第八章 〈哀〉の神とその下部達 第二話 「裏」の魔法と〈哀〉の神の刺客

さて、これからどうしたものか…ノーレルさんの言っている事を真とするなら、あと半年後にはサファイアルさんが世界を滅亡へと導くんだよな?それまでに何とか出来る事は何とかしないとな…俺がそんな事を考えている時だった。




「久しいな、セイバー殿?」


「貴方は!?」




俺の目の前に現れたのは、あの世界で会ったリンさんだったのだ。




「どうして貴方がここに?」


「いや、久し振りに団長殿の顔が見たくなってな…お出かけの所悪いが、お前の店に連れて行ってはくれないか?」


「い、良いですが…今はそんな悠長な事言ってる場合じゃないんですよね?」


「それはどういう事だ?」


「実は…」




俺はリンさんに今起きようとしている事態を説明した。




「なるほど…〈獣仁志・創神〉がこの世界を滅亡へ導こうとしているのか。これは…私も見て見ぬフリは出来ないようだな?」


「え?つまり…」


「セイバー殿、暫くの間世話になるぞ?」




お…お姉さんポジキャラ来たぁー!!この作品では全く出て来なかったお姉さんキャラが、遂に俺の目の前に…感涙物だぞ、これは!!




「な、何やら変な視線を向けられている気がするが…そもそも、私はまだ9の子供だぞ?」


「え?」


「だから、まだ9の子供だと言っているんだ」


「えー!?」


『えー!?』


「えー!?」


『えー!?』


「えー!?」


『えー!?』


「えー!?」


『えー!?』


「『あぁぁぁーっっっ!?』」




う、嘘だろ…こんな妖艶な体を持つリンさんが…俺より年下なんて…嘘だぁ、噓だぁぁっっっ!!




「いやいや、その見た目、喋り方、そしてその魔力の規模…何処をどう取っても9歳の子供には見えませぇーんっ!!」


「いや、事実成人していないんだが…」


「年齢詐称も良い所ですよ、本当に9歳というなら証拠を出してくださいよ?」


「し、仕方あるまい…『加工・解除』!」




うおおっ!?いきなり濃度が高い霧が…!?その霧が晴れると、リンさんの姿が…


(リン、子供の体になっている)




「えー!?」


『えー!?』


「えー!?」


『えー!?』


「えー!?」


『えー!?』


「えー!?」


『えー!?』


「『えぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇ!?!?!?!?』」


「そんなに大きな声を出すな、恥ずかしいではないか…」




声まで子供になってるぅ!?ビフォーアフターの差がえげつない事になっとるぅ!?




「あぁ、この姿の事を他人に言ったら殺すからな?」


「ぎぃやぁああああああ!?いやぁああああああ!?」


「だから、そんなに大きな声を出すなと言ってるだろう?」


「あぁ、すみません…」


「はぁ…年下の私の方が大人びているとはどういう世界線なんだろうな、これは?」


「誰が子供だ、コラ?少し頭が良いからって調子に乗るなよクソガキ?」


「急に口が悪くなったな、何でだ?」


「まぁ、リンさんのレベルやステータスが全く分からない以上…一旦ウチに連れて行きましょうか!」


「ち、ちょっと待て…大人の姿に戻ってからに…」




俺はリンさんの手を引いて店まで駆けて行ったのだった。




 「ほほう…この人が置いてけぼりにされた後に出会った〈トライデント・キャラバン〉のメンバーのリンさんですかい?」


「えぇ、この人のお陰で俺はこっちに戻って来る事が出来たんです。さて、彼女にも事情は話してあります。それに、彼女を味方に付ける事が出来たのはこちらにとっては大きな戦力の確保に繋がったかと…」




俺はとりあえずノーレルさんにリンさんを紹介した。しかし、彼女のレベルやステータスはどうやって見たものか…あ、俺はサファイアルさんに「万里眼」を貰ったから、その魔眼を応用して彼女のステータスを見る事が出来るかもしれない!


※今まで彼がステータスを見れたのはサファイアルの力を借りていたからです。今はサファイアルは敵になり、魔力共有も出来ないので彼はこんな事を思っている訳です。


俺は「万里眼」の力を「覗く事」に焦点を合わせ、リンさんのレベルやステータスを見ようとした…すると、俺の手元に一枚の資料が出て来た。




「ほほう…これは『万里眼』で出す事が出来る『基礎情報紙』じゃないですかい?」


「ほう、私に出来る事がお前にも出来たんだな、セイバー殿?」


「何か名前が適当にその場で付けたネーミングセンスの欠片もない名前ですね?…………いいや、今はそんな事考える必要はないんだ。さて、リンさんのステータスを…」




俺は手元に現れた資料を見て、絶句した。理由は分かり易く次の文章に纏めるから見てくれ?


