第八章 〈哀〉の神とその下部達 第四話 止まらない愛と抗う心
おいおい…まさかサファイアルさんの下部がもう来てしまうなんて、オラドキドキすっぞ!?俺の息子とア〇ルが大雨になっておりまぁーす!!
「どうした?セイバー・クラニカル、ズボンが膨らんでいるぞ?」
「ほっとけぇっ(恥)!!」
さて、ここに居るのは俺とリンさんとノーレルさんの三人…相手の実力が分からない以上、無闇に突撃するのはリスクがある…だが、二人は武器を持っていない、武器を持っているのは俺のみ…だったら、こうするしかない!
「アリアンさん、俺が目的なんでしょ?だったら、正々堂々一対一で勝負と行きましょうか!」
「ほほう、俺に一対一の真剣勝負を挑むか…威勢と勇気は認めてやっても良いが、あまり俺を甘く見るなよ?でないと…お前を生きたまま確保出来なくなるかもしれないしな?」
おぉっ…!?この濃度が高い殺気が籠ったオーラ…ロリアン達よりも楽しめる戦いになりそうだ!
「それはこっちの台詞だ、馬鹿野郎」
「なんだと?」
「俺は…仮にもアンタ等サイドの神様やってるサファイアルさんの弟子なんだよ?つまり、アンタが考えている程…俺は弱くない、撤回しろよ、さっきの言葉…!!」
俺も濃度が高い殺気が籠ったオーラを放った。
「ほほう…俺を目の前にしてその余裕そうな態度…蛮勇ではなさそうだな?」
「そっちこそ、ただの青年には見えませんね?」
「セイバー君、本当に一人で戦うんですかい?」
「えぇ、貴方達は俺が負けたらすぐに逃げてください。無駄な犠牲を生まない為にも…」
「分かった、絶対に勝って来いよ?」
「はい、俺の名に懸けて…無様な姿は見せません!」
俺は右手にダイヤの剣、左手に変色剣を構えてアリアン目掛けて突っ込んだ。
「『神剣・クロニカル・一の技〈斬〉』!」
「ぐおぉっ!?」
「まだまだぁ、『二の技〈砕〉』!」
「なかなか面白い戦いになりそうだ…そりゃサファイアル様がこんなにも欲しがる訳だ。この勝負…全力を以って相手するしかないみたいだな?」
(アリアン、セイバーの右腕を斬り飛ばす)
「ぐぅぅっ!?」
「もらったぁ!!」
マズい…体勢が整っていない上に右腕を失った…このままだと俺はアリアンに心臓を一突きされてしまう…そう思ったが、俺の体に不思議な力が走った。
(セイバーの右腕が復活する)
「何ぃっ!?斬ったはずの腕が再生するだと!?」
「何かよく分からんが…アンタを倒すだけだ!」
俺はさっき起きた現象に驚くアリアンの間合いに入り、胸部を変色剣で一閃した。
(アリアンの胸部が斬られる)
「ぬぐぅうわぁぁぁー!?」
「これでチェックメイトだ…」
(アリアン、その場に倒れる)
全く…戦場では人の命など儚い物なんだな?たった一瞬油断しただけで狩り取られてしまうなんて…しかし、サファイアルさんの下部だからもっと強い奴を想像していたが、案外あっさり倒せてしまうなんて…俺がそう思い、奴の遺体を処理しようとした時だった。
『アリアン君?こんな所で死んでもらっては困ります…しかし、隙があったとはいえ…アリアン君を一閃で倒しきってしまうとは…流石はセイバー君といった所ですね?』
「この声は…!?」
「はい、私です。サファイアルですよ?」
奴の遺体からサファイアルさんが現れたのだ。意外な展開で驚きが隠せなかったが、今はそんな感傷に浸っている場合ではない。彼から聞き出さなくてはならない、この騒動を引き起こした理由を…
「サファイアルさん…何でこんな事を…貴方はずっと味方だと信じていたのに…」
「心外ですね…私は一言も君の敵になったとは言っていませんよ?」
「でも、この世界を悲しみで包み込んで滅亡させようとしているって…」
「あぁ、ノーレルさんに聞いたんですね?」
「えぇ、それを聞いた時…心臓がギュッと引き締められましたよ。貴方は頭のネジは外れていましたが、こんな事をするような人ではないと信じていたのに…」
「理由…聞きたいですか?」
「え…?」
俺がそう言うと、サファイアルさんは俺にこう理由を述べた。
「君は…ミリアに聞いたと思いますが、この世界に選ばれし存在です。最初はそんな存在を戦わずして手に入れる事が出来たんですから、こんな事する必要はないと思っていましたが…私の性欲が、それを許さなかったんですよ?」
「せ、『性欲』?貴方と俺は男、同性愛者ではないと俺に説明しましたよね?」
「いいえ、私は男ではありません…」
そう言うと、サファイアルさんは上着を徐に脱ぎ始めた。そして、脱いだ後に見えた体は…
(サファイアル、女の胸を曝け出す)
「これが…私が女である証拠です」
