第6話 ソフィアの部屋

「はぁ、はぁ、……うふふっ。お兄様だぁいすき♡」


 ……おや? 何やら人の気配がすると思ったら、カクヨムの読者様異世界人ですか。


 ここは私の寝室ですよ。乙女の秘事を勝手に覗くとは、あまり褒められた行いではありませんね。


 まぁ、ここで会ったのも何かの縁。少しお話しでもしましょうか。

 

 私はソフィア・ヒストリア。アレスティア王国の王女です。

 私の1日は、お兄様とイケナイ関係になっている妄想から始まります。


 お兄様は私にとって唯一の異性。私はあの人以外の男性と結婚するつもりはありません。


 とはいえ、多くの人たちは近親者とそういった関係になることを嫌う傾向にあります。

 そしてどうやらお兄様もその内の一人のようですね。

 私はお兄様に心の底から求められることはないでしょう。


 そのことは本当に悲しい。悲しくて、悲しくて、涙が止まりません。


 ……だけど、障害の多い恋って燃えませんか?


 それに自分で言うのもなんですが、私は魅力的な女です。

 きっとお兄様も私のことを妹ではなく、一人の女として意識すれば考えを改めて頂けるはずです。

 そのために私はお母様から王位を略奪して女王となり、お兄様と結ばれることで私の女としての魅力を伝えるという計画を推し進めて参りました。


 まぁ結局、その計画はお母様に勘付かれたことで頓挫しましたが……。

 今思えばあれは私の失言による自滅でしたね。完璧な王女と呼ばれる私にも、お兄様という明確な弱点が存在します。


 まぁ過ぎたことをいつまでも嘆いていても仕方ありません。


 あの場は深く追求されませんでしたが、お母様に泳がされている可能性はありますし、暫くは大人しく王選で勝つための計画を練るとしましょう。


 ……現状のままだと、私はお兄様に勝てる可能性はゼロです。


 お兄様は人々から絶大な支持を受けているお方。

 そんなお兄様に勝つためには、お兄様に恋する乙女たちシュヴァルツ・ガールズをどこまで私の陣営に取り込むかが鍵となります。


 恋は盲目と言いますからね。

 何もしなければ、この国の女性票は全てお兄様に流れてしまうのは確実です。


 しかし、私もシュヴァルツ・ガールズの一人。

 お兄様に恋する彼女たちの気持ちは手に取るようにわかります。

 そこに上手くつけ込めば、勝算は十分にあるはず……。


 ……くふっ! 良いことを思いつきましたわ! これから忙しくなりそうです。


 ……さて、私ばかりが一方的に話すのもなんですから、少しばかりあなたが知っている情報を私に提供してくださいませんか? 


 難しいことではありません。


 あなたはさっきまでその時空の狭間から、お兄様の動向をうかがっていましたよね?

 そこから見えたお兄様のご様子を私は知りたいのです。


 ああ、もちろん、今お兄様は女慣れの修行中だということは存じております。

 間違いなく、それなりに過激な状況に陥っていることでしょうね。


 でも、ご安心を。私は男性の性欲には一定の理解がある女です。

 数多くの女に求められることは、優れた男である証明ですからね。

 そのことをとやかく言うつもりはありません。


 ……ただ、一人の女にのめり込むのは許せません。


 記憶を失くされる前のお兄様は、聖女あの女にゾッコンでした。

 あの光景は片思いを拗らせた私にとってトラウマです。

 またあのような関係に戻ってしまったらと思うと気が休まりません。

 それに聖女の持つ退魔の力を取り込めば、お兄様が受ける影響は未知数……。


 ……あ、未だこの話はしておりませんでしたわね。お兄様が記憶を失くされたことには、魔族が関わっております。


 あれは魔族がかけた呪いのせい。

 厳密に言うと、退魔の力に耐性を持った魔族の呪いですけどね。


 何故私がこのようなことを知っているかについては、乙女の秘密ということでご理解くださいませ!


 まぁ耐性があるとはいえ、退魔の力によってお兄様にかけられた呪いが弱まる可能性は否定できません。

 あと何よりも、お兄様と聖女がいちゃつくことは、我慢なりません。


 ……まぁこれは心配性の類だということは自覚しております。


 記憶を失くしてしまわれたことで、お兄様は女性に対して奥手になられました。

 あのような状態で、接吻などの過激な行為は不可能でしょう。

 それにお兄様の護衛の中には、私の息のかかった者もおります。

 彼女らがお兄様と聖女が過度な接触を行わないように、上手く取り計らってくれるはず。


 ……しかしそれでも、やはり気になってしまうのが恋する乙女というもの。

 そんな折に、異世界人であるあなたが私の部屋に来てくださいました。

 さぁ、あなたの見た光景をありのまま私に話して、私の気を落ちつけてくださいませ……


 ……はぁッ!? お兄様が、自ら聖女の唇を貪った!?


 ……異世界人さん。それは本当の話ですか?


 まさか、あんな状態のお兄様が、女性に対してそこまで積極的なアプローチを取るとは思いもしませんでした。

 聖女はそれほどまでにお兄様にとって魅力的な存在だったってことかしら……? 悔しいけど、そのことは認めざるを得ないようですね。


 その間、護衛たちは何処で何をしていたのですか? ……そこまでは見えなかった。そうですか、わかりました。


 取り乱してしまい、申し訳ありません。


 今のお兄様が女性に積極的になるとは、にわかには信じられませんが、あなたが嘘をついているようにも思えない。


 ……わかりました、あなたの話を信じましょう。


 その代わりと言ってはなんですが、あなたには私の協力者になってもらいたいのです。


 見返り……? この私と話せること以上の対価なんて必要ないでしょう?


 交渉成立ですね!


 それでは異世界人さん。これからも末長くよろしくお願いしますわね!


 時空の裂け目が私の部屋に繋がったら、またお話しましょう。

 それまでに有益な情報、たくさん集めておいてくださいね。


 それではまた――






 ――後書き


 これでようやく長いプロローグ的なものが終わりました。

 フォローや評価等、ありがとうございます(^ ^)

 これからもこの小説の観察をよろしくお願いします(悪ノリ)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る