〇リン・ワールド


 ●レベル:1035


 ●所有魔眼


  ・無限眼 ・万里眼 ・絶眼 ・操眼


 ●固有スキル


  ・身体強化(人間族固有スキル)


  ・変化神化(獣人族固有スキル)


  ・万力(巨人族固有スキル)


  ・思考共有(妖精族固有スキル)


  ・覚醒(神族固有スキル)


  ・喰らう者(魔族固有スキル)


●所有スキル


  ・全属性魔法


   ・初級 ・中級 ・上級 ・超級


   ・爆級 ・轟級 ・絶級 ・神級


 ●オリジナル固有スキル


  ・無限至高(詳細不明)




ほほう…要するに魔法メインで戦う魔導士といった感じか。当たり前の様に全属性の魔法を使えるし、おまけに「絶級」の更に上の魔法の「神級」まで習得済みとか…流石はこの島一のパーティーの副団長を務めているだけの実力の持ち主だ。あ、俺ももしかしたら「神級」を使えるんじゃないか?そう思い、俺は自分自身のステータスが書いてある資料を出現させた。すると…




〇セイバー・クラニカル


 ●レベル:2050


 ●所有魔眼


  ・絶眼 ・強化眼 ・創眼 ・愛眼 ・破壊眼 


・万里眼 ・変眼 ・真眼 ・救眼


 ●固有スキル


  ・身体強化(人間族固有スキル)


・変化神化(獣人族固有スキル)


●所有スキル


 ・全属性魔法


  ・初級 ・中級 ・上級 ・超級 ・爆級 


・轟級 ・絶級 ・神級 ・滅級 ・創級


 ・全属性魔法・裏


  ・初級 ・中級 ・上級 ・超級


 ・爆級 ・轟級 ・絶級 


 ・物理スキル


   ・拳系 ・剣技系 ・弓弾系  


●オリジナル固有スキル


 ・天変創造(世界規模レベルの変化を与えたり、奪う事が出来る)


 ・万物喰吐(全てのスキルや体術を覚えたり上書きする事が出来る)


 ・仮想伝説(伝説級の存在と同様の力を一定時間使用する事が出来る)


 ・苛烈運命(創神に与えられ̪呪われた力。ある人物を好きになるまで永遠に死ねない)




おぉ………………!?何か前回見た時とはだいぶ様変わりしているステータスだな?全属性魔法の「神級」を使える事は確認出来たが、この…「滅級」と「創級」っていうレベルの魔法は何なんだ?まさか…人知を超えた力とか言うめんどくさい能力じゃあるまいな?しかも、「全属性魔法・裏」っていう魔法も使えるが、これに至っては謎塗れと言っても良いだろう。俺…普通の一冒険者だよね?こんなに強くなっちゃって大丈夫なんですかぁー?まぁ、良い。これでサファイアルさんとの戦いにおいて力強い存在に成り得た訳だし、暫くはこの「全属性魔法・裏」という魔法を扱える様に精進せねばならないな。




「あぁ、その『全属性魔法・裏』の魔法の使い方に関しては僕っちが直々に教えてあげるっすよ?僕っちは、その『全属性魔法・裏』の『滅級』まで習得済みですしねぇ?」


「丁度良過ぎるにも程って物があるでしょう?まぁ、習得出来ても使えないなら意味はありませんしね…」


「おいおい、俺もその話に混ぜてくれよ?」


「「誰だ!?」」


「おやおや…そんな強張らなくても良いんだぜ?」




俺がノーレルさんと話をしていると、後ろから突然何者かに話し掛けられた。俺とリンさんが後ろを振り向いて確認すると、そこには青いオーラを纏った青年が立っていた。




「お前は何者だ?普通の青年には見えぬ…」


「そうだね…簡潔に言うと、サファイアル様の刺客とでも言っておこうかな?」




サ、サファイアルさんの刺客!?もう滅亡の狼煙を上げたのかよ、あの人は!?いくら何でも早過ぎますよ、こちとら絶賛対策考え中なのにさぁ?




「お前…目的は何だ?」


「そうだね…これも簡潔に言うと、セイバー・クラニカル…君を捕らえに来た!」


「なるほど…俺を捕まえに来た訳か…しかし、名前も名乗らない奴に俺が捕まえられるのか?」


「おぉっと、そういえばそうだったね?俺の名は『アリアン・レクイエム』、崇高なる〈哀〉の神サファイアル様の忠実なる下部…とでも言っておこうかな?」




ここから、俺達の世界滅亡の危機を賭けた戦いが始まるのだった。

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