第23話 急展開

 あくる日、隣接エリアに侵攻すべきか部屋から出て考えていると急に視界に映るログが赤く点滅し、見た事がない警報を鳴らしてきた。


『敵勢力から侵攻を受けています』

『敵プレイヤーの脅威度:激低』

『防衛条件:敵プレイヤーの排除』

『勝利条件:敵プレイヤーの撃退。もしくは敵勢力の拠点破壊』

『防衛報酬:敵プレイヤーのGP及び装備品』

『勝利報酬:敵プレイヤーの所有領地全て』


「マジか、攻めて来たのか・・・!?」


 可能性も0ではないと考えていたがまさかの事態に頭を殴られたような衝撃を受けた。


「脅威度っていのを教えてくれ!」


『脅威度とは貴方が負ける可能性を示します。今回の場合相手の戦力が圧倒的に低く、あなたが負ける可能性は限りなく低いでしょう』


「お、そうなのか。じゃあ安心していいのか?」


『敵プレイヤーを撃破しました。防衛報酬をお受け取り下さい』

『敵プレイヤーのゲームオーバーを確認、勝利報酬をお受け取り下さい』


「・・・へ?」


 攻めて来たと思ったら速攻で終わった。


『リザルトの確認を行いますか?』


「あぁ・・・」


『拠点へと帰還して下さい』


 システムに従って部屋に戻り、パソコンの前に座る。そこに映し出されたのはいかにもパリピっぽい男。汚物は消毒だーとかいいながらうちのゾンビに襲い掛かっている場面だった。


 勿論昨日のうちにエリアの境界には防衛部隊を設置しているので敵を確認した部隊から他の部隊へ念話が飛び、近くにいたウルフ達が一斉に現地へと向かう。

 ゾンビは残念ながら自力では及ばない為どんどん倒されてしまう。しかし現地には100匹を超えるウルフが向かっていて、数の力で侵入者を追いつめている。最終的には逃げ出した侵入者を追いかけたウルフが後ろからあっけなく咬み殺してしまった所で映像が終了した。


 後は手に入れた装備品の詳細、今回のプレイヤーはGPを殆ど持っていなかったのでこの剣に殆どつぎ込んでいたのだろう。この剣ならショップで売る事も出来るが折角の敵勢力の装備品なのでうちの部隊に装備させても面白いかもしれない。取り合えず今すぐ処分する程GPには困っていないのでそのままインベントリに保管しておこう。


 所有するエリアはやはり隣接していたエリアだった。これで2つのうちの1つは解決した事になるので不安要素が減って良かった。あの位のレべルの敵であれば警戒する必要すらないかもしれない。それだけ我が軍の数が圧倒的だった。


「取り合えずエリアの確認だけは向かった方がいいな、今後の都市計画にも関わるし」


 現実でも30km離れた場所に行くとなると結構大変だが今は空が飛べるので移動はあっという間に出来てしまう。本当にこの種族を選んでおいて良かったと思う。


 エリアの真ん中付近に行くと1つの教会っぽい建物が目に入って来た。この時代の設定ではまずありえない建築物なのでここがあいつの拠点で間違いないだろう。

 

 早速神AIさんに確認した所、ここが人勢力用の拠点で間違いない事が分かった。人勢力はこの拠点で死んでもGPさえあれば復活出来るという事。侵攻時はこの拠点を破壊するとプレイヤーは復活出来なくなり、生死に関わらず敗北扱いとなってしまうそうだ。


 通常同じレベル同士の戦争になると戦力的に拮抗する為、侵攻を受けるモンスター勢力側の場合はプレイヤーの排除に動く事が殆どで相手の領地に侵入して拠点を落とせるような状況はほぼ無いらしい。さっきの状況で言うと防衛での勝利を目指す感じか。


 逆に人勢力側の勝利条件は討伐数であったり、拠点の破壊となっていて撤退しても引き分け扱いでデメリットがない為、無理そうなら逃げてしまうそうだ。なので先ほどのように相手がアホでない限りエリアの占領には拠点の破壊が一番確実らしい。

 ちなみに撃退とはゲームオーバーの他にプレイヤーの隷属化や支配、プレイヤーによる領地の放棄が含まれている事も判明した。領地を放棄した場合生き返る事が出来なくなるが死ななければゲームオーバーにならない為、最悪ゲーム終了まで生き残る事も出来るかもしれないという事だった。


「これは壊した方がいいの?」


『破壊も可能ですが、転移拠点として確保する事をお勧めします』


 また分からん要素が出て来たぞ。それはなんぞ。


『転移とは人勢力側のプレイヤーが同盟を組む事によって解放される機能でお互いの拠点を行き来する事が出来る人勢力側用の移動手段です』


『今回の様にプレイヤーを撃退した場合や無傷で拠点を占拠した場合には取得したプレイヤーにもその機能が解放されます』


「なるほど、便利だから残しておいた方がいいって事ね」


 俺の拠点からここに転移する事は出来ないそうだがここまでは飛んで来ればいいので今後の為に確保しておこう。


「いやーしかし、良かったな。一時はどうなる事かと焦ったぜ」


 取り合えず緊急事態があっけなく解決してほっとした。

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