第十一章 革命軍と残された〈獣仁志・創神〉の仲間達 第二話 運命の少年の業
「……バ……!……イバ……!……セイバ……!……セイバー!」
「……はっ…!?」
ここは……そうか、俺…店で倒れて、あっちに行って戻って来たんだな…?
(メリアとローズ、ランガがセイバーに抱き付く)
「いたたたたたたたたっ!?落ち着け、全員良い齢した大人だろ?病み上がりの人間に勢いよく抱き付くんじゃない!」
「仕方ないでしょ、いきなり倒れるんだから!」
「妹として心配してるんだよ?」
「我の許嫁だし…もしもの事があったら困る…」
「ランガ!なに妄想で許嫁設定にしてるんだ!?俺と貴方はまだカレカノなのぉー!!」
はぁ…俺の周りには大切な人達が多過ぎるな?冒険者になったばかりの頃は一人だけだったのに、今では彼女が3人も居る…!少し憧れていた「ハーレム」とやらも夢ではなくなった!
「あぁ、そういえば…ザクロさんがセイバー君を呼んでいましたよ?」
「ザクロさんが?」
「ですが…鬼の形相で僕っちに話し掛けて来ましたぜ?」
「ひいぃっ!?」
俺はノーレルさんにそう言われ、玄関外でザクロさんを待っていた。すると、暫くしないうちに彼は現れた。
「うふふふふふふふふふふふふふふふふふふ…(怒)!!」
「えぇっ!?」
「イヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ…(怒)!!」
「ザ…ザクロさん!?」
(ザクロ、包丁を構えながらセイバーに叫ぶ)
「剣を自らの手でへし折るとはどういう料簡だ貴様ぁー!!極刑だ貴様…極刑だ貴様ぁぁぁ!!」
そう叫ぶと、包丁を構えたまま俺を追い掛けて来た。
「すみません、すみません!もう本当に申し訳ありませぇーん!!」
「アァァァァァァァァァァァァァ(怒)!!!!」
結局、追いかけっこは夕方から昼まで続いた。
「おい?俺はまだ怒っているからな?」
「はい…」
「今回は俺の好物のタピオカミルクティーを持って来てくれたから許すが…次俺の癪に触れる様な事をしでかしたら…今度は内臓をぐちゃぐちゃにするからな(怒)?」
「すみません!!」
も…もしもの時の為に行列に並んでタピオカミルクティーを買って来て正解だった…いや、まぁ確かに俺は剣を自分の手でへし折ったけど、それは呪いを断ち切る為であって、決して悪意があってその行為に及んだ訳ではないんだよね?……でも、そんな事理由にならないよな?ザクロさんは「The 職人」だもん。如何なる理由があろうと決して許してはくれないだろうし…まぁ、次回以降正当な理由で破損させれば良いだけの話か。
「あぁ、そういえば…」
「何です、ノーレルさん?」
「ミリアさんの空間にアレンという謎の人物が介入して来たと言ってましたよね?」
「えぇ。見た目は普通の青年といった感じでしたが…」
(ミネラルア、扉を勢い良く開ける)
「……はぁっ…はぁっ……今…アレンって…言わなかった!?」
び…びっくりしたぁ…!?一応病人が寝ているんですから、少し優しくドアを開けましょうね?
