第八章 〈哀〉の神とその下部達 第三話 〈哀〉の神の降臨、そして少年は覚醒する

おいおい…まさかサファイアルさんの下部がもう来てしまうなんて、オラドキドキすっぞ!?俺の息子とア〇ルが大雨になっておりまぁーす!!




「どうした?セイバー・クラニカル、ズボンが膨らんでいるぞ?」


「ほっとけぇっ(恥)!!」




さて、ここに居るのは俺とリンさんとノーレルさんの三人…相手の実力が分からない以上、無闇に突撃するのはリスクがある…だが、二人は武器を持っていない、武器を持っているのは俺のみ…だったら、こうするしかない!




「アリアンさん、俺が目的なんでしょ?だったら、正々堂々一対一で勝負と行きましょうか!」


「ほほう、俺に一対一の真剣勝負を挑むか…威勢と勇気は認めてやっても良いが、あまり俺を甘く見るなよ?でないと…お前を生きたまま確保出来なくなるかもしれないしな?」




おぉっ…!?この濃度が高い殺気が籠ったオーラ…ロリアン達よりも楽しめる戦いになりそうだ!




「それはこっちの台詞だ、馬鹿野郎」


「なんだと?」


「俺は…仮にもアンタ等サイドの神様やってるサファイアルさんの弟子なんだよ?つまり、アンタが考えている程…俺は弱くない、撤回しろよ、さっきの言葉…!!」




俺も濃度が高い殺気が籠ったオーラを放った。




「ほほう…俺を目の前にしてその余裕そうな態度…蛮勇ではなさそうだな?」


「そっちこそ、ただの青年には見えませんね?」


「セイバー君、本当に一人で戦うんですかい?」


「えぇ、貴方達は俺が負けたらすぐに逃げてください。無駄な犠牲を生まない為にも…」


「分かった、絶対に勝って来いよ?」


「はい、俺の名に懸けて…無様な姿は見せません!」




俺は右手にダイヤの剣、左手に変色剣を構えてアリアン目掛けて突っ込んだ。




「『神剣・クロニカル・一の技〈斬〉』!」


「ぐおぉっ!?」


「まだまだぁ、『二の技〈砕〉』!」


「なかなか面白い戦いになりそうだ…そりゃサファイアル様がこんなにも欲しがる訳だ。この勝負…全力を以って相手するしかないみたいだな?」




(アリアン、セイバーの右腕を斬り飛ばす)




「ぐぅぅっ!?」


「もらったぁ!!」




マズい…体勢が整っていない上に右腕を失った…このままだと俺はアリアンに心臓を一突きされてしまう…そう思ったが、俺の体に不思議な力が走った。


(セイバーの右腕が復活する)




「何ぃっ!?斬ったはずの腕が再生するだと!?」


「何かよく分からんが…アンタを倒すだけだ!」




俺はさっき起きた現象に驚くアリアンの間合いに入り、胸部を変色剣で一閃した。


(アリアンの胸部が斬られる)




「ぬぐぅうわぁぁぁー!?」


「これでチェックメイトだ…」




(アリアン、その場に倒れる)


全く…戦場では人の命など儚い物なんだな?たった一瞬油断しただけで狩り取られてしまうなんて…しかし、サファイアルさんの下部だからもっと強い奴を想像していたが、案外あっさり倒せてしまうなんて…俺がそう思い、奴の遺体を処理しようとした時だった。




『アリアン君?こんな所で死んでもらっては困ります…しかし、隙があったとはいえ…アリアン君を一閃で倒しきってしまうとは…流石はセイバー君といった所ですね?』


「この声は…!?」


「はい、私です。サファイアルですよ?」




奴の遺体からサファイアルさんが現れたのだ。意外な展開で驚きが隠せなかったが、今はそんな感傷に浸っている場合ではない。彼から聞き出さなくてはならない、この騒動を引き起こした理由を…




「サファイアルさん…何でこんな事を…貴方はずっと味方だと信じていたのに…」


「心外ですね…私は一言も君の敵になったとは言っていませんよ?」


「でも、この世界を悲しみで包み込んで滅亡させようとしているって…」


「あぁ、ノーレルさんに聞いたんですね?」


「えぇ、それを聞いた時…心臓がギュッと引き締められましたよ。貴方は頭のネジは外れていましたが、こんな事をするような人ではないと信じていたのに…」


「理由…聞きたいですか?」


「え…?」




俺がそう言うと、サファイアルさんは俺にこう理由を述べた。




「君は…ミリアに聞いたと思いますが、この世界に選ばれし存在です。最初はそんな存在を戦わずして手に入れる事が出来たんですから、こんな事する必要はないと思っていましたが…私の性欲が、それを許さなかったんですよ?」


