第5話 ネイキッドお嬢様、密室なのをいいことに脱ぎたがる!

 放課後、響子さんが「カラオケに行きたい」というのでついていった。


 さっき助けたギャルの、バイト先らしい。ドリンクバー付きのタダ券を譲ってもらった。


 何曲か歌ったが、脱ぐ気配はない。


 二人だけなのでローテーションがヤバいと思ったが、響子さんは基本食ってばかりなので気にならなかった。

 天ぷらうどんだけでは、エネルギーが枯渇するようである。


「よく食べますねぇ」

「おいしいからですわ」


 ミニ担々麺のスープをすすりりながら、響子さんがポテトを口へザザーっと放り込む。


「ヒカリさんもどうぞ」

「ありがとうございます」

「お夕飯、出ないんですか?」

「家政婦さんのお料理に、不満があるわけではありませんのよ。ですが、庶民の味は別腹というか」


 わかる気がする。誘惑に勝てない。


 ラーメンもポテトもおいしいが、全部辛いものだ。ナゲットのソースも、マスタード味である。汗をかきそう。たしかにこういう大雑把ながらもおいしい味は、お金持ちの家では出ないかも。


「脱がないんですか?」

「室温が、涼しいですから」


 さすがに、監視カメラまであると脱がないか。響子さんは、コンビニでも平気で脱ぐが。


 だが、この盛り上がり方は異常すぎる。ポテトの消費も早い。


「響子さんが歌ってるの、平成歌謡ばかりですね?」

「親の影響でしょうね」


 親がギリ平成世代なため、覚えている曲もそればかりになっているという。


「令和ソングは、耳馴染みがありませんから」


 お嬢様学校でも度を越してリッチなためか、響子さんはお友だちが少ない。周りから、情報がもらえないのだろう。


「さて、これにしましょうかね」


 腹を満たした響子さんが、曲をセットする。


 男性歌手の曲だ。聴いていると、「猛獣は裸になりたい」という感じの歌詞だ。


 いやな予感がする。


「あーこれですわ! これを歌いに来たのです!」


 やはりだ。響子さんが制服のリボンに手をかける。


「担々麺と辛味ソースのチキンナゲットを食べたからでしょうか。汗でお召し物がすけそうですわ!」


 汗をかいて、合理的に脱ぐつもりだったか!


 監視カメラにお嬢様の肢体が映ってしまったら、いかがわしい動画サイトにアップされてお金を稼がれてしまう!


 わたしは、謎の光を放って響子さんを守った。


「お客様、ドリンクをお持ちしましファ!?」


 女性店員が驚く。


「これは、衣装です! 貸し出してくれているんですよね?」


 小道具からナース服を引っ張り出して、響子さんに着せている。


「ごゆっくりどうぞ」


 店員は去っていった。


「ヒカリさん」

「はい?」

「次はメイドカフェでお茶をしましょう。コスプレをしたら、行きたくなりました」


 まだ食うの!?

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