第17話 黒歴史と書いて急所と読む

告白ね……


に置いてはほぼ無条件で嬉しいし、名誉なことだと思う。


そう、普通の場合に限ってはね…


しかし、一つ状況が拗れるだけで大きな歪みを生み出すことができる。


例えばそう、友達の好きな人から告白なんてどうだろうか?


それだけで友情を崩壊させる大きな力を持つ。


また、今回で言うならば、いじめで縋っている人からの告白。振ればその人も報復でいじめに加担するかもしれない。


そんな風に思えば、精神をすり減らすには十分だろう。


「それで?桜は何をしたんだ?」

「だから、ボクは霧島君のそんな卑怯な性格を!!」

「責めたのか?」

「!!!…ああ、そうさ…」


桜は忌々しそうに体を震わせている。桜の怒りも理解できるが…

そりゃ皐月があまりにも不憫だ…

親友と助けてくれた恩人との板挟みになっているのだから。


皐月は良くも悪くも純粋な心の持ち主だからな〜恩を感じている霧島を完全には切り捨てれないんだろう。


「今の状況では霧島の助けが必要なのは理解しているな?」

「しているさ、しているけれども!!!」


桜は、どうやら混乱して全く落ち着きがなく、子供のように癇癪を起こしている。上手くいかない事態にムキになっているようだ。


自分一人で対処してきて、人を頼る経験が無いから一人で余計に空回りをして負のループにはまっていく………。そして、どんどん焦りが募る


それではダメだ、原作と同じ結果になりかねない。

今回、俺が自主的に助けてもこの先同じことが起こり得るだろう。


そのとき、助けを求めるという選択肢を見逃せば、必然的に桜が潰れてしまう。

人間が一人で一人でできることなんて限られているのだ。


とりあえず一回こいつを落ち着かせないと、


思いっきり桜の横を手で打ち付ける。結構強く叩いたためか結構大きい音が空間を支配する。


いわゆる壁ドンというやつだ。


「ふぁゃああ!!」


珍しく桜が素っ頓狂な声を上げる。いつも余裕綽々顔している奴が驚いているのは、結構面白い。

まあいきなり壁ドンをされたら誰でも驚くわな。


それからまた一歩先に進んで密着し、更に壁ドンをして驚いている桜の額に自分の額をくっつけそうなほど超至近距離で見つめ合う。


「ひゃあ、あうあ」

「彩」

「ひゃい!、はい!はい………」

「落ち着け」

「はぃ………」


恥ずかしいことをしている自覚はある。こんなの黒歴史決定なのは百も承知だ。


でも、それと引き換えにインパクトは十分に桜には与えることが出来ただろう。でもまだ足りない、さらに、インパクトを与える。


そっと、桜の頬に優しく手を当てる。

桜はビクッと体を震わせるが、お構いなしに続ける。


「彩はさ、十分頑張っていると思う。そこまで、皐月を思うのも、親友を失ってしまうことを怖く感じてしまうのも分かる。」


桜はコクコクと小さく頷く。


「でも彩は今肩に力入りすぎ。もっと力を抜いて。一人で出来ることには限界があるんだ。一人だと辛いんでしょ?怖いんでしょ?じゃあ俺を頼れ、少なくとも一緒に悩むことは出来る、一人で抱え込むな」


うわあああああああああああああ!!!!死にたい!死にたい!

死ねよ、俺!!


桜はポケ〜とした表情でこちらを見てくる。


よ、よし………成功かな。 俺の命を賭けた意味もあるというものだ。


何も意味無くこんな近距離で話したわけじゃない。


プライベートスペースにいきなり入り込まれたら、誰でも一回は思考が停止する。そこに、今の現状や状態を刷り込ませることで「なんかそんな感じがする」と相手に思わせる。(洗脳)


まあ、簡単に言えば思考に上書きをしてるだけの話だ。(洗脳という)


怒りが3分も持たないなんて言われているように、人間は忘れやすい生き物だ。


だから、一回大きな衝撃を与え、リセットさせ以前の思考回路を感情を忘れさせる。そして新しく、「人を頼る」という回路を新たに敷設しただけのこと。(洗脳です)


因みに今回は、飴と鞭を併用するなど、アレンジをした。クソみたいなマッチポンプだな。(だから洗…以下略)


「あ………」


ゆっくりと手を下げて、桜から離れる。


「おーーい、大丈夫か? 落ち着いた?」

「……」


まだ、胡乱とした目でこちらを見てくる桜。これで、これから人を頼る選択肢をとってもらえればいいのだが。


これ催眠しちゃった系?もしかしてまずい感じ?


「お、おい桜!?戻ってこーーーい」


そう言って体を揺らす。するとまた、体をビクッと震わせた。


「あ!?ああ!!だ、大丈夫だとも!しゅ、すまないね!少しボーとしてたよ。よ、用事が無いなら先帰らせてもらうよ!」

「お、おう。いってら」

「ま、またね?今日は助かった!!」


そう言って足早に去っていく桜を見送った。


………


………………………………


………………………………………………………


はい。


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