第十章 〈哀〉を止める戦い 第四話 〈哀〉の終幕 そして、新たな災厄の序章
「『ミラクル・ストロング・セカンド』…!」
そう呟くと、俺は自身の体を鋼鉄よりも…いや、ダイヤモンドより…いいや、それよりも硬くした。そう、あの世とこの世の狭間で母さん達がくれた力とは…「誰にも負けない心」だ。特別強い力なんか貰っていない…もう、他人から貰った力で強くなるのは御免だ。だから、自分自身の力で強くなる。でも、母さん達からあの言葉を貰わなかったらこの力は目覚めなかっただろう。ありがとう、母さん、父さん、村の皆…俺はここで、伝説を超える!そして、万物を守る英雄になってみせる!
「サファイアル…この状態の俺は…さっきまでの俺と考えているなら…痛い目を見るぞ?」
「フン、所詮は雑魚がイキっているだけ…私の相手にはな…!?」
(セイバー、油断するサファイアルの腹を蹴り抜く)
「かはぁぁっ…!?」
「遅い…」
俺は油断するサファイアルさんの腹に一撃をあげてやった。まぁ、さっきの蹴りは本気度5%だけどな?
「おいおい?この程度の蹴りで腹を抱えるなんて…アリでも踏んだのか?」
「ごはぁっ…!?たった一発当てただけで思い上がらない方が…!?」
(セイバー、サファイアルの顔に蹴りを入れる)
「ぐはぁぁっ!?」
「思い上がっているのはそっちだ…弱者が!」
『何故だ…何故私が一方的に攻撃を受けているんです!?いいや、彼は攻撃のみ強くなっているに過ぎない…こちらから攻撃すればまた振り出しに戻せる…!』
「攻撃ばかりに集中しては…体が隙塗れですよ!」
「…」
(サファイアル、セイバーの腹を剣で突き刺そうとする)
「貰ったぁー!!」
「甘いな…」
俺の腹をサファイアルさんの剣が刺されようとしていた。だがな…
(セイバー、余裕で剣を弾く)
「ぐぅぅっ!?」
「アンタの薄汚い攻撃なんか…当たる訳ねぇだろ?」
「フフッ…確かに君は強くなった…しかし、私は伝説の〈獣仁志・創神〉!君が勝てる相手ではない!」
「その減らず口も…いつまで続くのかな?」
「何故です…何故分かってくれないんです?」
(セイバー、サファイアルを強化されたダイヤモンドの剣で斬り付ける)
「分からないさ…どうせアンタは俺の事を好きで好きで堪らないんだろ?ランガやローズ、そしてメリアさんを俺から引き剥がして、俺をアンタだけの物にしたいんだろ?」
「そこまで分かっていて…何故私を拒むんですか!私は寝ても覚めても君の事しか思っていなかったというのに…!」
「何度でも言おう、アンタの愛とメリアさん達の愛は違う!あの三人は俺に馬鹿正直に真正面から想いをぶつけてくれたから、俺と愛を紡ぐ事が出来たんだ!この愛は俺が作ったんじゃない、あの三人が努力した事で初めて『愛』が生まれたんだ!それに、俺はあの三人が俺の為に…俺を守る存在になりたいって言ってくれた…そして俺の努力や鍛錬にも付き合ってくれた!だからあの三人の愛には応えなきゃいけねぇ!でも、アンタの歪んだ愛に応えるつもりはねぇ!アンタは何も努力もしていねぇ、ただ一方的に歪んだ愛情を抱いていただけだ!そんな物は『愛』じゃねぇ、歪んだ『嫉妬心』以外の何物でもねぇんだよ!更に、アンタはその嫉妬心を理由に世界を滅亡させるとかいう奇行に走った!こんなの身勝手以外の何物でもねぇ、ふざけるなよ!この世界ではな!将来に向かって努力している奴に、幸せを紡いでいる奴も居るし、死にたい気持ちでありながらも世界の為に必死に生きている奴だって居るんだ!そんな人達の未来を潰すアンタの考えは何があっても正当化出来ねぇ!この外道が!!」
「はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」
「もう良い…これだけ言っても分かんねぇなら、その性根ごとアンタを本当の地獄へ突き落してやる…」
俺が追撃を決めようとした時だった─
「私は…………力が欲しい、大好きな人を無理矢理手に入れる力が…………欲しいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
(サファイアルの体が数百倍大きくなる)
おいおい…巨大化を行使するか…でも、デカくなっただけで、何も変わらねぇ!
