第十章 〈哀〉を止める戦い 第一話 〈トライデント・キャラバン〉の戦い、そして、〈哀〉との最終決戦
あれから二ヶ月の月日が流れた。〈トライデント・キャラバン〉の皆は目標のレベル1000を遥か超えた1950まで上昇し、頼れる仲間が出来た。そして、ランガとサルタの試練だが…本当はこの試練のシーンも紹介したかったのだが、なにせ試練がたった50分で終わってしまったのだから…紹介する尺も稼げなかったのだ。しかし、二人共〈奇跡の子〉の力を覚醒する事に成功したし、レベルも比例して2000まで上昇したし、良い事尽くしだ。かく言う俺も鍛錬を怠らなかった。レベルは3500まで上げる事に成功し、「神級」レベルの魔法も自由自在に扱う事も出来るようになった。後は両眼に宿った闇の力と光の力だが、これもだいぶどういう力なのかは理解出来た。しかし、この力も謎のレベル「滅級」と「創級」までは扱える様にはなれなかった。しかし、これだけ力を蓄えていれば困る事はないだろう。さて、もうそろそろ俺の「創った」アイツがサファイアルさんの居場所を突き止めているはずだ…おっと、そんな事を言っていると…
(窓の外から機械の鳩が入って来る)
帰って来た帰って来た…さて、彼の居場所は…
「サファイアルの居場所は〈哀〉の神が創った空間、『クライ・ワールド』でっせ!」
「分かった、情報収集感謝するよ、『クローバー』?」
「いえいえ、構いませんぜ、セイバーの旦那?」
「喋り方が完全に僕っちと合致しているんですけど…どういう煽りですかい?」
「いやぁー、どうせなら癖の強いキャラが良いかなって思って…」
「はぁ…良いですぜ、どうせ使い捨ての機械ですからね…」
「使い捨て言うなし、立派な俺の息子です!」
「下ネタ言わないでくだせえ」
「そういう意味の息子じゃないから、機械の事を息子と言ってるの!」
「ややこしいでっせ…」
さて、全員準備は万端。いざ行かん、「クライ・ワールド」!………………そこへはどうやって向かえば良いんだ?
「あぁ、それなら僕っちとアルマさん、レールゲルさんの三人でゲートを作りやすから…それを通って行けますぜ?」
色々と都合が良いな、〈獣仁志〉って!まぁ、それでサファイアルさんの所へ向かえるなら良いでしょう。俺は皆に集合を掛けた。
全員心の準備は出来たみたいだな?俺はそれを確認すると、皆に向けて宣誓した。
「皆…俺の私情に付き合ってくれてありがとう!発端は全てサファイアルさんだけど、動機は俺だ!つまり、俺が何とかしないとこの事件は終わらない!本当は一人で彼と戦おうとするつもりだった…でも、俺一人じゃどうにもならない事も知った!そんな俺に皆は快く『力になる』と言ってくれた、本当にありがとう!これはただの戦いではない、俺達の…正義の戦いだ!」
ここに居る者を合わせると、50人。相手がどれだけの勢力を持っているかは分からないが、これだけの数の心強い味方が居るんだ。負ける訳にはいかない!
