エピローグ
まだ幼い頃、ユラが見出したのは確かに原石だった。人々を魅了し、統括する力を持った、しかしまだ輝きを持たない宝石の前の石。
ユラは原石だった——普通の王族だったカシルをその手で磨いた。交わるはずのない道を、己の知恵で交差させ、カシルの人生に自分という登場人物を置いた。
小さい頃、カシルは絶対的な付き人と共に育った。美しい瞳を持つ彼は、カシルを悲しみから救い出してくれた。
もしかしたら、ユラと出会ったことも、カシルの持っていた力だったのかもしれない。
閉じていた国は、時の流れと共に変わっていくこととなる。他国の民は、いるかも分からない魔族など恐れなくなる。そんな中で、まだ若き王と従者は成長していくのだ。
恐ろしいほどの強さと、知恵を携えて。
やがてこの国には、二人によって大きな変化の波がもたらされる。その波はアラクトだけでなく、周囲の国までも及ぶ大きな波だ。
カシルがその先で出会う人々も、今はまだ、何も知らずに己の道を歩いている。
例えば、同じ大陸の国。言霊を祀る神殿の、白髪金眼の双子。
例えば、海を越えた先。衣で有名な暖かな国だ。そこで小さい頃の秘密を抱える、平民として生きる王族の少年。
紆余曲折を経て、彼らもやがて、その波に飲み込まれるのだ。
城下の町に、歓声が響く。
中央の賑わいの先頭にいる者はこう言っていた。
「新王!ルエナ・カシル・ハシェン様のお通りだ!」
箱庭の王太子 こたこゆ @KoTaKoYu
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