第16話 計画を修正し過去を反省する
う~ん…霧島君の真の主人公となる計画があまりうまくいっていない……
なぜだ…見るからに、皐月と霧島君の距離が近づいていないのだ。いや、霧島君はいろいろ気にかけているんだよ?ほら、積極的に放課後とか誘っているのを見かけるんだけど…
ん~、皐月さんが惚れている兆候がみられないんだよね~。最近では、霧島君を避けている節も見受けられる。このままではまずい。このままでは俺の欲望をかなえることができない。最近は深刻な養分不足で、ただでさえ辛いというのに。
まあ、このようになっている理由に思い当たる節はあるのだが…
これは、事態のマンネリ化が原因と考えられる。ずっといじめにあっている状態では霧島君に対して信頼感を薄めてしまう要因になっているに違いない。
そろそろ、事態を大きく動かして新たな刺激を与える必要があるのだ。仕方ないことなのだ。決して、俺がこの変わらない状況に飽きてきたとか言う理由などではない。ないったらない。
じゃあ、いじめの解決編へと事態を移動させますか。さあ、ここが山場だぞ。がんばれ霧島君。
深夜に不気味な、いや、気持ち悪い笑い声を上げて企む人間が一人。
§
「ふぁああ~」
昨日の夜遅くまで起きていたせいか、全然疲れが取れず、いつにも増してあくびの数が多い。
しかし、人間の習慣とは恐ろしいもので、無意識下でもいつも通り自分の下駄箱から靴を取り出し履き替えていく。
そして教室に向かう途中の曲がり角、誰かにぶつかりそうになり驚く。
「オッと…」
「きゃっ!!!」
天候も悪く、低気圧であることも相まって、驚くことに関してもだるく感じてしまう。ぶつかりそうになった相手がケガを負っていないか心配になってみてみると、
「皐月か…大丈夫か?」
「あぁ…大丈夫だ…」
「…」
「すまない」
そう言って足早に歩き去っていった皐月をその場で見送る。
一か月前に見た皐月とは程遠い少しやつれかけて、生気がないご様子だった。最近めっきり近くで見る機会がなかったがどうやら、こちらも精神的に来ているらしい。
え?マジか…なんで皐月はこんなに参っているんだ?霧島クンは何してるんだよ。ちゃんと守ってやれよなあ…
予想外の出来事に亮は驚き、取り乱してしまう
霧島に任せっきりで全然皐月の事なんか頭になかったが…くそ!友人キャラのなり上がりのためには霧島君の自力がまだ足りてなかったか。
亮が頭に描いていた状況と現状が乖離していることに気付く。ほっとけば主人公の代わりにどんどん解決してくれると思っていたがどうやら間違っていたらしい。
するとまた前から、駆け足で駆け寄ってくる桜が見えた。そして亮の前で足を止めたと思うと、
「やあ、いきなりの質問ですまないが、英梨がどこに行ったか知らないか?」
ちょうどいい。こいつから状況を聞くか。どうせこっちのこともある程度知ってるんだ。
「ああ、知っているぞ」
「ほんとかい!? 英梨はどこに向かった?」
「………」
「どうしたんだい? ボクは早く英梨のとこr」
「焦っているな…」
桜の質問に答えず、会話の主導権を亮が握るために独特なペースで会話を進める。どっちかというと、桜を落ち着ける側面が大きいいが。
「何を言っているんだい? 今ボクは急いでいるんだ。質問に早く答えてくれないかな?」
よほど、焦っているらしい、いつも掴みどころの無い声で話す声色に焦りが浮かんでいる。
「皐月のところに行ってどうするんだ?」
「それは!!…」
「桜、このままいってもおまえは何もできなし、そもそも意味がない」
「…それでも、ほっとく訳にはいかない。」
なるほど、好転しない事態、解消しないいじめ、どんどん傷ついていく友人。いや親友。視野が狭くなっているな。
これでは努力しても空回りに終わってしまうことは目に見えている。視野狭窄というやつだな。最悪、桜までも潰れかねない…か……
「少し話さないか?」
「すまないが、そんな時間h」
「お前が行ったところで変わらない。うぬぼれるなよ、桜。お前ひとりで解決できるとは思わないことだ。」
原作でもその傾向があったが、桜なまじ才能があるため無意識のうちに一人でもの度とに対処する傾向がある。これでは、必ずいつか挫折してしまうことは目に見えている。
そして、その挫折する最初の出来事が原作ではこのいじめ事件であったというだけの話だった。ただそれだけの話。
せっかくだ、もう少し人を頼るようになって欲しいんだがなあ
「は、はい…」
そして桜は、なぜかしどろもどろにうなずいた。
§
「で、今はどんな状況になっているんだ?」
前に桜の闇落ちを防いだ場所である、プールサイド。1限開始のチャイムを聞き流しながら、質問を投げかける。
クソ!またあの科目の先生の授業じゃないか!
「うん、実は……」
そう言って、現状を話し始めてくれた。
まあ、簡潔にまとめるとするならば、一向に収束しない英梨への嫌がらせ。そして、なんと、守っていたはずの霧島君がそんな状況の中、英梨に告白をしたらしい。
元々バスケ部で交流があったと考えれば納得だが…
いや、空気とか、ムードを考えろよ!!!霧島!!!絶対にタイミングが違うだろうに!!!
守ってくれると思った人間もまさかの敵…というわけではないが。随分と扱いずらい立場になってしまった。
「君に霧島君のことについて、どういう人間か問うただろ?」
「ああそうだな…」
「彼は、いじめられている人間に対して追い打ちをかける、最低な自己中心的な人間だったよ。普通だと思っていたが、どうやら間違えていたらしい」
桜的に英梨を追い詰めたのは大きな減点ポイントであったようだ。人を感情的に批判するのは珍しいな
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます