第27話 分かった事

「くそが、何だよコレは!なんでこんな事に・・・」


 喚き散らしながら死んだ男を観察していると拠点の前に現れた。そこを同じ様に100体のウルフで攻撃する、そしてまた死んで復活したら攻撃する。3回繰り返した時点でこの戦法が有効なのは分かったので次の実験へと移る。


「なんだよちくしょう、誰だ、出てこいよ!卑怯だぞ!」


 まずは復活したプレイヤーを抑えこんで拠点へと攻撃を仕掛ける。『耐久値』というのが表示されてその数字が攻撃を受ける度にどんどん減っている。


「やめろ、やめてくれ!そこを壊されたら俺は・・・!」


 以前『ショップ』を見た時に拠点の強化という項目があったので気になっていたのだが、耐久値は拠点のグレードに応じて変化し、GPを注ぎ込んで強化する事が出来るようだった。

 実際に試すまではしていなかったので今回は折角の機会という事と、前回占拠した拠点から距離も近く不要と判断して耐久値と破壊を試して見る事にした。


「くそ、こんなはずじゃなかったのに・・・」


 プレイヤー自身が攻撃しなくても配下のモンスター達の攻撃だけで順調に耐久値を削っている。最初にオートでの侵攻は出来ないと言われたがこの状態はほとんどオートに近い気がするな、俺自身は安全な後方に居て前線はモンスター達に任せる。時間は多少掛かるが安全で確実に侵攻クエストをクリアする事が出来てしまう。


「今回は拠点の破壊でクリアしてみよう。流石にまだ殺しに戸惑いがあるし、プレイヤーは追放の方向で頼む」


 ジョージを通して現場の状況が見えていただけに心に感じるモノはあったが割り切ってこの状況を終わらせる。


 プレイヤーとの対話も考えたが何故か本能が拒否したのでジョージに念話してそのまま拠点破壊でのクリアをお願いした。それからほどなくして拠点の破壊に成功しクエストが終了した。


『条件の達成を確認』

『当該エリアが支配領地に統合されます』

『10,000GPを獲得しました』

『拠点を手に入れる事が出来ませんでした、このエリアは一般エリアとなります』

『対戦相手のプレイヤーが生存しています、以下の5つの中から対応を選択して下さい、それにより報酬が異なります』


『処刑』『奴隷』『追放』『眷属化』『同盟』


「追放で頼む」


『追放:相手の残りGP全てが手に入ります。本当によろしいですか?』


「あぁ」


『以上で侵攻クエストが完了となります。おめでとうございます』


 ふぅ、終わってみるとあっけなかったが今回は色々と勉強になる事が多かった。逆の立場で考えた時に注意しなければならないのはやはり相手の物量、単体は勿論だが軍隊としての戦力も計算して防衛にはより力を入れるべきだろう。攻撃が最大の防御とは言っても人生なにが起こるか分からない、死んだら終わりのデスゲームで油断なんてあってはいけない。


 ウルフ軍の物量だけで完結出来たのは本当に大きいと思う。当然俺が出て血霧で一気にというのも考えたが相手が単体のプレイヤーともなれば効果が薄いし、自分の手で相手がゲームオーバーになるまで殺し続けるのも心がしんどい。


 やはり今回のように物量で攻めて拠点を破壊してクリアするのが無難だろう。相手のプレイヤーは基本追放が後腐れもないし、GPだけでも手に入るなら問題なしだ。


 あとは死んだら拠点の前に現れるというのも一つ勉強になったな、恐らく侵攻クエスト中は拠点での立て籠もりを防ぐ為にああなっているのだろう。拠点の中と外の時間が違い過ぎるし、拠点の中であればGP次第で延々と籠城が出来てしまうからな。勿論外から攻撃して耐久値を減らせばクリア自体は出来るので無理ゲーとまでは言わないが、やはりあの形がこちらとしても望ましいな。


「自分の拠点も鍛えた方がいいな」


 領地の発展と文明度を上げるだけじゃなく、自分の拠点の強化も今後は必須だろう。ショップでしか買えないというのは厳しいが俺が死ぬ可能性は低いので警戒するのはやはり拠点破壊になる。物量や高火力に対抗出来るだけの拠点を準備する必要がある。


「ふぅ、なんだか疲れたな・・・」


 ゲームオーバーになってないとは言えプレイヤーを俺の指示で何回も殺した事に変わりはないし今後追放したプレイヤーが生き残れる可能性は低い、そう考えると精神的に疲れてしまった。


「今日はもう部屋に戻って風呂入って寝るか・・・」

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