第24話 鉱山を目指して

「そういえばここから5つくらい上の方にエリアを伸ばせば鉱山があったっけ」


 確か金と銀が出ていた鉱山があったはずなのでそこは早めに抑えて開発を始めたいと思っていたので折角だから一気に行ってしまおう。もう1つのプレイヤーがいるっぽいエリアは攻め込まれない限り一旦放置でいいや。


 どこかの段階で鉄道っぽいのと車っぽいのは開発する予定なので道は長くまっすぐに伸ばしている。基本的に街作りというか建物の配置や道の開発は部屋のパソコンでやった方が見やすいし効率がいいのでそっちでやっている。


 あれも今思えば経過時間が違うから一瞬で出来るように感じただけで微妙に完成までの必要時間が表示されてたんだよな。そりゃ勿論現実世界みたいに道作るだけで1年や2年とかは掛からないし、何なら現実でも1日で10km位の道が作れちゃってる計算になるんだけどね。その辺りは神様が都合よく調整してくれてるっぽいからありがたく享受しておこう。


 そもそも外にいる時は自分の身体を動かしてコマンドを実行しないといけないから街作りやら作成やらって結構めんどくさいって事に気が付いてしまったんだよな。多分俺が家を置くって操作をすると実際にエルフやドワーフ達が何らかの作業をしてるんだろう、極力楽が出来るように立ち回れるようにこれから色々やってみないとな。


「ん-、拠点エリアは防衛の事も考えて不死軍団を配置しておいた方がいいかな。万が一攻め込まれた時の損害を考えるとGPが高い種族は置いとかれん」


 ダークエルフやダークドワーフ達を住まわせるっていうのも一つの手段にはなるんだけど、もう1つ街を作るくらいGPをつぎ込むのは悩むんだよな。


「どうするか、鉱山の付近にダークドワーフを配置するのは確定だから、ここにダークエルフを配置すると距離的なバランスが取れていい感じなんだけどGPが減りすぎるんだよな・・・」


 鉱山にはドワーフのイメージなので現実の陶芸の街的なイメージもあるだけにダークドワーフは配置したいし・・・。


「うん、悩んだら辞めよう。無難に不死軍団の駐屯地にしよう。立地的にはほぼ長崎の真ん中あたりだし便利なんだけど街にするのは余裕が出来てからで!」


 決めたら即行動。一旦放置して上の方のエリアに侵攻を掛けよう。


『ここから先は領主の存在しない、脅威度がかなり低いエリアです』

『このエリアに侵攻しますか?』


「はい」


『エリアに設定された占領クエストが発行されます』

『時間無制限:エリア内のモンスターを300体討伐せよ』


 これは今までと同じだな。もしかしたらこれがデフォルトなのかもしれん。


「この辺りで一回自分のスキルも確認しておいた方がいいな。血霧で範囲殲滅出来そうな気がするから一回やってみるか」


 実は日々の領地運営のお陰か位階が地味に上がり続けているのだ。種族的な関係は基本的には血に関係するスキルか闇に関係するスキルが増えていく。逆に光やら水やらは覚えられていない。


 テキストを読む限りは血剣が中々にエグイ性能をしているので近接戦闘も行けるのだが如何せん身体を動かすのは苦手なのでこれは後回し。間接的にと言っていいか分からないが楽して敵を倒せるならそれに越した事はない。


「なんだかんだちゃんと戦うのって初めてか・・・」


 チュートリアルや準備期間で戦闘を行ってはいたがあれはあくまでもパソコンの画面上での戦闘であって自分の身体で戦うのはこれが初めてになる。最初の侵攻もその後の侵攻もずっと部隊を動かしてのクリアだったからなぁ。


 考えると体が震えるがこれに慣れないといけない、そうしなければ何かあった時に死んでしまう。種族特性上かなり死ににくい状態である事は自覚しているけどそれでも死ぬのは怖い。


「そういえば、モンスター勢力でも死んだらGPで生き返るんだよな・・・?」


『はい、全てのプレイヤーは100GPを支払う事で拠点で復活致します。ただし痛みや苦しみは現実の物となりますので安易な死を選ばぬようお気をつけ下さい』


 俺のGPから言ったらかなりの回数を生き返る事が出来るんだが万が一、ゲームみたいに出待ちワンパンとか連打されたらどうしようという恐怖が湧いてくる。死ぬ時の痛みをGPが無くなる迄何百回も繰り返されたら正気で居られるのだろうか。

 いや、逆に相手のプレイヤーを本当の意味でゲームオーバーにするには俺がそれをやる必要が出てくるかもしれない、そうなった時に何百回も相手を殺し続ける事が果たして出来るだろうか。


「・・・その時はその時だな」


 今いくら考えてもそれはどうにもならない。その時が来たら未来の俺に頑張ってもらおう。自分で殺す事が出来てなければモンスター達に囲ませて殺し続けてもいいんだ、深く考える必要はない。


「・・・血霧」


 スキルを発動すると自分自身が広がる感覚、現実で体験した事のない感覚で説明は難しいが胃の中に無数の蟻が入って動き回っている感覚だろうか?正直かなりの違和感がある。


 意識してその内の1体を選ぶ。どうやらこいつはスライムのようだ、周囲に仲間も居ない様なのでこいつで試してみる。


 マップとログに目を向けると無数の敵が表示されている。感覚と視覚どちらにも対応しているのは助かる。


「・・・猛毒血」


 猛毒血は1秒で体力を100削る事が出来る。初期の毒血は1秒で1しか削れないので倒しきれない可能性を考えて猛毒血の方にしてみた。


「瞬殺か」


 なんてことはない、スキルを意識した瞬間毒々しい紫に染まり、そのまま即死した。


「次はまとめて・・・」


 次はまとまって行動していたゴブリン3体を意識して猛毒血を発動する。段々と血霧の状態に慣れて来たので自分が発動して広がったエリアの中の事がまるで空から見下ろしているかのように手に取るように理解出来ている。


「いけるな」


 ゴブリンも紫に染まって即死した。チュートリアルの時とは違い部屋の外で自分が倒した敵に関しては死体が残るようで若干の不便さを感じるが仕方ない。それに毒で倒してしまっては食糧として解体する事は出来ないだろう、恐らくゾンビに変化させる事は出来ると思うのでそのまま放置しておこう。占領して不死軍団を配置すれば自然と変化して配下に加わってくれる事だろう。


「今度は1kmの範囲を包み込むように・・・いけた」


 難しい事は無く、大体この辺の1kmと存在する対象をイメージしてスキルを発動するだけで簡単に殺す事が出来る。完全に作業だ。知覚出来る範囲をどんどん広げても限界を感じない、そのまま10kmのエリア全てを包み込む事が出来た。多分神AIさんが補助してくれてるんだろうけど、ここまで来ると完全に人を辞めていると思う。


「さて、それじゃあ一気にドン・・・終了」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る