第7話 ネイキッドお嬢様、お客の前でも平然と裸の付き合いを要求する

「おかえりなさいませ、お嬢様。ヒカリさま」


 ようやく、ご帰宅である。


 一応、わたしの部屋は響子さんと同室になっていた。なにかといえば脱いでしまうからだ。


「ああ、疲れたぁ」


 自室のベッドに、わたしは体を預ける。


 わたしの謎の光能力は手から光を放つだけ。さほど体力は使わない。


 なのに、どっと疲労感が押し寄せてくる。


 響子さんは、いつ脱ぐかわからない。常に神経を張り巡らせておく必要があるのだ。


「のんびりしている場合ではございませんわ、ヒカリさん。これより、親戚と会食なのです」

「うわあ。そんなところで脱いだら大変ですね」

「ええ。もう少しの辛抱ですわ」


 本当は、このまま寝室に身体を預けたい。


 だが、まだ夕飯が残っている。


 あれだけ食べまくって帰ってきたので、ゴハンは特に欲していなかった。


 とはいえ、一流のシェフが腕によりをかけた芸術品となると、またお腹が鳴り出すので不思議である。


「テーブルマナーは、把握してらして? 礼節が、人を作ります」

「はい。教わったとおりに」


 この家の食事は基本、味を追求した少食ばかり。


 食事中の会話も、経済状況や国の今後を憂う内容が大半である。


 しかも、同席する親戚は威厳のある方たちだ。TVで見たことのある顔ぶれである。


 お腹に溜まらない料理ばかりが並ぶのは、仕方ないのかも。


 響子さんがジャンク狂になった理由が、わかる気がする。


 きっとおじさまやおばさまも、夜中にラーメンか牛丼を頼むのだろう。


「やっていられませんわ!」


 急に響子さんが、お冠になられた。


「国の情勢より、わたくしたちの学園生活などを聞いていらしてもよくってよ! いとこなんて、さっきからあくびばかり! もっと楽しい会話をしてこそ、楽しいお食事というものでしょ!」

「まあまあ、響子ちゃん。我々は国を支えるトップだ。大事な話をしているんだから」

「なんですの!? 家族では大事ではないと? おじさまは、なにかやましいことをなさっておいでですか!? だから、プライベートな話題を避けていらっしゃると!?」


 響子さんのお母さまが、「響子!」とたしなめる。


 だが、響子さんは止まらない。


「もうウンザリですわ! みなさま、腹を割ってお話しなさいよ! そう。このオムライスみたいに! 裸で! 生まれたままの姿で!」


 来客用のドレスを脱ぎ捨て、響子さんが丸裸になった。


「ファッ!?」


 いけない。これでは、家族間に亀裂が生じてしまう。


 わたしは謎の光を放って、この場を凌ぐ。


「なんなんだ響子! 国を思う我々に説教するか!」


 響子さんのお父上が、テーブルを叩いて立ち上がる。


「違います! せ、せっかくいとこの方がいらっしゃるというので、響子さんは一緒にお風呂に入りたいそうです!」


 大急ぎでバスタオルを、響子さんの身体に巻いた。


「き、今日は、体育祭で踊るダンスを練習しましたし、汗もかいたので」

「そ、そうか」


 お父上が、冷静になって座る。


「ヒカリくんだったね? イトコと響子を、浴室まで連れて行ってあげてください」

「はい。ごちそうさまでした。おいしかったです」


 ワタシが言うと、お父上はうなずいてわたしに下がるように告げた。


「ヒカリさん」

「なんでしょう?」

「ありがとうございます。あなたがいなければ、あの場は戦場になっていましたわ。おそらくは日本じゅうが」


 大げさすぎぃ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る