ゲームブック(二十二頁目)

どうすべきか、考える。

そうしているうちに「ふんふん」などといいながらノブが下り階段を降りていった。無言で眺めていると、一分後に帰って来た。


「ダメだ。マジで四階に繋がってる、死ぬわ」


手を横に振りながら帰ってきた。

どうやら下り階段の先は死地のようだ。気を取り直して鉄格子の向こうを見る。

その石造りの空間は、薄暗くてジメジメしている。


「扉、入ってみるしかねぇよな」


「そのようですね」


「うん」


皆同じ気持ちのようだ。

力を込めて鉄格子を押すと、ぎいいと重い音を立てて、扉が開いた。


「もうMP無いからね」


「俺もだよ」


なるべく敵に出会わないように移動しなければ。また少し気が抜けていたが、楽観視できる状況でもない。

警戒しつつ進んで行く。ちらりとノブを見るが、軽く首を振った。


「敵の気配は無い、というか生き物の気配が無いな」


「油断は禁物ですよ」


山本さんに釘を刺されたが「はい」としか答えられなかった。この状況は俺の油断が引き起こした、とも言えるのだ。

いやでも半分くらいは、みんなの責任だよな。


奥に進むにつれて次第に口数も少なくなり、静かに歩を進めていく。

この雰囲気、以前にも無かっただろうか。何処かで見た景色だ、いやこれは。


「おい、骨があるぞ。ここは」


「うん」


そうだ、ここは地下墓地だ。以前ゴブリン軍団とネクロマンサーと戦ったあの場所である。まさか迷宮と繋がっていたとは!

ならばこの上は既に町なのか。


その時、紫色のローブが視界に入った。いつかのネクロマンサーのそれだ。痛い目にあった事を思い出して、ばっと反射的に身構えた。他の三人も足を止めてそちらを見る。


向こうも気がついたのか、紫のローブがこちらを向いた。縦に真っ二つ、白黒に分かれた仮面が見えた。

じぃっと仮面の方を見ていると向こうから声をかけられた。


「何?」


「うおっ!あ、なに」


突然の事にびっくりして上手く返事できなかった。しっかりしろと後ろからさやの声が飛んでくる。応援ありがとう。


「お前たちに興味は無い、消えて」


ネクロマンサーは冷たい声でぴしりと、そう言った。およそ感情を読み取れない仮面の奥には、どんな表情が隠されているのか。


「それは良かった、私たちもアナタに興味無いからね」


対抗するかのように、さやがそう言い放って再び歩き始めた。


「ちょっ、あんまり刺激しないで」


「だって……」


「いや、もう良いから先を急ごうぜ」


「失礼」


そそくさとネクロマンサーの前を通り過ぎ、墓地の出口に向かう。ついに街に戻る時が来た。飛び込んで来た日の光に、目が細くなる。


「へぷし」


「街だーー!戻って来たあーーっ!」


「生きて戻れたな」


一日も経っていないが、日の光が随分と久しぶりに感じる。


「へぷし」

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