序-4
鬼王丸は普通の赤子ではない。
人知を超えた力を持つという点においては神も鬼も似たようなものだが、ふたつの力の在り様はまったく異なる。
無念を晴らしたい、
人や鳥獣、神々も含めて、瘴気は万物に悪影響をもたらす。時には神さえ滅ぼすほど強大な瘴気を持つ鬼もいるが、赤子の鬼王丸はその
とはいえ、まるで無害という訳ではない。草花の
「乳母を頼めりゃいいんだが……」
せめて食事の世話だけでも誰かと分担できれば。道真の切なる願いはしかし、
道真は神だから不快程度で済むが、常人なら最悪命を落とす危険もあるからだ。
また、赤子である鬼王丸は力の制御が一切できない。さっきのように感情の荒立ちに合わせて鬼火を熾してしまう。これでは命がいくつあっても足りない。
「無理だよな。うん、知っている……あ、やばい。なんか泣けてきた……」
道真は鬼王丸を
神様といっても、身があり心がある。普通に泣くし笑うし、食事や睡眠も必要不可欠だ。陰陽五行を司る神力を備え、不老不死といっても、中身は人と変わらない。
諸事情あり、生まれたばかりの鬼王丸を預かってふた月余りになるが、はじめての子育てに
「少しは真面目に眷属を従えるべきだったな……」
正式に土地神として認められた時、道真は他の神々から数々の訓示を
一口に神といっても、そこには様々な部類や序列がある。まず大きな区分として、神の国である
対し、土地神は先のふたつとは大きく異なる。土地神とは、永らく同じ地に在り続けたものが、信奉を受けて神に近い力を得た存在をいう。鳥獣や石木、時に人であったりと元は様々だが、とにかく最初から神だった訳ではないというのが大半に通じる特徴だ。
天津神や国津神からすれば、土地神は正式な神ではない。また、時に自身の裁量で見込んだものを神に昇華させることもあるため、両者の間には主従と呼んでも差し
道真は
瀬織津姫は
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