第4話 ネイキッドお嬢様、率先して風紀を乱す

 下校時間を迎えた。


「そこ、ヘアアクセ禁止よ!」


 風紀委員が、校門を出ようとするギャルを呼び止める。


「えーっ。下校時間だからいいじゃーん」

「ダメよ。帰る時間だからこそ、風紀は正さなきゃ」


 マジメな風紀委員は、メガネをクイッと整えてギャルを叱った。


「ごきげんよう。精が出ますね、風紀委員さん」

「ああ、神楽坂さん。ありがとうございます」


 風紀委員が、響子さんとあいさつをかわす。


「ですが、帰りの時間まで校則で縛るとは、いささかやりすぎではありませんこと?」

「そうでしょうか? たいてい学生というのは、放課後にハメを外してしまうもの。抑圧から開放され、油断を生んでしまいます。家に帰るまでが、生徒なのです」

「堅苦しいですわ」


 これまで風紀委員との温かい会話が、凍りつく。


 ヤバいことになってきた。主にわたしが。


「あなたのような人や世間が年端も行かぬ生徒をがんじがらめに縛り付けるから、日本の学徒は世界に後れを取るのですわ。そもそも、海外には制服すらありません。このままでは、優秀な人材は、どんどん海外へ流出してしまいます。実際、今の現状はそうでしょう? 日本はドンドン住心地の悪い国となり、世界との格差は広がるばかりじゃありませんか」


「は、はあ……」


 もっともらしいことを、響子さんは言う。


 だが、響子さんの狙いが別にあるとわたしは知っていた。


「日本の生徒は、もっと自由であるべきなのです」


 来るぞ来るぞ!



「そう。このように!」



 来た! やっぱり脱いだ。

 もうわかっていた。

 ミニスカのファスナーに手をかけて、赤い下着がちらついていたから!


「ファッ!」


 風紀委員が、目を丸くしている。


 いけない。ここで全裸になっては。


 ただれた性欲に免疫のない風紀委員が響子さんの裸体を拝めば、百合の花が咲き乱れてしまう!


 わたしは、両手から謎の光を放つ。


「ななな、トップレベルのお嬢様自身が、風紀を乱すなんて!」

「乱してなんかいません!」


 風紀委員に、わたしは反論した。


 ちゃんとわたしは、響子さんに私服を着せている。お嬢様ワンピースとお嬢様ロングスカートだ。


「響子さんは、早着替えをしただけです。下校時間ですから、一瞬でオウチに帰って一瞬で着替えてきたのです。制服を着て繁華街を練り歩いては、目立ちますから!」

「そんな! 超能力者じゃあるまいし!」

「響子さんなら、可能なはずです! リムジンもあるから!」


 謎理論で、風紀委員を丸め込む。


「ま、まあ制服を着ないと言うなら、いいでしょう。気をつけてお帰りなさい」


 どうにか、響子さんの風紀は守られた。


「ヒカリさん」

「はい?」

「先程のギャルの方から、カラオケのタダ券を譲っていただきました」


 あっちに惚れられたかー。

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