「じゃあ、展開しますぜ?」
「皆でサファイアルを止めるんだ、私達の仲間だからな?」
「皆、準備は良い?」
そう言うと、ノーレルさんと変態二人組は「クライ・ワールド」に繋がるゲートを展開した。
「さぁ、行こう!全ては世界を救う為、そして…仲間を救い出す為に!」
俺達はゲートを通ってサファイアルさんが居る「クライ・ワールド」へ向かった。
─ クライ・ワールド ─
ここが、「クライ・ワールド」…名前の通り薄暗い世界だな…植物は皆下を向いているし、地面の土は腐っている…こんな環境の悪い世界でサファイアルさんは孤独に生きているのか?こんな世界に留まるより、あの時のまま俺達と店で働く日常の方が楽しいに決まっているだろうに…
「早く彼の元へ急ぎましょう、もしかすると…彼が真なる力に目覚めてしまうかもしれない!」
俺がそう声を掛けてサファイアルさんの所へ急ごうとした時だった─
「この空間に干渉して来た不届き者は貴様等か?」
「我等が力を以って排除する」
「生まれた事を後悔させてやる…!」
いきなり背後から聞き覚えのない三人の男の声がした。後ろを振り返ると、屈強な三人組の男達が宙に浮かんでいた。
「だ、誰だアンタ等!?」
「私達はサファイアル様の忠実なる下部…私はオーイ!」
「俺はリーイ!」
「僕はルーイ!」
「名前が絶望的にダサい!」
「む?君は…セイバー君!?」
「サファイアル様がお望みとする〈運命の人〉…」
「ここで頂くとする!」
クソッ…やはり目的は俺か…仕方ない、また無力化して体を元に戻させようか!俺が剣を抜こうとした時だった─
(〈トライデント・キャラバン〉、各々武器を構える)
〈トライデント・キャラバン〉の皆が俺を守る様に陣形を取った。
「スノウ達…ここは任せて良いんだな?」
「うん、君にはサファイアルを止めるという立派な役目があるミャウ…だから、こんな雑魚に構わないで先に行くミャウ!」
「わっちらも終われば後を追う!」
「行ってくれ、セイバー!」
「分かった…ここは〈トライデント・キャラバン〉に任せる事にする!他の皆は俺に付いて来てください!」
俺はスノウ達にこの場を任せて先へ行こうとした。
「おぉーっと、行かせない…」
「唸れ、『駆け回る針』!」
(サルバンの攻撃がルーイに命中する)
「ぐほぉっ!?」
「ありがとう、サルバン!」
俺達はこの世界の更に奥へと足を進めた。
─ スノウ ─
さて、この場をどう切り抜こうか考え中ミャウ…セイバーにあんな事言っちゃったし…ここで弱音を吐いて逃げる訳にもいかないミャウ!それに、セイバーのお陰で強い力を手に入れた訳だし…いつまでも弱者のままで居る訳にもいかないミャウ!
「皆、全力で戦うミャウ!」
「「「「「おぉーっ!」」」」」
「せいぜい俺を楽しませてくれよ?」
「良い準備運動になりそうだな?」
「ケケッ、獣の分際で俺達を倒せると思うなよ?」
「さぁて、それはどうかな?」
僕達は三人を囲む様に陣形を組んだ。そして敵一人に対して二人から三人で相手をする事にしたミャウ!
「行くミャウよ!サクシャイン、マヤ、コイツを全力で倒すミャウ!」
「了解なのじゃ!」
「了解です!」
「お前等みたいな野良獣が俺様を倒せると思うなよ?」
僕とサクシャインとマヤはリーイと対峙する事になったミャウ。セイバーから付与された「万里眼」でアイツの基礎情報を調べるミャウ…レベルは1200、格下だけど気は抜けないミャウ!全力で相手するだけミャウ!
「『神剣・クロニカル・一の技〈斬〉』!」
「『神拳・バルアフル・一の技〈うねり炎〉』!」
「『神杖・ルージュル・一の技〈深淵たる楔〉』!」
「ぐうぅぅおぉっ!?」
僕達の攻撃がリーイに命中したミャウ。でも、僕達の攻撃はこの程度じゃ終わらないミャウ!
