第十章 〈哀〉を止める戦い 第二話 〈獣仁志〉の力、そして、師匠v.s弟子

─ ノーレル ─


 さぁて、まさか…セイバー君達が倒したはずの〈邪王四皇聖〉が体だけですが完全復活してしまうとは…しかし、僕っち達にとって〈邪王四皇聖〉は眼中にありませんぜ?




「アルマさんとレールゲルさん…早くセイバー君達の援護に回りたいので早く片付けますよ?」


「あぁ!」


「分かりました!」




二人の意思を確認した所で、僕っちはある呪文を唱え始めましたぜ?




「『煮え滾る恨みの念、早々たる思いに馳せる兵共、今その力を顕現せよ、暴れ狂う人形、唸る人魚、爆ぜて生き返れ、魔道の十八番〈焔怨の楔〉』!」


「ぐぅぅっ!?」


「ぬぎぎぎ!?」




僕っちのこの完全詠唱の魔道を受けて生き残る奴はサファイアルさんしか居ませんぜ?ロリアンさんとアイマさんでしたっけ?再登場してもらった所申し訳ないですが、さっさと退場してもらいますぜ?


(ノーレルの魔道でロリアンとアイマが倒される)


さて、これで足枷は居なくなった。これでセイバー君の援護に回る事が出来ますぜ?そう思った時でした─




「おやおや?もう我の出番か…〈邪王四皇聖〉もちっちぇえな?」


「我等〈哀の幹部〉の出番がこうも早く到来するとは…」


「ふわーわぁ…まだ眠りたかったよぉ…」




新手か!?僕っちはすぐに応戦状態に入りました。しかし、気が付いた時には─


(ノーレル、アルマとレールゲルと分断される)


僕っち達の三人の陣形を崩されてしまったんです。しかも、僕っちは二人を相手する羽目になってしまいましたぜ?これはマズい…僕っちが苦手とする「数の力」が目の前に顕現してしまいましたぜ?




「我はルージュエル!」


「我はリージュエル、〈獣仁志・破壊神〉、ノーレル…サファイアル様の為にここで死んでもらう!」


「おいおい、いつから君達人間が僕っちに勝てると思い違いをしているんですかい?」


「「何っ!?」」


「例えサファイアルさんの加護を受けていても、所詮は人間…僕っちを敵に回した事、後悔させてやりますぜ?」


「思い違いをしているのはノーレル、お前の方だ!」


「そもそも、この戦局を見てみよ?二対一だぞ…勝機は我等にあり!」




煽って戦う気を失わせる作戦も失敗…これは、本格的に腹を括る必要があるみたいですねぇ?こうなったら、〈獣仁志・破壊神〉の真の力を見せる必要アリですねぇ?僕っちは心臓に手を当てた。




「ルージュエルさんとリージュエルさんでしたっけ?」


「あぁ、名前を覚えてくれるとは敵ながら感謝しないとな?」


「我等は名前が似ているから勘違いされがちなんだ。貴様が初めてだぞ、ちゃんと名前を覚えてくれたのは…」


「ですから…その強気に賞賛の意を込めて、僕っちの全力を見せてあげますぜ?」


「だったら…我等もその意思に応えるのみ…行くぞ、リージュエル!」


「あぁ、ルージュエル!」




そう言うと、ルージュエルさんとリージュエルさんは合体技を放とうとしていましたぜ?




「喰らえ…!」


「「『剛拳剛脚』!!」」


「それが君達の全力…想定の範囲内ですぜ?」




僕っちはさっきの魔道よりも強い力を持つ完全詠唱の魔道を放とうと、詠唱しましたぜ?




