証言 間宮最/小野美佳子
・
今更話すことなんて何もないですよ。私が得た情報はすべて……いやほとんど……だいたい……そこそこ、まあ、そこそこです、そこそこの数は
最初からまた話さなきゃ駄目なんですか? 面倒だなぁ!
事の始まりは、この海辺の遺体遺棄事件と同じタイミング……いや。もう少し遅いか。三人目の被害者が転がされた頃でした。その三人の被害者の親兄弟から依頼があったんですよ。「警察より先に真犯人を突き止めて欲しい」ってね。でもまあ依頼そのものが取り下げられてしまったので、私としては商売上がったりって感じなんですけど。
そうです、
大金を積まれましたよ。この事件の真相を何がなんでも明かさねばって思う程度にはね。でも──今、別の部屋で聴取を受けているんでしょう?
八房
株式会社アンディ・フロー? それにダーツバー? 八房汐海は都内にいるんですか? は? 何それ……。
そもそも、陸形、村市、山藤の親が一気に依頼を持ってきた理由だって知らないんですよ、こっちは。三人とも生まれ育ちも違う街だし、大学だって──。
いや、生まれ育ちが、違う街?
それは、陸形壮太、村市直己、山藤竜太、が、という事ですよね?
……いやだな、刑事さん。私に何を言わせたいんです?
・小野美佳子
刑事さん。うちに何を言わせたいのか分からんのですけど。
人魚さんの話ですか? それとも探偵としての仕事の話?
特に有益なことは言えんと思いますよ。
ええ。そうです。勤務先の上司から、間宮さんのアシスタントをするように指示されました。死体遺棄事件のことは知っとります。新聞やネットニュースの情報以外にも……勤務先が勤務先じゃけえ、色んな話が入ってくるんですよね。
うちは……間宮さんよりもちぃと年下じゃけえ、被害者の周りにいた人たちの証言を集めるよう依頼されました。大学生には見えんかもしれんけど、大学生の友だちがいるとか、そういう設定じゃったらまあいけるかなって。実際いけたんですけど。
ほいで。ええ。そうです。死体遺棄の被害者たちのことを知るのと同時に、彼らが加害者でもあるということを知りました。うちの感想ですか? ……殺されて当然な人らが、殺されただけじゃなぁって。
怖い顔。ほんまのことを言うためにうちはここにいるんじゃないんですか?
ふふ。
探偵ですけえ。駆け出しですけどね。そうです、
人魚の話ですか? 刑事さん、信じとらんでしょ?
うちは会いましたよ、人魚さん。あの貝殻も貰いました。煤原──巡査部長さんに見せてもろたんですけど、切れ味が鋭いらしいですね。驚きました。うちですか? 全然。怪我なんてしてません、ほら。ね? ほら。
人魚さんの名前? そんなん聞いてどないするんですか? まさか警察の皆さんも、人魚さんが殺人犯じゃと思うとるんじゃないですよね? ……まさか、ですよね?
ええ〜、そんな、非現実的な……だって人魚さんは海の中におるんですよ? どうやって陸地の人間のお腹を捌いたり、顔を潰したりするんですか?
うふふ。
探偵としてですか? ええ、仕事しとりますよ、今も。
言うわけないじゃないですか。守秘義務がありますけえ。
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