「せ、『性欲』?貴方と俺は男、同性愛者ではないと俺に説明しましたよね?」


「いいえ、私は男ではありません…」




そう言うと、サファイアルさんは上着を徐に脱ぎ始めた。そして、脱いだ後に見えた体は…


(サファイアル、女の胸を曝け出す)




「これが…私が女である証拠です」


「おぉ…!?まさか、性別詐称していたとは…しかし、俺を性的にも手に入れたいからってこんな事引き起こすのは筋違いではないんですか?」


「筋違い…?」


「え?」




俺がそう言い切ると、サファイアルさんは怒りと嫉妬の感情を表に出してこう叫んだ。




「セイバー君にはローズ君とメリア君、そしてランガ君の三人の彼女が居る!これは何があっても許せない事案です!私はこんなにも君の事を愛しているのに、何で分かってくれないんです!?初めて出会った時も、接客業務を教えてあげた時も、〈邪王四皇聖〉との戦いの時も…私は君の事しか考えていなかった!それなのに、君は他の女に目移りして…乙女の心を理解出来ないんですか!?私はいつ何時も君の事以外考えていなかった、君以外の人間が死んでも構わないと思っていた、それなのに…何で君は気付いてくれないんですか?私は君の事を狂う程愛しているのに…!」


「サファイアルさん…」


「私の事を愛してくれなかった君が居る世界を許せない…そうです、こんな世界…デリートして再構築すれば良いんです!そうして、君が私の事しか考えられない世界線を築けば、私と君は永遠に結ばれる…だから、この世界を悲しみに包み込んで滅ぼそうとするんです。私の考えは間違っていますか?」


「……………っ!?」


「ん?どうしたんですか、もしや…今更私の魅力に気付いたんですか?」




俺は怒りを堪えるので精一杯だった。そのくらい、彼の考えが自分勝手過ぎたのだから!




「ふざけんじゃねぇよ、愛されないだけで世界を滅ぼす?頭のネジが飛んでる人間もそんな馬鹿みたいな計画は企てねぇよ!アンタが俺の事を愛している事は理解した…だがな?何があっても、自分の私情に他人を巻き込む事は神であるアンタでも絶対にしちゃいけないんだよ!そんな事する奴の愛なんか一生結ばれねぇよ!そもそも、アンタは俺に恋のアプローチの一つでもしたか?」


「それは…」


「あぁ、そうさ?アンタは俺に一切恋のアプローチなんかしていない!恋しているから話し掛けにくい事は理解出来るがな、あの三人は初対面の俺に自分なりの想いで必死に頑張ってアプローチしたんだよ!努力した奴等の幸せをアンタなんかに奪われる筋合いはねぇ、良いか?アンタがやっている事は恋敵を負かす様な事じゃねぇ、自分勝手の身勝手な愛で世界を滅ぼすテロリストそのものなんだよ!」


「セイバー君…」


「今すぐこんな事止めて俺達の元へ帰って来てください。今ならまだ引き返せる、何なら口封じをしても良いんですよ?」


「自分勝手の身勝手な愛…?ふざけているのはそっちの方ですよ、私はこんなに君を愛しているのに!!」


「サファイアルさん!?」




俺がそう声を掛けた時には、サファイアルさんは青い炎を纏って辺りを焼き尽くしていた。




「そうですか…君はこんなに私が尽くしても拒否するんですね?酷いですよ、私は…殺したくない君を殺さないと…愛が成就しないなんて…神様は何故こんな仕打ちをするんでしょう?10000年前に少し…ほんの少し…あんな事しただけで、こんな残酷な罰を受けさせるなんて…神の名も汚れているんですね?」


「あぁ…これはマズい…」


「ノーレルさん?彼は今どうなってるんですか?」




俺がそう聞くと、ノーレルさんは顔色を変えて俺にこう答えてきた。




「あれだけあの人を敵に回すなと言ったのに…まぁ、あんな事言われたら、そりゃあんな言葉を掛けたくもなりますねぇ?」


「まさか、あの人って…!?」


「そう、サファイアルさんは少し愛がズレていましてね?恋人に強く拒否されると…」




(サファイアル、炎の獣と化す)




「アハハハハはハハハハハハハはハハハハハハハはハハハハハハハはハハハハハハハはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」


「そう…〈哀〉の神と化すんですよ?」


「こ…これが…〈哀〉の神…!?」


「セイバー君…セイバー君…セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君セイバー君!!」




おいおい…恋の力はこんなにも強大な物なのか?このままだと、たぶん俺でも死ぬ。さて、どうしたものか?この場に居るのは、俺とリンさんとノーレルさんの三人。戦えるのは俺だけだし…ここは、腹を括るしかないな?俺は覚悟を決めて迫り来るサファイアルさんに向かってあの技を付与して突っ込んだ。

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