「『永遠なる女子、終焉たる閻魔、満ち開き、跋扈せん真なる力よ、我の意思に応え、その力を具現せよ…魔道の三十路〈深淵〉』!」




(ノーレルの魔道でルージュエルとリージュエルがノーレルの作り出した空間に転移される)


「な、何だ…この空間…!?」


「何もない…何も情報がない…これがノーレルの作った世界…!?」


「何も出来ないんでしょうぜ?でも、その感傷に浸らせる猶予は与えませんぜ?」




僕っちは驚くルージュエルさんとリージュエルさんのアキレス腱を切りました。




「ぐげぇえぇっ!?」


「何っ!?」


「おやおや?二人なら僕っちを倒すのは容易いと言っていませんでしたかい?」


「しまった…!?」




そう、もう僕っちと二人の戦闘はもう勝負が付いているんですぜ?そう、あの魔道を受けている時点で僕っちの勝利は確定しているんですぜ?


(ルージュエルとリージュエル、全身の骨が砕ける)




「はぁ…言い忘れていましたが、さっきの魔道はあの空間に転移させるのともう一つ力が作用するんです」


「ま…まさか‥!?」


「対象の全身の骨という骨を木っ端微塵に砕くんです。骨が砕けるとどうなるか…内臓や脳、筋肉が露わになる…そうなる事で全身が内出血を起こし、やがて出血多量で死に至るでしょう…」


「ば、馬鹿な…!?我等がこんなひ弱な男に負けるというのか…!?」


「二人で挑んで負けるとは…流石は〈獣仁志〉…賞賛に値する…」


「だって僕っちは…腐っても〈獣仁志・破壊神〉、人の体を壊す事等造作もないでっせ?」




僕っちがそう言い終えると同時にルージュエルさんとリージュエルさんは息絶えました。ふぅ…やっと〈獣仁志・破壊神〉らしい事が出来た気がしますぜ?さて、アルマさんとレールゲルさんは無事に相手を倒せましたかね?少し様子を見てみましょうかい?




─ アルマ ─


 しまった、ノーレルと分断されてしまった。私達は一人でも充分に戦えるが、ノーレルは魔導士、一人で戦うなんて自殺行為だ。しかも、彼の元には敵が二人も向かってしまった。今すぐにでも助けに行きたいが、生憎私とレールゲルの前にも一人の敵が居る。まずはコイツを何とかしないとノーレルを助けには行けない…




「私はラージュエル、〈聖神〉と〈魔神〉さん…ここで凄惨な最期を辿ってもらいます!」


「〈獣仁志〉の私達に喧嘩を売るとは…お兄さん、死にたいんだね?」


「コラ、レールゲル…相手の軽い挑発だ。そう簡単に挑発に乗るな…」


「じゃあ、まずは私から崇高なる攻撃を始めようか?」




そう言うと、ラージュエルは私達の頭上に複数の魔法陣を展開した。これは、「超級」の魔法か?だったら、こちらも「超級」のバリアを展開するまで…しかし、奴の狙いはここからだった。


(ラージュエル、アルマの腹にナイフを突き刺す)




「ぐうぅぅおぉっ!?」


「隙あり!」


「お姉ちゃん!?」


「大丈夫だ、掠っただけだ!」




ほほう、あの魔方陣は陽動作戦の為に使ったのか…しかし、そうなる事も想定通り!私は油断するラージュエルの右目を光線で貫いた。




「ぐうぅっ!?」


「これでお相子だ!」


「待ってて、今回復するから!」


「良い、それに…お前は〈魔神〉、回復魔法は苦手だろう?」


「そ、そうだったね…」




奴の視界を半分消す事は出来たが、こちらも痛手を負ってしまった。内臓が抉られていなければ良いが…私はとりあえず傷口を無詠唱回復魔法で治した。これで出血多量で死ぬ事はないだろう…さて、〈獣仁志〉である私に喧嘩を売って来たんだ…悪い子には罰を、痛い目を見てもらわなければ…