「グガガガガ…ワタシ…セ…!?」
(セイバー、巨大化したサファイアルの右腕を斬り落とす)
「『神剣・クロニカル・二の技〈砕〉』…」
「ぐぎゃぁあああ!?」
「もう………アンタの攻撃が俺に届く事はない…母さんから貰った勇気、その勇気をトリガーに創り上げた二つ目の最終奥義だ!」
俺は両手の剣を合わせ、「神剣・クロニカル」のもう一つの最終奥義を放とうとした。構えを取り、目標目掛けて技を放つ!
「『神剣・クロニカル・最終奥義・十一の技〈持戒【オブセッショナル】〉』!!」
その攻撃を受けたサファイアルさんは、全身を斬り尽くされ、苦悶の声を上げながら絶命した。
「ふぅ…終わったな…」
「カハッ…!?ぐふぅっ!?」
その声を上げ終えると、サファイアルさんは息を引き取った。はぁ、結局…サファイアルさんを救い出す事は出来なかったか…俺は己の無力さに浸る事しか出来なかった。その時だった─
(サファイアルの死体が光り出す)
「な、何だ!?もしや、体も天へ召されるとでも言うのか?」
しかし、俺の見解は間違っていた。暫くすると、サファイアルさんの死体は息を吹き返し、俺を見て─
(サファイアル、セイバーに抱き付く)
「セイバーくぅーん!」
「ちょっ…、いきなり抱き付かないでください…いだだだだだだ!!??」
え?サファイアルさん?俺がさっき殺したはずだよね?確実に手応えはあったはずだよ?
「あ、貴方…さっき死んだんじゃ…?」
「え?」
「サファイアルさん…ですよね?」
「え?僕はサファイアルじゃないよ?」
「え!?じゃあ誰ですか、貴方は!?」
俺が衝撃を受けながらサファイアルさんにそう聞くと、彼は質問にこう答えた。
「僕は『ローズマリー・サンドライト』だよ?今まではサファイアルに体を貸していたけど、彼の心が死んだからこうして僕の心が現れたって訳!」
「えぇ…?て、事は…今まで俺が見て来たサファイアルさんは、心が死んだから今からローズマリーになったという事?」
「そゆこと!今日から改めて宜しくね、セイバー君?」
こ、こうして〈哀〉の神の襲撃事件は終結を迎えたのだった。
「おや?この剣に呪いが掛かってる…恐らくはサファイアルさんの怨念に決まってる…」
(セイバー、変色剣をへし折る)
「セ、セイバー君!?」
「よし、これで本当にこの事件は解決だ!」
「よ…良かったのかなぁ…?」
あれから数日が過ぎた。この作戦で死んだ者はサファイアルさんとサファイアルさんに殺された女性以外では誰一人として居なかった。作戦が終わった後にサファイアルさんに囚われていた女性達はウチで暫く面倒を見る事となった。そして、作戦の間だけ生活を共にしていたリンさんだが…
「気が変わった。セイバー殿のその力を解析し終えるまで共に暮らすとしよう」
「えぇ…?」
ま、まぁ…戦力が増えたから良しとしますか。それと、料理の件だが、サファイアルさんが体を使っていた事もあってか、ローズマリーさんはすぐに料理を覚える事が出来た。しかも…
(セイバー、ローズマリーが作った料理を口にする)
「う…ま…い…ぞぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「そんなに大声を出す程美味しいのかな、これくらい普通だと思うけど?」
よし、これなら料理人の問題も解決だ!それと、あの騒動で救い出した女性達にこの店の仕事を教えてあげねば…
「みなさぁーん、今から仕事の大まかな内容を説明するので聞いてくださいね?」
これも…先輩の仕事、正直人に物を教えるのは得意じゃないけど、これもまた試練。乗り越えていくぞ!
ここはセイバー達が住まう島の外の話。とある森の中の廃墟の中でよろよろと蠢く人影があった。
「ふぅ…久し振りの空気は…コホコホッ、暫く掃除もされてなかったから…少し埃臭いな?」
この少年はこの廃墟の住人だろうか?見るからに覇気が漂う少年はその廃墟から出て行った。
「さぁ、ミネラルア…お前を迎える準備は整ったぞ?今、迎えに行くからな?」
どうやら、セイバー達の安息の日々はすぐに終わりを迎えそうだ。
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