第15話 お家騒動極まれり~Sideヴェーデル伯爵家~
ヴェーデル伯爵はエミーリアの失言による財産の盗難、そして先日発覚した妻アメリ―の不貞行為の後始末に追われていた。
しかし、執務室でそれらを忙しく処理するヴェーデル伯爵に、執事がただならぬ気配を纏わせて部屋に入ってくる。
「旦那様っ!」
「今忙しいんだ! あとにしてくれ」
「王族の使者が急ぎ直々にこれを旦那様にと……」
「王族からだと……?!」
急いで手紙の中身を確認すると、ヴェーデル伯爵は一瞬で青ざめた顔になる。
「……ていけ」
「はい?」
「今すぐこの部屋から出ていけっ!」
「は、はい!!」
焦って冷や汗をかきながら怒鳴り声をあげるヴェーデル伯爵に、執事も慌てふためきながら出ていく。
部屋に一人きりになったヴェーデル伯爵は誰もいないことを確認すると、もう一度手紙を開いた。
「な、なぜバレた……」
ヴェーデル伯爵はもともと何年も前から領内の税金を不正に少なく記載して王国に提出していた。
そしてエミーリアの失態やアメリ―の不祥事後、財政が苦しくなった伯爵はその不正金額記載の幅を広げた。
それがなんと王国にバレてしまい、邸宅の取り調べに国の使いがやってくるという手紙だった。
ヴェーデル伯爵は急ぎ、不正に関わった側近に確認しようと家中探しても見つからない。
「ええいっ! もういい!!」
そう叫ぶと、自分の執務室に隠してあった不正に関する帳簿などの証拠を、外の焼却炉で燃やすために一気に引き出しから取り出す。
机の上に紙が散乱し、もともと置いてあった明かりなどはものに押されて落ちる。
そして机の上だけではなく、床にまで帳簿や本など様々なものが散らばっていく。
執事の一人がドアをノックするも、ヴェーデル伯爵は不正隠ぺいに必死で聞こえていない。
「旦那様、失礼いたします」
ドアを開ける執事は、ある人物たちを伯爵の部屋の中へと案内した。
その人物たちは執事に礼を告げて、部屋に伯爵と自分たちだけにするように告げる。
執事はびくびくおびえながら、「かしこまりました」と告げるとドアを閉めて去っていった。
「くそっ! なんでこんなことに……」
ヴェーデル伯爵はそれはもう部屋中に紙やら本やらを巻き散らかして必死に帳簿を手元に集める。
それゆえ、近づいてきた人物たちの気配に全く気付かなかった。
「お手伝いしましょうか?」
「いいっ! 使用人ごときがなんとかできるものでは……っ!!!!!」
ヴェーデル伯爵の手が止まった。
なんと伯爵の前で手を差し伸べていたのは、エルヴィンだったのだ。
「ア、アイヒベルク公爵……」
そしてエルヴィンの後ろには、第一王子クリストフ、横にはシャルロッテがいた。
「さあ、『国の使い』が3名やってまいりましたよ」
そういってエルヴィンは不敵に笑った──
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