「え…言ったけど…?それがどうかしたのか?」
「どうかした所じゃじゃないわよ!」
(ミネラルア、セイバーの襟を掴む)
「アイツは私の…ヒグッ…うぅっ…ヒグッ…」
「ど…どうした?一旦落ち着け!」
「うん…」
「これは…少々ややこしい話になりそうですね?」
「コイツもセイバーの許嫁か…」
(セイバーとミネラルア、ザクロの腹を殴る)
「「違うわい!!」」
「「…真似するなぁっ!!」」
一旦ミネラルアを落ち着かせて、俺は先程の話の続きをした。
「それで?何でアレンという男に興味を抱いたのかな?」
「興味とかじゃないわよ…ヒグッ…うぅっ…ヒグッ…」
「まぁーだ泣いてるし…上手く話せないなら俺の『万里眼』で心の中を見ちゃうけど?」
「ダメダメダメーッ!!」
「はいはい…だったら早く話せよ?」
「えぇ…単刀直入に言うと、アイツはアタシの許嫁よ?まぁ、アタシの目の前で死んだんだけどね?」
「し…死んだ?」
「えぇ…出会った時から死ぬまでアタシの事を第一に考えてくれた…ヒグッ…うぅっ…ヒグッ…運命の人だったのよ?」
「そうか…お前も俺同様に過酷な過去があったんだな?」
「いいえ…アンタの方が過酷な過去を辿っているはずよ?アタシの過去なんかアンタと比べればちゃちい物よ?」
「けど…お前自身の心に深い傷を植え付けてしまっているみたいだな?」
「グスッ…」
なるほど…これは、見過ごせない問題になり得るな?俺は泣きじゃくるミネラルアを宥めた。
「んなっ…!?急に頭撫でるな…照れるじゃないの(恥)…!」
「う~ん…やはりミネラルアは『ツンデレ』なのか?」
「だっ…誰がツンデレよ!別にアンタを特別視しているからこんな態度取ってる訳じゃないからね!」
「うん。ツンデレが過ぎてもじもじする必要もないね?」
「んなっ!?アタシを馬鹿にするなぁー!!」
「こりゃ許嫁のアレンさんとやらもデレデレだろうね?」
「あ…当たり前でしょ!アタシが認めた唯一の許嫁よ、こんなに可愛いアタシを独り占め出来るんだもん、デレデレにならない方がおかしい話よ!」
「自画自賛の鑑だな…こんなに自意識が高い奴だとは思わなかった…(笑)」
「笑うなぁー!」
さぁーてさて、ミネラルアがこんなに猫みたいな性格の持ち主とは思わなんだ…しかし、アレンか…〈革命軍〉のトップである事も重大視しないといけないが、ミネラルアの許嫁である事も重要だ。そんな人物が関係が全くない俺にコンタクトを取って来たんだ。なにか裏があるはず…俺はミネラルアの頭を撫でながらそんな事を考えていた。
その日の夜。
「セイバー…頭撫でてぇ?」
「昼間のツンツンはどこへ消えた!?」
「それはそれ、今は今!」
「はいはい…」
俺はミネラルアに嬉しそうに尻尾をぶち当てられながら彼女の頭をナデナデしてあげたのだった。
「セイバー君?」
「おわあぁっ!?サファイアルさん!?」
「私の事を放っておいてミネラルア君を愛しているとは…皆さーん!」
「え?」
(メリアとローズとランガがセイバーに抱き付く)
「ぎぃやぁああああああ!?」
「今夜は私達と過ごすんじゃなかったのかにゃー?」
「ミネラルアちゃんだけズルいー!」
「あぶぅっ!?」
「我もナデナデしろぉー!」
「ぐぎゅうっ!?」
「じゃあ…私も…ギューッ…♡」
ぐぬわぁぁぁぁぁぁ!?い…息が出来ねぇ…!?酸欠で逝くぅー!?しかし、四人は抱き締める力を弱める事はなく、寧ろだんだん強くなっていった。そして、案の定…俺の意識は薄れていった。
………ここは……………ミリアさんの世界……………?
「また会えたね?セイバー君?」
「あ…貴方は!?」
ミリアさんの世界で出会ったのは、あのアレンさんだったのだ。
「アレンさん…また俺を〈革命軍〉に勧誘しに来たんですか?」
「それもあるけど…君は…」
(アレン、セイバーの服を掴む)
「俺の許嫁のミネラルアを誑かしたよね?」
「誑かすという言葉を履き違えていませんか?」
「いいや、そんな事はどうでも良いんだ…君は俺の事をミネラルアから『死んだ許嫁』と言われているはずだ」
「はい…そう言っていましたね?」
「でも…その俺は今は生きている…これがどういう意味か分かるね?」
「え…?」
突然意味の分からない質問を投げられた。当然、俺にその質問の意味は分かる事はなく、疑問文を疑問文で返す事しか出来なかった。
「どういう意味ですか?」
「まぁ、分かる奴の方が少ないよ…なにかの因果か、俺はもう一度この世界に戻る事が出来たみたいだ…だったら、『あの約束』を果たすのみ…!」
「え…?あ…『あの約束』?」
「あぁ、君にも話さないといけないね…俺が数百年前に背負った…ミネラルアとの業を…」
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