第6話・ファンクラブ?

 ──翌日。

 私は遅めの朝食を食べていた。そうすると何やら外が賑やかだ。

「朝から何かしら?」

 窓がある方にゆっくり向かい、外を見る。


 え?

 嘘でしょ?


 部屋の時計に視線をやると時間は8時半。店の開店時間は10時。そのことは配布したチラシにも大きく書いたし、店の看板にも10時開店と大きく書いてある。


 何せスローライフな生活。働き過ぎはよくないわ! そう思い、開店時間は10時からで13時までの営業。そして月から木までも4日間とした。


 それなのに店の前には開店を待つお客様の列が既に出来ている。

「これは困ったわねぇ。開店時間を早める予定はないし……でもこのままじゃご近所様に迷惑になるわよねぇ……誰か相談できる人でもいれば……」

 そう思って朝食を終え、シャワーを浴び、身支度を整え、開店準備の為一階に降りると?

 静かになった? 私はこっそり、窓から外の様子を伺ってみた。


「あれ? 先程まで並んでいた人達は? 帰っちゃったのかしら? まぁでも仕方ないわよね。ご近所様に迷惑になるし……」


 そう思いながら、今日も魔法を駆使して、店内の掃除をしたり、サンドイッチの下ごしらえをしたりと、サンドイッチ用のパンは、昨日閉店後に、風魔法のエアーカッターを使用し大量にストックして、アイテムボックスに保管した。野菜や、フルーツも同様に全て挟みやすい大きさにカットして保管しておいたので、開店前にすることと言えば、それらを一斉に並べ、空間魔法を使い移動さしパンに挟むだけだしね。


「それにしても魔法って便利よね? これだけのサンドイッチが僅か5分程で出来るんだもん」


 そう言って私は調理台の上にてんこ盛りになったサンドイッチの山を見ながら苦笑いした。

 それらをボックスに詰め、店内の台に並べる。テイクアウト用のサンドイッチは予め作って台に並べて置くことにしたのだ。


 流石に店内で食べるお客様の分ぐらいは、来店してから作るようにしている。

 と言ってもこっそり魔法で作ってるんだけどね……



 そろそろ開店の時間かしら? そう思い私は再びカーテンをほんの少しだけ開けて外をそっと伺う。


 え?


 先程まで消えていたお客様が綺麗に並んで待っている?

「あれ? この人達いつ来たのかしら?」

 耳を澄ませば何やら声が聞こえて来る。


「はい、並んでーこっちが最後尾です。道路にはみ出さないで」

「君、危ないからもう少し中で並んで」

「こっちが一番後ろですよー」

「君、横入りはダメだよ。あちらの案内の所で並んで」



 ?? 誰? 


 私は急いでカーテンを全開にして窓から外を見た。


 え? 昨日の騎士様達? 何故?


 何故か昨日来た三人のイケメン騎士様達が、店の前で案内係や、人員整理をしている。

 私は驚いて入口のドアを開けた。


「え? これは一体?」

 私の驚いた姿に気づいたのか? 爽やかイケメンのアンディさんが、朝日に眩しい笑顔で

「おはようございます。サーシャさん」と爽やかに言う。


 いや……おはようございますってこれ?


「昨日はご迷惑をお掛けしてすいませんでした。そのお詫びって訳じゃないんですけど、たまたまこの近くを通ったら、開店前だと言うのに多くの人が並んでいたんで、ついでにね?」

 笑顔で言う。


 ね? って は? 騎士団の人が人員整理? それも自発的に?

 昨日のお礼で? そんなのいいの?

 ? がいっぱいの私だが、とりあえず挨拶を。


「……あ、お、おはようございます? ありがとうございます?」


「あ、気にしないで? サーシャちゃん? 市民を守るのは俺達の義務でもあるから。ね?」


 今サーシャって言った? この男? サーシャちゃんって??

 市民の義務? なんじゃそれえええええ


 まぁあのままじゃ、確かに近所迷惑だとは思うけど……



「ささ、サーシャちゃん、そろそろ開店時間だよ? ほら? 準備して?」


「あ、は、はい……」


 えっと……これはどうすれば? 


「はいはーい。カフェひだまり亭開店です~お待たせしました~皆さん順番にゆっくりお入りくださいねー押さないように、ゆっくりですよ~~」


 ちょっ、え? 


 アンディさんは、勝手に開店の挨拶を終え、私にウィンクして店内へ私を押し込んだ。


 ええ? 何これ?


 私は戸惑ったが、次々と入店してくるお客様の対応に追われ、結局そのまま、人員整理を騎士様達に任せることになった。


「いらっしゃいませー、メニューをどうぞ?」



「あの男の子可愛くない?」

「あの男性イケメンよねえ?」



 何故か、気づいたらアンディさんとマーク君は、店内の手伝いまでしている……

 これって大丈夫なんだろうか?


 騎士団って暇なの?


 ってアンディさんって確か副隊長って言ってたはず。そして外で未だに人員整理している強面のお方は確か隊長と言ってなかったか?


 大丈夫か? この国の護衛体制は??


 私は少し心配になった。



「よう。アンディ。ここか? お前らが言っていたカフェって? 昨日のサンドイッチの店だよな?」


「レービン? 何だお前も来たのか?」


「そりゃそうだろ? とびっきりの美人がやってるカフェと聞いたら来ない訳には行かないだろ? なんせあの堅物の隊長が朝っぱらから様子見に行くぐらいだしな。ハハハハハッ」


「アンディ、マーク、抜けがけは許さんぞ? おい! レービンまで!」


「なんだ? ガンツも来たのかよー」


 ちょ? 何ですか? このイケメン様御一行は?


 私が驚いた顔をしていると、アンディさんが

「サーシャちゃん、ごめんね。騒々しいのが増えて……紹介するよ。同僚のレービンと、こっちのデカイのがガンツです」


「サーシャちゃん? って言うのか? うほー! めっちゃ可愛いじゃん! レービンです! よろしく!」

 そう言って銀髪の長髪を後ろで束ねた、切れ長の優しい目をした男性が握手を求めて来た。


「は、はい……よろしくお願いします」

 そう言って私が握手に応えようとした瞬間


「ストーーップ! サーシャちゃんに触れるのは俺達初代ファンクラブ会員の許可がないとダメで~す!」

 そう言ってマーク君がクシャっと笑って、レービンと名乗る男性と私の間に入って止めた。


 初代ファンクラブ会員? 何ですかそれ?


「お前、何勝手にそんなもん作ってるんだよ」


 ゴツンッ!


「イテッ!」

 すかさずアンデイさんのゲンコツがマーク君に炸裂したようで、マーク君は涙目になっている。

 ちょっと可哀想な気もするけど……

 ファンクラブって……


 結局、騎士様達はその後も手分けして、昼時の忙しい時間帯を手伝ってくれたのだった。



 これ良いのかしら?


 しかも、みんなサーシャちゃんって……

 気軽過ぎません?




 大聖女として長年、形だけ祭り上げられていた私にはちょっと、こそばゆく、恥ずかしい呼ばれ方だった。


「でも、悪い気はしないわね? なんかお? が出来た気分ね?」






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