第十章 〈哀〉を止める戦い 第三話 繋がる思い そして、目覚める〈奇跡の力【ミラクル・ストロング】〉
遂に俺とサファイアルさんの真剣勝負が始まった。しかし、彼は卑劣な手を用いて来た。
「君と一対一で戦うのはリスクがあります…私の分身を召喚しましょう!」
「アンタはいつから…」
「ん?私が何です?」
「アンタはいつから…そんな性根が捻じ曲がった人間になったんだよ!俺の知ってるサファイアルはそんな卑劣な人間ではなかった!少し頭のネジは外れていたけど、皆から慕われる『正義の象徴』だった!何があったらアンタをここまで劣悪な性格の人間になるんだ!俺はアンタに憧れていた、たくさん体は弄られてたけど、俺を立派な冒険者へと育ててくれた…でも、そんなサファイアルはもうここには居ない、アンタが俺の目標のサファイアルを殺した、アンタに生きる資格はねぇ、さぁ…その性根ごと死んでくれ!」
「やはり君は分かってくれないんですね…………あははははははははははははははははは!!」
そう叫ぶと同時にサファイアルさんは分身を呼び出した。まぁ、この展開は想定の範囲内なんだけど…俺は右腕に力を籠めて、メリアさんを召喚した。
「呼んだぁー?」
「あぁ、目の前のあの人を止める…貴方には分身の相手をしてもらいたい、良いですか?」
「良いよぉ~、どうせ雑魚だし…」
「私の分身を雑魚呼ばわりとは…セイバー君は生かしますが、貴方は八つ裂きにして殺してあげましょう…!!」
そうして、それぞれ一対一の戦いが始まった。
─ メリア ─
さてさて、召喚されたは良いけど…私が相手する分身…明らかにレベルが高過ぎるよね?私みたいな使い魔が相手出来るのかなぁ…?
「ぐわああっ!!」
「あぶっ…!?」
攻撃は躱す事が出来るみたいだね…でも、試しに攻撃してみるけど…
「はぁぁっ!!」
「ぐわっ!!」
(メリアの攻撃、分身に少しもダメージを与える事無く弾かれる)
やっぱりね…これでも召喚主であるセイバーと同じくらいレベルアップはしたんだけど、コイツのレベルがえげつない事は分かったよ…でも、だからって…ここで弱腰になって逃げる訳にはいかないよね?腐っても私はセイバーの番…番のお願いを聞かないで番を語る資格はない!私は自身の体に攻撃力だけを上げるバフを付与した。
「ぐわっ…ぐわああっ!!」
「セイバーみたいに全ステータスを底上げ出来るスキルは使えないけど…これだけでも貴方を倒すのには充分過ぎる!」
私は杖と剣を構えた。そして、セイバーが愛用するあの攻撃を使用した。
「『神剣・クロニカル・一の技〈斬〉』と、〈万物の道具・草薙の剣『聖苑の穿【せいえんのうがて】』〉」!」
「ぐがぁぁぁっ!?」
私の技が分身に大ダメージを与えた。私は分身が戦闘不能になった瞬間を見たかったが、それは叶わなかった。何故なら倒れた分身はサファイアルの体に吸収されてしまったからだ。
(サファイアル、分身を回収する)
「全く、私の分身ともあろう者があんな雑魚如きに敗北するとは…貴方に存在価値はない、ついでに殺してあげます…」
「止めろぉー!!」
セイバーが何か悪い事を感知したのか、サファイアルを止めようとしたけど…間に合わなかった…そして、サファイアルの体から一人の女性が弾き出された。
─ セイバー ─
分身はメリアさんが何とかしてくれたみたいだ…そして、サファイアルさんの体に吸収されていった。
「全く、私の分身ともあろう者があんな雑魚如きに敗北するとは…貴方に存在価値はない、ついでに殺してあげます…」
殺す!?マズい!さっきの分身が本当に彼の分身ではなかった場合、罪のない人が目の前で殺される事になる!
「止めろぉー!!」
「セイバー!?」
俺は即座にサファイアルさんの動きを止めようとしたが…俺が止める前に犠牲者が出てしまった。
(サファイアルの体から女性が弾き出される)
あ………………あぁ……………あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
「サファイアル…貴様ぁー!!」
「用済みになった雑魚を処理しただけです。それの何が悪いんです?」
俺は弾き出された女性の元へと走った。俺が彼女を抱き抱えた時には、彼女は既に虫の息だった。
「しっかりしてください、今治療しますから!」
「お…願いです…サファイアル…を…ころ…して…くだ…さい…」
「逝くな、しっかりしてくれ!!」
「貴方なら…アイツを倒せる…頼みます…」
彼女はそう言うと、あの世へと逝ってしまった。俺は…罪のない人をまた見殺しにしてしまった…強くなって皆を守ると誓ったのに…いいや、この報いも受けるべきだが…今は、亡くなった者の思いをぶつけなければならない奴が居る。
「サファイアル…俺はアンタに失望したよ?」
「何ですって…?」
「アンタはいつから…そんな残虐非道な人間へと変貌したんだ?アリアンとツーゲリ、そして今戦わされてる女性達、更にはさっき殺した女性も…皆、アンタの為に命を賭したんだ!そんな人達の思いを…アンタは踏み躙った!前のアンタなら、こんな事すぐに止めただろう…それに、アンタの為に命を賭した人達にも…帰りを待つ家族や友人が居る…部下を使って目的を果たさずとも…あのまま俺と共に過ごしていれば幸せはすぐに手に入るはずだったのに…戦意のない俺を無関係な部下を使って殺そうとし、更に失敗すればその人を見殺しにして…今だって俺の仲間によってアンタの仲間は死が迫っているのに…その人達を見捨てて…その上に更に犠牲を増やした…アンタは人じゃない、いいや、獣人でもない…人の皮を被った害獣だ!ここで血の一滴も残さぬ様に駆逐する!」
「やれるものならやってみなさい?」
「ここでアンタの目を覚まさせる…だから、こんな攻撃如きで死なないでくださいね!」
俺は右手にダイヤの剣、左手に変色剣を構え、更に〈万物の道具〉一式を装備し、サファイアルさんに突撃した。
(セイバーの剣とサファイアルの魔法がぶつかり合う)
クソッ…やはり流石は〈獣仁志・創神〉、根っからのクズになり果てても力は健在か…!でも、だからって…負ける訳にはいかない!俺は…本気で世界を救う!その為なら命だって投げ売ってやる…!
