第51話 要さんの友人
「
「ワタシは毎週どこかしらで飲んでるから気にしないで。こっちは友達の
セミロングの女性が梓さんで要さんの友人で、この人も目を引く美人で要さんの友人というのが納得できる。
ショートヘアの女性の方、楓佳さんはナチュラル系で背は165cmくらいだろうか、小顔で何頭身あるんだろう。可愛いよりも、クールな感じの美人だった。
「初めまして、楓佳さん。わたしは要で、隣にいるのが恋人の紗来です」
要さんに紹介されて私も頭を下げて挨拶をする。
2人とも話しにくそうな感じはないけど、初対面なのでやっぱり緊張する。
「要、もしかして紗来さんって学生!?」
「社会人です。年も25なので成人してます」
梓さんの言葉に身を縮めながら年齢を告げる。
私ってそんなに幼く見えるんだろうか。メイクも上手くないから社会人っぽくないのかもしれない。
システム会社にいると女性は少ない上に、一所に固まるってことがあまりないので、自分は自分路線の人が多い。地味な人もいれば、要さんみたいにシステム屋さんに見えないような人もいる。
「そうなんだ。また、要が右も左も分からない子をころっと騙して付き合わせたのかって思っちゃった」
口調からするに梓さんは要さんと結構仲がいいんだろう。私は騙されたではないけど、半分くらいは合ってるかもしれない。
「紗来ちゃんは純粋なだけ。繊細なんだから茶化さないであげて」
「鼻の下が伸びまくってる要って、かなり貴重〜」
私は今の要さんしか知らないけど、他の人と付き合っていた時って要さんはどんな感じだったんだろう。まさか、梓さんは元カノだったりするんだろうか。
「そういう梓はどうなの?」
「長続きしないかな。紗来ちゃんちょうだい」
「寝ぼけたこと言わないで。楓佳さんはただの友達?」
「楓佳は恋人いるからね」
楓佳さんは物静かなタイプのようで、話題を振られて口元を緩めて微笑む。
叶野さんとは違うタイプだけど、楓佳さんって目の保養になる人だ。でも、そういう人がシングルなわけないか。
そのタイミングで、梓さんと楓佳さんの分のお酒も揃って、まずは乾杯をした。
それぞれ注文したカクテルの色が違って、居酒屋よりも種類が豊富で見ているだけで楽しい。
「で、いつから要と紗来さんは付き合ってるの?」
「付き合い始めたのは去年の10月からだから、ちょうど3ヶ月かな。紗来ちゃんはビアンだったわけじゃないから、時間を掛けてやっと付き合ってもらった感じ」
「お昼ご飯に誘われていたのとかって、そういうことだったんですか?」
「今気づいたんだ」
私が鈍いことは自分でも分かっていたけど、ただ隣人だから気軽に誘いやすくて誘われていたんだと思っていた。
そっか……あの頃から要さんって私のことを好きでいてくれたんだ。
「よくそれで付き合うになったねぇ。要が押し倒したの?」
「そんなわけないでしょう。紗来ちゃんにはいつでも誠心誠意尽くしてるから」
「そういうこと、言わなくていいんですけど……」
恥ずかしくなって、要さんに小声で苦情を出す。
要さんがいつも私のことを考えてくれるのは本当だけど、2人でいる時のことを他人に話すのは恥ずかしい。
「仲良さそうなのはいいことだけど、聞きたいことっていうのは?」
要さんが友人に声を掛けたとは聞いていたけど、梓さんのこの様子だとほとんど何も話していなさそうだった。
要さんのことだから、飲みに行こうくらいしか言ってないのだろう。
「聞きたいことって程じゃないんだけど、紗来ちゃんってわたしが初めての恋人なんだよね。
で、わたしのことは好きだけど、自分はどうしたいんだろうって今迷ってる真っ最中なの。それで、自分の世界を広げたいって言うから今日は連れてきたんだ。別に何を話せってことでもないから、いつも通りでいいよ」
「分かった。でも、紗来ちゃん、引き返すなら今からでも遅くないよ?」
「梓!」
「だって、要自分の都合のいいことしか教えなさそうなんだもん。簡単じゃないでしょ? こっちで生きるってことは」
そう言ってくれる梓さんは、それだけ色んなことを経験してきたのだろう。
私が今直面しようとしていることは正にそれで、誤魔化さずにそういうことを話してくれる相手だから、要さんは今日梓さんに声を掛けてくれた気がした。
「でも、ワタシより楓佳の方が今の紗来さんに近いのかもね」
「話すの?」
梓さんの振りに今まで聞いている一方だった楓佳さんが会話に加わる。楓佳さんの声は女性にしては少し低めだけど、よく通る声だった。
容姿もだけど、この人は声でも女性をあっさり落とせそうな気がする。
「無理に話さなくてもいいですよ。楓佳先輩」
「今は先輩後輩じゃないんだからやめて」
「高校の時の1つ上の先輩なんだ楓佳は。女子校で、めちゃくちゃもててね。本人は素っ気ない振りをするから、それがまた人気だったんだ」
それで梓さんと楓佳さんの関係性が見えてくる。私は女子校ではなかったから想像でしかないけど、楓佳さんって所謂王子様な人だったのだろう。
「その内のどなたかが恋人だったんですか?」
「残念。そうじゃなかったんだなぁ」
梓さんの返事に、言えばいいんでしょう、とでも言うように楓佳さんが渋々口を開いた。
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