第一話 目にはさやかに見えねども-22
「それで?
木札をひらひらと
「答えずとも、おわかりでしょう」
行夜は脱げてしまった
傍らに目をやれば、飛虎が腹をさらけ出して眠っていた。
高らかな
「義父上。おはようございます」
「うん」
「あの、起き抜けになんですが、ひとつお願いが。あとで飛虎に神力を与えてもらえませんか? 昨夜からずっと、空腹を我慢させていて……」
「だろうなあと思ってはいたけど、やっぱり飲まず食わずか。いいよ、起きたらたらふく喰くわせてやる」
道真は木札を置くと、背負っていた段袋を下ろす。
「でもな、まずはおまえが食べろ」
道真は段袋から
それらを目にした途端、行夜はすさまじい飢えと渇きを覚えた。
「……いただきますっ」
言い終えるより先に、行夜は強飯をつかむ。
その間も惜しいといった手つきで柏の葉を
「ちゃんと
いまはとにかく食べることに忙しいので、子供扱いを怒る暇もない。そもそも、こんな
「俺もな、人の時分は寝食を忘れて書を読み
道真はのんびりとした口調で話しながら、竹筒の栓を抜き、行夜に差し出す。
早くもひとつ目の強飯を食べ終え、ふたつ目に嚙みついていた行夜は頰を張らしたまま竹筒を受け取った。
「無茶も時には必要。あとで千金万金の値をもたらすこともあるだろう。けどな、今回のおまえの必死さはただの意地だ。俺はおまえに、
声音に厳しさは
「何度占っても、比翼の
「……はい」
「必ず探し出すと、おまえは
行夜は唇を嚙み、黙り込む。
追い打ちをかけるように、道真はさらに言葉を連ねる。
「己の意地さえ通せれば、他はどうでもいい。どうせ、最後には俺がなんとかする。そう思ったか?」
「ちがっ、違います! 断じて、そんなっ……」
だが、続きは出てこない。いくらそんなつもりはなかったと声を張り上げても、結果だけみれば同じである。否定したところで無意味だ。
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