第15話 想いを寄せる人(桜彩視点)

中学校に必ずと言って存在するであろう掃除の時間。当番であった教室のゴミを学校の裏にあるごみ捨て場に捨てた帰り道。のいる教室をのぞいてみる。


いろいろな人が掃除を黙々をやる中、お目当ての人物はすぐに発見することができた。先生に説教されている生徒は嫌でも目立つ。どうやら、昼休みの後の授業をサボったことで担当科目の先生に絞られているらしい。


そんな様子を見て思わず笑みがこぼれてしまう。


いけない、いけない、彼が怒られる状況を作ってしまったボクが嗤っているところが彼に伝われば、誤解を招いてしまいかねない。


そう思い桜は自分の教室に向けて、再び歩き始めた。


彼、小鳥遊 亮が記憶喪失と偽り小鳥遊家に帰って来た時、桜は彼がでないと、自慢の魔素の操作ですぐに気づいた。


最初は記憶喪失になったが周りに気を使っているのかと思っていたが、亮自身の名前を忘れていた亮が桜の名前を知っていたこと、何より、彼の体に流れる魔素の流れがと異なることから別人になったと確信していた。


まあ、別に中身が変わってしまったことはそれほど重要ではないかな。


最初はまず、彼の予想不可能な行動に興味を抱いた。自分が感覚で、こうなるだろうと予想したことが彼には全く当てはまらなかった。桜にとってそれが新鮮で仕方なかった。


そんな日々がずっと続くのではないかと思われた矢先、桜に転機が訪れる。夏休み明けの出来事、亮がいじめにあっているという噂が流れたため興味本位で彼のクラスをのぞいてみた。


そこで、すぐに違和感に気付き、いじめにあっているのは自分の親友であることを知った。


実際、いじめにあっているのは皐月 英梨さつき えりという風にまた噂は広がり始めた。


皐月 英梨さつき えり、桜の友達で、根がとてもやさしい女の子。なにより裏表がない性格で、桜が唯一気を許すことができた初めての友達。


英梨がいじめにあっているという噂が流れてから、その友達である桜まで影響が及んだ。英梨がいじめられていると知っても変わらず関係を持っている桜は、周りから浮くのは当たり前だった。