「おぉ…!?まさか、性別詐称していたとは…しかし、俺を性的にも手に入れたいからってこんな事引き起こすのは筋違いではないんですか?」
「筋違い…?」
「え?」
俺がそう言い切ると、サファイアルさんは怒りと嫉妬の感情を表に出してこう叫んだ。
「セイバー君にはローズ君とメリア君、そしてランガ君の三人の彼女が居る!これは何があっても許せない事案です!私はこんなにも君の事を愛しているのに、何で分かってくれないんです!?初めて出会った時も、接客業務を教えてあげた時も、〈邪王四皇聖〉との戦いの時も…私は君の事しか考えていなかった!それなのに、君は他の女に目移りして…乙女の心を理解出来ないんですか!?私はいつ何時も君の事以外考えていなかった、君以外の人間が死んでも構わないと思っていた、それなのに…何で君は気付いてくれないんですか?私は君の事を狂う程愛しているのに…!」
「サファイアルさん…」
「私の事を愛してくれなかった君が居る世界を許せない…そうです、こんな世界…デリートして再構築すれば良いんです!そうして、君が私の事しか考えられない世界線を築けば、私と君は永遠に結ばれる…だから、この世界を悲しみに包み込んで滅ぼそうとするんです。私の考えは間違っていますか?」
「……………っ!?」
「ん?どうしたんですか、もしや…今更私の魅力に気付いたんですか?」
俺は怒りを堪えるので精一杯だった。そのくらい、彼の考えが自分勝手過ぎたのだから!
「ふざけんじゃねぇよ、愛されないだけで世界を滅ぼす?頭のネジが飛んでる人間もそんな馬鹿みたいな計画は企てねぇよ!アンタが俺の事を愛している事は理解した…だがな?何があっても、自分の私情に他人を巻き込む事は神であるアンタでも絶対にしちゃいけないんだよ!そんな事する奴の愛なんか一生結ばれねぇよ!そもそも、アンタは俺に恋のアプローチの一つでもしたか?」
「それは…」
「あぁ、そうさ?アンタは俺に一切恋のアプローチなんかしていない!恋しているから話し掛けにくい事は理解出来るがな、あの三人は初対面の俺に自分なりの想いで必死に頑張ってアプローチしたんだよ!努力した奴等の幸せをアンタなんかに奪われる筋合いはねぇ、良いか?アンタがやっている事は恋敵を負かす様な事じゃねぇ、自分勝手の身勝手な愛で世界を滅ぼすテロリストそのものなんだよ!」
「セイバー君…」
「今すぐこんな事止めて俺達の元へ帰って来てください。今ならまだ引き返せる、何なら口封じをしても良いんですよ?」
「自分勝手の身勝手な愛…?ふざけているのはそっちの方ですよ、私はこんなに君を愛しているのに!!」
「サファイアルさん!?」
俺がそう声を掛けた時には、サファイアルさんは青い炎を纏って辺りを焼き尽くしていた。
「そうですか…君はこんなに私が尽くしても拒否するんですね?酷いですよ、私は…殺したくない君を殺さないと…愛が成就しないなんて…神様は何故こんな仕打ちをするんでしょう?10000年前に少し…ほんの少し…あんな事しただけで、こんな残酷な罰を受けさせるなんて…神の名も汚れているんですね?」
「あぁ…これはマズい…」
「ノーレルさん?彼は今どうなってるんですか?」
俺がそう聞くと、ノーレルさんは顔色を変えて俺にこう答えてきた。
「あれだけあの人を敵に回すなと言ったのに…まぁ、あんな事言われたら、そりゃあんな言葉を掛けたくもなりますねぇ?」
「まさか、あの人って…!?」
「そう、サファイアルさんは少し愛がズレていましてね?恋人に強く拒否されると…」
(サファイアル、炎の獣と化す)
「アハハハハはハハハハハハハはハハハハハハハはハハハハハハハはハハハハハハハはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」
「そう…〈哀〉の神と化すんですよ?」
「こ…これが…〈哀〉の神…!?」
「セイバー君…セイバー君…セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君!!」
おいおい…恋の力はこんなにも強大な物なのか?このままだと、たぶん俺でも死ぬ。さて、どうしたものか?この場に居るのは、俺とリンさんとノーレルさんの三人。戦えるのは俺だけだし…ここは、腹を括るしかないな?俺は覚悟を決めて迫り来るサファイアルさんに向かってあの技を付与して突っ込んだ。
☆俺は我武者羅にサファイアルさんに攻撃を与えていた。しかし、流石は〈哀〉の神の攻撃…下手すれば確実に死ぬぞ?しかも、あの人は俺に強い恋心を抱いているみたいだし…全く、モテる男は辛いんだな?
