を上げて答える。
振り返ることはない。
泣きそうになっている顔を見られたくないという気持ちも、もちろんある。
男の涙なんてカッコ悪いからな。こんな俺にもそういうプライドくらいはある。
……だけど本当の理由はそこじゃない。
よく思い出してほしい。俺がこの神殿にやって来た時に、俺の背にいた人物のことを。
行きと帰りで馬の数が増えるわけではない。
当然、誰かの馬は二人乗りになる。そしてこれは俺の女慣れの修行。
誰が言ったか、帰るまでが遠足であると。ならばこれは帰るまでが女慣れの修行の旅だ。
「殿下。行きと同じように、興奮してはいけませんよ。聖女様が悲しんじゃいますから♡」
甘ったるい声と共に、押し付けられるオリヴィアさんの豊満なおっぱい。
心無しか、背にかかるパイ圧は、行きよりも増しているように感じる。
ま、まぁ俺は色々なものを背負っているからな。
背中の重みは、決しておっぱいだけのせいではないはずだ。
これは強い想いが、約束が、決意が、経験が乗っかっている重みだ!
……いや、違う。やっぱ違う。
カッコつけました。ごめんなさい。
背中の重みは完全におっぱいです。
どうやらオリヴィアさんは、俺の女慣れの成長に合わせてパイ圧を上げているようだ。
容赦がない。容赦しろ。いや、容赦してください。頼むからッ!
……ああ、辛い。ナターシャとの別れが辛いのか、こんな局面で意識がなくなりそうなほど興奮している自分が情けなくて辛いのかわからなくなってきた。
確かなことは、今の俺の顔をナターシャに絶対に見せてはならないということだ。
感動の別れ際に、こんな情けない顔を見られたら、100年の恋も覚めてしまうだろう。
だから俺は振り返らない。振り返ってはならないのだ!
「本当に強くなられましたね、殿下♡ でも、ずっと思っていたんですけど、一緒のお馬さんに跨るってシチュエーション、結構えっちぃくないですか? あと私って、結構お馬さんの操縦が得意なんですよ。なので、もし殿下とお馬さんごっこしたら――」
――なんか胸だけじゃなくて、言葉攻めまで加わってない!?
え、この人こんなキャラだっけ!? てか、これって演技なの!? それとも本気!?
もし俺にこんな運命を用意した
アンタ、絶対頭おかしいだろぉぉぉ!!!
――あとがき
とんでもない神様ですね(すっとぼけ)
そしてようやく第一章の終わりが見えてきました。
よく考えたら、一章全部がこの作品のプロローグですね。
こんな調子で地に足つけたカオス(?)な作品を目指していくので、もし良ければこの作者のやる気スイッチでも押してやってください。
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