親友である英梨から距離を置くなんてはもってのほかだね……

親友が大変な時期に寄り添わずして何が親友か……

でも…英梨とはクラスが離れているし、クラス内では悪意を容赦なく向けれられるし、人一倍感情に敏感であったボクにとっては苦痛だったかなあ。


そう振り返ってみる。初めて向けられる集団からの敵意、殺意、悪意、一人で立ち向かうには無力で、恐怖以外の何物でもなかった。怖かった。


そんな中、ふと視界に入ったのが、中身が変わってしまった亮だった。最後の期待を胸に、しかしどこか諦めた感じで話しかけることにした。


今まで、ずっと話し掛けても無視や、悪ければ罵倒されてきた桜は精神がすり減っていた。


「やあ、こんな晴れた日の昼休みに居眠りかい?」

「んわっっ!!?…って桜またお前か…心臓に悪い…」


どうやら寝ていたらしい、眠たげに目を擦りながら返事をする。

返事が返ってくるだけでもうれしかった。


それからずっとボクの心のよりどころになってたというのに君は気づいた様子はないけどね


「あ、また揶揄いに来たのか? お前も暇だなあ?」


桜も皆ににハブられていることに気付いていないのか、そんな呑気なことを聞いてくる。


…ボクが、いじめにあっていると知ったら彼はそんな反応をするのかな…助けてくれるかな…


いつも通り彼と話していた時フッとそんなことが頭によぎった。そんな疑問がよぎってしまえば、聞いてみたくなってしょうがない。


この関係が壊れてしまう可能性もあるのに、彼が…君が…ボクが依存できそうか、ボクの心のよりどころになるか知りたくて、聞いてしまった。


「また来たのかなんてつれないこと言わないでくれよ。クラスにいても居心地が悪くてね…」

「あーね」

「…………」

「ん?どうした??」


黙ってしまったことを不思議に思ったのだろうか?彼が不思議そうにこちらを見てくる。


「いや~、クラスの人を揶揄いすぎてね。ヤキをいれらてしまったのさ」


しかしいじめのことを何も知らない亮に拒絶されるのが怖くてぼんやりとしたことを伝えることにとどまってしまった。


「あは!ざまあじゃないの。桜の揶揄いは、いつか痛い目を見ると思ってたからな」

「ひどいなあ、そんなことを思っていたのかい?」

「うん」


ひどい…

しかし…だめ…か、こんな婉曲な感じでは伝わらないか…


「じゃあ、君はボクがいじめにあっていたら、自業自得だと思うのかい?」

「?あ~……そうなんじゃない?」

「そっか…」

「でも、お前は《《いいやつ》》だからな、ある程度みんなに絞られて、反省したら俺のところに来いよ。慰めてやる」

「おや?一緒にいじめられるとでもいうのかい?」

「慰めるって言ったよな?! いや、お前のことだから寂しがると思ってね」

「…………」

「それに、お前はなぜかそんなお前が敵意にさらされ続けるのは辛いだろうし。 加えて、そんなものに46時中女の子を晒させ続けるなんてこくすぎるし、桜は割と繊細だからな。擦り切れる前に来いよ? いくら桜が神経が図太いといえ女の子なんだから。」

「女の子に太いってワードはご法度なんだがね…そっか」


体が急激に熱くなっていくことが自分でもわかる。それに、気を緩めれば涙をすぐにこぼしてしまいそうだ。


ボクを見てくれてる、いくら仮面を分厚くしても傷つくものは傷つく…そんな当たり前のことを、彼は理解してくれてるらしい。


「絶対にいじめはなくなるよ。絶対。だからそれまでは俺を揶揄って遊んでくれ」

「対処に関して随分と考えなしじゃないか…もっと心に響くことを言って安心させてくれたまえよ…」


ウソだ、思ってもいないことが口から出る。一緒にいてくれることがうれしくて、しっかり自分のことを見ていてくれたことが幸せで……


「まあ、君の気持はわかった。いざというときは頼らせてもらうよ」


そうだね、いつまでも落ちこんでいられない。

そうだ、英梨のいじめについて少し調べてみようかな?


心のよりどころを見つけた桜は、少し余裕ができた。

そして前向きな気持ちになった桜は、親友の助けとなるべく動き始めようとする。


そして、すぐに、彼、小鳥遊 亮たかなし りょうがいじめの主犯である可能性が浮上してきたのは。


ウソだ、そんなことはあるはずがない。しかし事実、梨絵の隠されたもののほとんどが彼の魔素がついている。


なんで彼が……


裏切られたことに、目の前が真っ暗になったような間隔に陥る。


もう誰も信じられない、軽度の人間不信になりかけていた。


しかし、それが誤りであることは、彼を付け回していればすぐに判明した。彼は、隠されたり、燃やされたりしていたものを修復していた。


彼に信じてくれといった手前、自分が彼を信じていないなんてなんて滑稽なんだろうか。


自分に対して嫌気がさす。まあそんな風に腐ってたところをまた彼に救われたんだけどね…


あんなにまあ、必死になって、歯がかゆくなるような言葉を吐かれたら、好きにならない方がおかしいんだが…


最近はいろいろあって疲れてたから、寄り添ってくれた彼をコロッと好きになってしまったのかもしてれない。

自分でもチョロすぎると苦笑する。

まあとにかく、

彼をどんな手を使ってでも手に入れようかな…まあ、直近の心配としては、英梨だけどまだ大丈夫だろう。もしそうなったとしても、譲る気なんて全くないが…


だから、ボクは亮ではなく、君と呼ぶんだよ?成り代わってしまった君のことが好きだから。


「ボクを惚れさせた責任はちゃんと取ってもらうからね………」


そう言って、妖しく嗤うのであった。

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