第7話 まだ気が付いていない

「どぅわ!ヤバっ!寝てた!!」


 いつも会社に行く時間が近くなって目が覚めた。時計を見るとすでに朝の8時を回っている。当然ゲームの準備期間も終わっている。

 どうやら朝方まで位階上げをしたり、調べ物をしている間に眠ってしまったみたいだ。眠気覚ましのつもりで飲んだ缶チューハイが良くなかったのかもしれない。


「あー準備期間も終わっちゃってるな。取り合えず島で位階6までは上げたからいいか」

 

 位階が同じ相手には経験値が100%貰えるが、位階が1つ下だと50%、2つ下だと20%、3つ離れると貰えなくなる仕組みだった。


「そろそろ陸地の方に拠点を変更しなきゃな」


 今までやっていたゲームに似ている部分もあって2~3時間もあればシステムにも慣れてサクサク進める事が出来た。


「やっぱり夜間しか戦えないのは厳しいよな、昼間は格下なら狩れるけど効率悪いし」


 取り合えず目が覚めたのでゲームの事を考えるのは止めて顔を洗ってメシでも食おうと椅子から立ち上がる。


「ん?」


 なんだかいつもより目線が20cmくらい高い気がする。まだ寝ぼけているのだろうか。取り合えず気にせずに買っておいた菓子パンを食いながら冷たいミルクコーヒーを冷蔵庫から取り出す。冷蔵庫が小さい気がする。だけど中は見慣れた自分の家だ。


「今更背伸びたか?椅子で寝たのが良くなかったかな」


 今日は休みなので取り合えずおもいっきりゲームをしようと思って買い出しも済ませてあるし、着替えるのも面倒なので後回し、風呂も夜でいいや。昼はカップ麺で十分だな。と、考えながらパソコンの前に戻る。


 独り身という事もあってパソコン周りにはある程度金を使っているのでゲーム環境は快適なのだが、快適過ぎて寝落ちする事は偶に良くあった。それでも最近は歳のせいか深夜まで起きているのが辛くなったので昔ほどではなかったのだが。新しいゲームで浮かれすぎていたのかもしれない。


「あれ、2画面ともゲームにしてたっけ?それにログが一杯流れてるんだが、赤いアラートも出てるし、なんだこれ」


 確か片方の画面は攻略掲示板を開いてたと思うんだが、取り合えず今はログの確認とアラートの確認が先だ。


「えーと、赤いアラートは『隣接エリアより敵対生物の侵入』ってなんだ?」


『領地内の資源を奪う生物が隣接エリアより侵入しています、防衛部隊を配備し、直ちに駆除する事をお勧めします』


 アラートをクリックするとヘルプテキストっぽいのが表示された。どうやら準備期間が終わって他のエリアが解放されてフィールド全体が繋がったようだ。


「やば、次から次にアラートが!どうすりゃいいんだ・・・」


 全てのログを確認する前にどんどんと赤いアラートが出てきてログを埋めていく。一番多いのは敵対生物の侵入、次がそれに対する防衛の要請、要請に対する住民の不足、更に武器の不足が一気に4つ重なって出てくる。しかも時間と共に隣接エリア付近で散発的に発生している。


『隣接エリアより敵対生物の侵入』

『防衛部隊が設定されていません、防衛部隊を配備してください』

『防衛部隊を設置する為には基地が必要です、基地を設定してください』

『住民が武器を装備していない為防衛部隊に配備できません』

『防衛部隊に配備する住民が足りません』

『住民を増やすために家屋を設置してください』

『略奪:木材資源-1』

『略奪:畜産資源-1』

   ・

   ・

   ・

「いや、奪われる量少なっ!焦る必要ないやん」


 アラートが多すぎて焦ったがよく見ると全体の量に対して微々たる量しか奪われていない。畜産資源っていうのは動物だと思うが、肉はまあ人間にとっては痛いだろうがゾンビには食料が不要なのでそこまで気にする必要がない。木材資源なんて総量が10万を超えているので1づつ減ってもなんてことはない。


「ただ、黙って奪われるのはムカつくよな、指示に従って部隊を配置しておくか」


 まずは『木剣』を100本程作る、1つ1秒なので面倒なだけで時間的にはすぐに準備出来る。次は『竪穴式住居』を建設していく。これは位階を上げて知力が上がった事によって解放された洞窟の次の家屋で1つにつき住民を2名配置出来る。ちなみに必要GPは2だ。


 家屋にゾンビを2体配置し、木剣を持たせる。それを3回繰り返して6体で1チームが完成。現在設置出来る基地は一種類で『焚火』のみ。『焚火』に5体配置すると『基地』をレベルアップする事が出来て『バリケード』を設置出来るようになる。ただ、このバリケードは知力が低いからか木材を×の字に埋めたようなめちゃくちゃ弱そうな物なので現時点ではスルーしておく。どうやら基地毎に配置した人数で防衛能力が変わって行くようなので将来的には無敵の要塞とかを作ってみたい。


 この一連の作業を黙々とこなしていく。1か所で20GP、それを隣接エリアとの境界付近に5か所設置して防衛部隊の配備は完了した。後は武器を持ったゾンビが夜間だけ防衛してくれる。そう、昼間は奪われ放題なのだ。


「くそ、ゾンビの特性忘れてた・・・昼間活動出来るタイプを大至急手に入れる必要があるぞ」


『住民はショップでの購入、隣接エリアからの移住、隣接エリアの支配、敵対生物の隷属等によって増やす事が出来ます』


「お、準備期間は使えなかったがショップが使えるようになったのか?」

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