「『光属性・超級〈ブレイキング・ライトニング〉』!」
「『水属性・超級〈ウォーター・ブレッシング〉』!」
「『炎属性・超級〈紅蓮地獄〉』!」
「おぉっ!?その程度の魔法で俺を倒せると思うなよ?」
「うん…心配しなくてもこれで終わりじゃないミャウよ?」
僕は油断するリーイにある仕掛けを発動させたミャウ。
(リーイの体に束縛魔法が付与される)
「ぐぅうっ!?」
「掛かったミャウね?」
「き、貴様ぁ…何をした!?」
「少し体に毒を入れただけミャウよ、さぁ…君を地獄から助けてやるミャウ?」
「じ…地獄…?」
「そうじゃ…お主もまた操られている…」
「操られている…何を言っているんだ?」
その事実を認めないリーイにサクシャインはこう質問を投げた。
「じゃあ、お主は『リーイ』として生まれた頃を覚えているのかや?」
「あ、当たり前だろう…俺様は崇高なサファイアル様に…あれ…サファイアル様との出会いの思い出が…思い出せない…?」
「やはりな…セイバー殿の見解は間違いでは無かった様じゃな…」
「俺様は…いや、俺っちは…マーヤとして生まれたはず…リーイって誰だ…?」
リーイ…いや、マーヤはそう言うと、光を零しながら改造魔法から解放されたミャウ。
「よし…ミッションコンプリートミャウね?」
「俺っちは今まで何を…」
「話は後じゃ、早くセイバー殿を追い掛けなくては…」
「他の皆は終わったんですかね?」
マヤがそう言ったので、僕はサルバン達の方を見たミャウ。すると、僕達同様、改造魔法を解除する事に成功していたミャウ。
「リーダー、僕達の方も終わったよ?」
「私達もあらかた終わったぞ…では、セイバー殿を追い掛けるとしよう」
「でも…セイバー達が今、何処へ向かっているのかが全く分からないミャウ…」
僕がその現実に気付いて絶望する中、リンがあるマジックアイテムを出したミャウ。
(リン、マジックアイテムでセイバー達の元へ向かった方角を示す)
「こ…これは?」
「セイバー殿が創った『示し紙』だ。これがあればセイバー殿達が向かった方角や位置が分かるんだ」
「へぇー…セイバーは色んな道具を作れるんだな?」
「そうだな…まるで〈獣仁志・創神〉みたいに思えてくるよな?」
「で、でも…セイバーとサファイアルは別人、偶然同じ事が出来ただけミャウ!」
「そんな事は後からでも考えられる…今はセイバー殿達を追い掛けるぞ?」
僕達は「示し紙」が示す方角へと向かったミャウ。
─ セイバー ─
俺達は「クライ・ワールド」の奥へと向かっていた。最初はそこまで悲しみの侵食が進んでいなかったが、奥へと進む度に捻じれた幹や木々、腐敗した大地が広がっていた。
「しかし…環境が劣悪だな…こんな所に本当にサファイアルさんは居るのか?」
「まぁ、この侵食が彼の仕業なら十中八九居るでしょうねぇ?」
「でも、地形が変化しただけで新たな刺客も一人も現れないね、セイバー?」
「しかし、もう少しで現れてもおかしくはない…」
「お兄ちゃん、ローズは怖いですぅ…」
「怯える事はない、俺が命に代えても守ってやる」
「いやん、照れるなぁ(恥)」
「「死ねぇ!!」」
「それはさ、それはさ、バカップルって言うんでしょ?」
「レールゲルは羨ましい限りですぅ!」
今はそんな事はどうでも良い…それよりも、全く刺客が現れない事が問題するべき事だろう。
「まさか、直々にここにやって来てくれるとは…」
あ、いつの間にやらサファイアルさんが鎮座する王座へと辿り着いたみたいだ。つまり、ここが最終決戦の地へと変わるという事…
「サファイアルさん、貴方の暴走は…俺の名に懸けて止めてみせる!」
「やれるものならやってみせなさい…皆さん、セイバー君を手に入れる聖戦の始まりです!」
サファイアルさんがそう言うと、彼の背後から100人程の操られた魔物と、10人の洗脳されているであろう女性が現れた…それだけではなかった、何と…
「ぐげへへへへ…俺様は…最強!」
「僕も…最強…ははははは…!」
ロリアンとアイマ!?何故彼等がここに居るのだ!?まさか、彼の力を以ってすれば最強を語る〈邪王四皇聖〉も術中におけるのか!?
「セイバー君…ロリアンとアイマの相手は僕っちとアルマさんとレールゲルさんの三人が担いますぜ?だから、サルタ君とランガ君と君でサファイアルさんを無力化してくだせえ!」
「お願いします!さて、皆…ここからが戦いの本番だ、気合入れるぞぉー!!」
俺達は、サファイアルさんを止める戦いの本番に突入したのだった。
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