「サファイアルさん、もう止めましょうよ?こんな事しても何も良い事には繋がりませんよ?」
「いいえ…もう立ち止まれません!君を殺して、永遠に私だけの物にする!その為なら何だってやってみせる、それだけです!」
やはり話し合いで解決するのは不可能か…こうなったら、無力化させるしか方法はなさそうだ。それに、ぶっつけ本番だが…あの技を使えるチャンスでもある。大船に乗ったつもりで戦おう、そして、この惨劇をここで止めてみせる!俺はサファイアルさんから一定の距離を保ち、あの技を放とうとしていた。
「フフフ…どれだけ強い技を放とうと意味はありません。だって、私は最強ですから!」
「その強気もいつまで続くんですかね?」
よし、エネルギーは充分に溜まった。あとは彼に向けて放つだけだ…
「サファイアルさん…残念ながら、俺は貴方を好きにはなれません。だって、貴方の事は恋人としては見れない、貴方は大切な師匠なんですから!」
「ま…まだ私を好きになってくれないんですね…」
俺は技を放つ前に更に激昂した。
「好きであろうがあるまいが、そんな事はどうでも良いんだよ!好きでなくても愛情は育まれる、アンタは恋が愛情だと勘違いしているみたいだからここではっきりと言っておくよ…俺にとっては恋人も親友も仲間も同じくらい大切な存在だと思っている!こんな俺を認めてくれた大事な人達だ、そうしてくれた皆を甲乙付ける事なんか出来るか、アンタの愛情は本当の愛情じゃない、愛情を騙った狂人の身勝手な思いに過ぎないんだよ!」
「あぁ…何で…何でだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
俺の言葉でサファイアルさんは更に炎の範囲を拡大した。しかし、さっきの時間稼ぎでだいぶ精度を合わせる事が出来た。準備万端、いつでも発射可能だ!
「サファイアルさん…この一撃で終わりにします!」
「あはははははははは!!」
俺は両手に持っている剣を一つに合わせ、先端に魔力を籠めた。そう、これは先程習得した「全属性魔法・裏」の全属性の魔力を剣先に集中させ、一気に放つと言った物だ。名前は…「全攻撃【フル・アタック】」とでも名付けようか?さて、そんな事を思っている間に準備は出来たみたいだ。では、どうか死なないでくださいよ?サファイアルさん!
「喰らえぇっ!『全攻撃【フル・アタック】』!!」
「なっ…!?」
(セイバーの攻撃がサファイアルに直撃する)
「ぬぅわあぁぁぁぁー!?」
「ここで…止めてみせる…この世界を…守る為に!!」
俺は最後まで力を緩めなかった。全ては、サファイアルさんを止める為に…
「ぬぅおぉぉぉぉ!!」
「ぐぅぅぅっ…!?しかし、今回は身代わりがある…私も運が良いですね?」
何だ?手応えが急に弱くなったのか?俺はある程度技を出力してからサファイアルさんが居た場所へと向かった。すると、そこにあったのは…
(アリアン、焼死体となって発見される)
なんと、先程倒したアリアンの死体が残されていて、サファイアルさんの姿がなかったのだ。これは一体どういう事だ?俺が疑問を抱えていると、近くにノーレルさんが現れ、俺にこう説明してきた。
「恐らくは…アリアンさんの遺体を盾にして、サファイアルさん自身は転移魔法でも使って逃げたんでしょうね?」
「逃げた…だと!?」
「えぇ、今回でサファイアルさんを止める事は叶わなかったと…あの馬鹿は何を考えているんでしょうかね?」
「転移魔法…それを使えるのはこの世界で一握り、私も使えるがあまり見かけない物だぞ?それを、あの狂人は容易に使いこなしていたとでも言うのか?」
「えぇ、彼は腐ってても〈獣仁志・創神〉、あの程度の魔法は使えない方がおかしい話でっせ?」
マ、マズいな?あの化け物をここで始末出来なかったという事は、また何処かで見知らぬ街が襲撃を受けると言う事…もしそんなこと起こってみろ、世界が滅亡の道を辿るだけだぞ!?
「あぁ、それと剣が折れていますよ?」
「へ?」
ノーレルさんにそう言われ、左手に握っていた変色剣を見ると…
(変色剣が根元から折れてしまっている)
変色剣が綺麗に折れてしまっていたのだ。まさか、さっきの攻撃で耐久値が0になってしまったのか!?まぁ、仕方ないか…だって初めて使う裏属性の魔法を付与した剣撃だもん、そりゃ折れても仕方ないだお?そんな訳で、サファイアルさんの最初の刺客…あれ?何か忘れている気が…
「お、おいぃ…俺の事、忘れてねぇかぁ…?」
俺は少し息のあるアリアンの首を掻っ切った。理由はあれどコイツも野放しにしていたら危険だ。少しでもリスクは避けていかないと…さて、サファイアルさんを止める所へはまだ行けそうにないし…暫くは気長にその「刺客」を倒す事に集中しよう。そうだ、きっとそうした方が良いに決まっている!
「許さない…………許さない許さない…………ゆ・る・さ・な・い・!」
ここでもセイバーに殺意を抱く者が居たのだった。
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