第9話 嫉妬で溺愛モード突入?!

 クリストフがアイヒベルク邸に来たその夜、シャルロッテはエルヴィンに呼ばれて彼の部屋に向かっていた。


(やはり、私何か失礼なことをしたのでしょうか)


 シャルロッテは不安を抱えながら、ドアをノックする。

 中からどうぞという声が聞こえたため、そっとドアを開けて入った。


 すると、全て身体が部屋に入る前にシャルロッテは腕を引かれて中に入る。

 シャルロッテはドアの傍にあった壁に押しやられ、エルヴィンはシャルロッテの顔のすぐ横の壁に手のひらをつく。


「エルヴィンさまっ?!」


 シャルロッテは壁に背がつき、エルヴィンの顔がすぐ近くに迫っている。

 そのまま唇と唇がくっつくかという距離になったときに、エルヴィンはシャルロッテの長い髪と首元に顔をうずめる。


 シャルロッテはこそばゆく、もぞもぞとして逃げようとするが、今度は足で逃げられないようにガードされる。


「ん~っ!!」


 目をぎゅっとつぶるシャルロッテに、エルヴィンは彼女の首元に唇をつけた。

 ぺろりとなめられる感触がしたあと、今度はまた唇で吸い付く感覚に襲われる。


「え、エルヴィンさま……」


 シャルロッテは恥ずかしさとこそばゆさを感じ、そして胸が苦しく呼吸が乱れた。

 そして、ようやくエルヴィンは首元から顔を離し、シャルロッテの目を見つめる。

 今度は優しい顔つきで頬をなでた。


「ごめん、どうしても耐えられなかった」

「どうかされたのですか?」


 少し目に涙をためるシャルロッテに気づき、エルヴィンは細い指先で涙をそっと拭う。


「君がクリストフに触られたのをみて、あのあと仕事が手につかなかった」


(あ……手の甲に唇をつけられたあのこと)


「あの場では感情的ではないといったけど、心の中ではものすごくどろどろと嫉妬の波に襲われていたよ」

「嫉妬?」

「もしかしたらシャルロッテはまだその気持ちは未体験かもしれないね。すごく辛いものなんだ、そして醜い」

「でもエルヴィンさまは私のことを思って『嫉妬』してくださったのでしょう? ならば私は嬉しいです」


 シャルロッテはいつもしてもらうように、エルヴィンの頬をなでて微笑む。


「エルヴィン様から想ってもらえて、私は幸せです」

「──っ!」


 無邪気な笑顔を見せるシャルロッテに、エルヴィンはさらにまた彼女が愛おしくなる。


「君って子は……ほんとうに私の扱いがうまい」

「え?」

「でもいけないよ、煽りすぎると」


 そういってエルヴィンはシャルロッテの唇のすぐ横に唇を当てる。


「──っ!」

「今度は逃がさないからね?」


 一瞬で普段の優しい顔から獣のように鋭い視線を送るエルヴィンに、シャルロッテは顔を赤くして俯いた──

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