「レールゲル、私に『魔神強化』を付与してくれ?」


「い、良いけど…私も一緒に戦った方が良いよね、お姉ちゃん?」


「お前は後方支援に徹しろ、前線は私に任せろ?大丈夫、私もお前も〈獣仁志〉だ。強化されただけの人間に負ける未来は見えない!」




私は右手に「聖剣エクスカリバー」を装備した。




「思い上がるなよ…たかが片目を潰したくらいで勝ち誇るとは、その性根ごと焼き払ってくれるわぁ!!」




ラージュエルが私目掛けて突進して来た。しかし、その直線的な攻撃…私には止まって見えるぞ?私は彼の攻撃を余裕で躱し、聖剣エクスカリバーに力を籠めた。




「ラージュエル、お前は運が悪い…」


「何を…!」


「相手が悪過ぎた…お前はもっと強くなってから私に挑むべきだった」


「私は既に強い…愚弄するなぁ!」


「せめて…この剣の錆にしてくれる…!」


「あぁぁぁぁぁ…!!」




私はラージュエルの攻撃を全て躱し終えた直後に、奴の首を斬り落とした。




「『聖剣エクスカリバー・〈斬〉モード』!」


「かはぁぁっ…!?」


「レールゲル、念の為にあの技を!」


「わ、分かったよ!『無限回廊の刑』付与!」




私の命でレールゲルに「無限回廊の刑」をラージュエルの精神に付与してもらった。これで、私達に現れた敵の討伐は完了した…ノーレル、アイツは無事なのだろうか?私はレールゲルを連れて彼の元へ向かった。すると、倒れる二人の敵の体を吸収するノーレルの姿があった。




「良かった…無事に勝ったんだな?」


「えぇ、この程度の敵なら僕っちが全力を出さずとも討伐可能でっせ?」


「よし、これで私達が相手する敵は全滅した訳だな?」


「えぇ、後は…」




─ セイバー ─


 クソッ…サファイアルさんの所へ行きたいが、雑魚共が多い!雑魚とはいえ110人も居ては流石の俺でも対処しきれない…




「セイバーさん!ここは私達に任せてください!」


「え、良いんですか?」


「あぁ、強くなったのはお前だけじゃないって所を見せてやる!」




困惑する俺に声を掛けてきたのは…俺が緊急で招集を掛けて集まってくれた冒険者達だった。数は少ないが、立派な戦力の一員だ。しかし、40人でこの数を相手出来るとは思えない…俺は断ろうとしたが、それを止めたのは…




「大丈夫、私とランガちゃんも一緒に戦うから!」


「セイバー殿は先に行け、ここは我等が食い止める!」


「二人共…」


「それに、マスターを止められるのはセイバー君しか居ないよ!」


「この前の恩、ここで返させてくれ!」


「皆…」




皆の意思は固まっているみたいだ。だったら、もう答えは決まっている…




「じゃあ、ここは任せた!一つお願い事がある、絶対に死なない様に!」


「おぉっ、勿論だ!」


「サファイアルをぶっ飛ばして来い!」




俺は皆に背中を押されながらサファイアルさんの所へ向かった。そして、サファイアルさんが座る玉座の前までやって来た。思い返せばここまで色んな事があったな…最初はただひっそりと冒険者ライフを楽しむだけのつもりが、洋館でサルタとサファイアルさんと出会って、〈トライデント・キャラバン〉と出会って、国王会議に行ったり、〈邪王四皇聖〉と戦って…正直こんな楽しい人生を生きれるとは思わなかった。そして、俺は世界を守る戦いの中心に立っている。もう、俺の命は俺だけの物じゃない。皆の意思や、思いが…俺の小さい心に詰まっている。だから、伝説と戦う事なんか…もう怖くもない!




「降りて来い、サファイアル・レクイエム・クリエイト!」


「君は本当に面白い…ここで、決着を付けましょう…『正義』と『正義』の戦いの!」




(「〈哀〉の神『サファイアル・レクイエム・クリエイト』」v.s「〈哀〉の神を止める者『セイバー・クラニカル』」)


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る