「ぬぅあぁぁぁぁぁ!!」
「はぁ…もうお遊びには付き合ってあげられません…」
「なんだと!?」
「これが…〈獣仁志〉最強の力です!」
(サファイアル、風属性の魔法でセイバーを吹き飛ばす)
なにっ…!?レベル2000代の俺をたった一発の魔法で吹き飛ばすとは…!しかし、次はこうは行かないぞ!
(サファイアル、セイバーの横っ腹に剣を深々と突き刺す)
「かはぁっ…!?」
「まだまだです…」
いつの間に間合いに入られたんだ…!?全く気が付かなった…幸いな事に急所は避けられたが、傷の深さが半端ない…
「私の愛を拒んだ罪…………万死に値する…!」
(サファイアル、セイバーを滅多刺しにする)
「がぷわはぁぁっ…!?」
「まだまだぁ~♪」
速過ぎる…!全く躱す事も、動きを見る事も叶わない…!
「さぁーてさて、君をバラバラにして殺して観賞植物として飼い慣らしましょうか!」
「クソッたれ…!」
俺は反撃としてサファイアルさんの顔に剣を深々と突き刺そうとした。
(セイバー、サファイアルの顔に剣を突き刺す)
(サファイアル、それを手で受け止める)
「なぁぁっ…!?」
「それが君の限界です…あぁ、可哀想に…私を止める為にこんな危険な所へと来たのに、その私によってたった今殺されようとしている…」
「コヒュー…コヒュー…」
「まぁ、安心して逝って下さい?気に病む必要はありません、君の仲間達も全員そっちに送ってあげますよ?」
「こ…こんな所で…死んでたまるかぁー!!」
俺は最後の力を振り絞って両手の剣に力を籠めた─
(サファイアル、セイバーの胸部に剣を深々と突き刺す)
「かはぁっ…!?ゴフゥッ…!?」
「セイバー!?」
「五月蠅い…私の愛を裏切った君はもう、喋る権利も息をする権利もありません」
クソッたれが…俺はやはり伝説を超える事は出来なかったんだな…そう思っている間にも俺の意識は薄れていく…あぁ、母さん…父さん…俺は結局守れる者も守る事も出来ぬまま…そして、大切な人達を置いて逝ってしまうみたいだ…俺って…弱いのかな?
『諦めるんじゃねぇ!』
『セイバー!お前はこんな所でくたばるべき存在じゃねぇ!』
だ…誰だ…?俺の心に直接語り掛けて来ている…のか?
『セイバー…貴方はまだ死んじゃいけないのよ…だから、こっちに来ちゃいけない!』
『母さん…皆…』
『そうだとも、セイバー!お前は父さんの分まで立派に生きるんじゃないのか?』
『父さん…』
ここは…あの世…?という事は、俺は死んだ…のか?
『貴方に私達から力を授けます…私達の村に伝わる秘伝の技です』
母さんはそう言うと、俺の胸に手を当て、光の玉を俺の体に打ち込んだ。
『これは…?』
『貴方には言ってなかったけど…私達の村で、100年に一度、その力の継承者を決める儀式があるの。それを、簡易的に貴方に継承したの』
『…』
『この力があれば…貴方はどんな困難も乗り越えられる…それに、貴方は独りじゃない…どんな時も、私達村人が貴方を応援するし、一緒に居るから!』
『母さん…父さん…皆…』
『だから、あんな奴に負けないで!』
『お前は強いんだろ?アイツなんかぶっ倒せ!』
『俺達も応援してるよ、だから頑張れ!』
『皆…』
俺は意思を固くした。俺の意思はまだ軟弱だったんだ…俺には死して尚応援してくれる存在がたくさん居る、その人達の思いを無駄にする事等出来ない!
「サファイアル…俺をこんな攻撃で殺せると思ってんじゃねぇぞ?」
「なにっ…!?」
(セイバー、サファイアルの四肢を剣で突く)
「さぁ…ここからが、正義のヒーローの…逆転劇だ!」
俺は皆のお陰で…〈奇跡の子〉の力が覚醒した今の力のもう一段階上の力を手に入れる事が出来た!
「『ミラクル・ストロング・セカンド』…!」
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