第12話 閑話:その時世界で何が起きたのか

 インターネットの掲示板では突如現れた新作ゲームの話題で持ち切りだった。曰く、これは詐欺ゲーだ、釣りだ、そんなゲームどこにも見つからないと。いや、これは神ゲーに違いないと言い出すものも現れて大騒ぎ。ネット特有のスラングが飛び交い多くの注目を集めたように思われていた。


 実際にはこのゲームを見つける事が出来たものは日本の人口から比べればそう多くない。神によるある一定の選別がされていたからだ。


 神が一番重要視したのは精神力だった。年齢は関係なく、耐えられるであろう精神力を備えた人間、更にゲームに少なからず興味を持っている人間が選ばれている。その為ネットの世界の住人でもゲームをプレイしない人間はゲームに辿り着く事が出来ず、その為に詐欺だ釣りだという発言が多かったのだ。


 実際0時になってゲームが始まると掲示板は更に加速して行った。実際にプレイ出来た人間は情報を上げ続け、我先にと攻略情報をまとめはじめる。そのスピードはすさまじく、殆どの種族の情報が集まり、考察はどんどん進んでいく。


 やはり大半の人は人間を選んでいるようだ。魔物を選んでいる人間は全体の3割程度だろうか?実はここにも神の力が働いており、その人がもつ潜在的な深層心理までが見透かされ、さりげなく種族やジョブが誘導されていたのだ。

 

 この時1人の神は焦っていた、思ったよりも自分の陣営の人数が少なく、不利な状況が予想されたからだ。焦った神は魔物陣営に対して、人間側の神よりも少しだけ多くの力を注いだ。彼のチートはその結果とも言えるが、神にとって彼が特別な訳ではなく誰でもよかった。たまたま彼にそれが当たってしまったのだ。それによって彼の自覚出来ない心の奥深くに魔物陣営に対する愛着と人間側に対する残虐性が宿ってしまった。


 そして少なくない人間が神の遊戯によって地球上から消えた。


 準備期間の最終確認と同時にプレイしていた多くの人間がゲームの中に囚われ、残された人々の記憶からも消えてしまった。あたかも最初から存在しなかったかのように痕跡が消え、家族であっても思い出す事は出来ない。そもそもそんなゲームがあった事すら忘れ去られてしまう。


 自宅のパソコンでプレイしていた彼はまだ幸せだったのかもしれない、例えば早朝の通勤電車の中でスマホでプレイしていた者は悲惨だろう、空っぽの車両と共にゲームの世界に取り込まれてしまった。中にはカプセルホテルの一室と共にという者もいた。


 彼が心配していた友人がどうなったのか、それは誰にも分からない。誰もそれを覚えていないのだから。

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