外伝 少年が罪を背負う理由 第三話 少年と少女が結ばれる。そして、悲劇が始まる

 三日後、俺の村では豊作を祈る祭りが行われていた。しかし、俺はその祭りには参加しなかった。理由は、また喧嘩になってしまうからだ。しかも、子供だけではない。良い齢した大人も俺に喧嘩を吹っ掛けて来るのだ。そんなハイリスクかつノンリターンな祭りなんか行っても損するだけだ。しかし、そういう訳にもいかなかった。


「ねぇ、セイバー?」

「何だ?言っておくけど、俺は祭りに行く気はないから…」

「そんな事言わなくてさ、大丈夫、私も一緒に行くからさ?」

「で、でも…行ったら君も喧嘩に巻き込まれる羽目に…」

「大丈夫よ、私…最強だから!」

「はぁ…分かったよ、でも…後悔はしないでよ?」


メリアさんに半ば強制的に祭りへと連れて行かれた。そして、そこに辿り着いた頃には…案の定、俺の周りに子供が武器を持ってやって来た。


「おい、セイバー?」

「この聖なる祭りに下賤な人間のお前が来るんじゃねぇよ、あぁん?」

「殺して、供養してやる!」

「はぁ…」


俺は面倒だったので、適当に殺気を辺りに放った。すると、俺を囲んでいた子供達は恐れ慄き、背後に居た大人達の後ろに隠れた。


「お父さん、セイバーが虐めるぅー!」

「助けてぇー!」

「アイツ等…!」

「落ち着け、初歩的な煽りに引っ掛かるな…」

「でも…」

「良い、こういうのはもう慣れてる」


すると、今度はボロボロに錆びた剣を持って大人達が俺を取り囲んだ。


「セイバァーくぅーん?お兄さん達の子供を虐めたねぇ~?」

「殺されたいのかなぁー?」

「いや、コイツは死刑だ、死刑!」

「この村の大人達…何でセイバーにだけこんなに冷たく接するの?」

「これもレベルの影響だよ…何の努力もしてこなかった人間の末路さ?」


俺がそう言い終えると、大人達は一斉に俺に襲い掛かった。


「死ねぇー!!」

「レベルが高くても、この数は流石に相手出来まい!」

「地獄を見せてやる!!」


圧倒的な数の利に酔いしれる彼等に俺はこう言い放った。


「一体いつから…俺がここに居ると錯覚していた?」


そう、俺は今…襲って来ている大人達の背後に居る。奴等が見ている俺は残像だ。俺は奴等が気付く前に全員の鳩尾に拳を叩き込んだ。


「ぐへぇえっ!?」

「がはぁあっ!?」

「脆い…大人って、こんなに劣悪で軟弱で小さい存在なんだな?」


俺が奴等にそう言葉を投げると、藻掻き苦しむ大人達の一人がこう俺に言葉を放った。


「クソッたれが…今回は負けを認めてやる…だが、次は絶対にお前をぶち殺す…何があってもだ!!」


そう言うヤツに俺はこう言葉を掛けた。


「あまり強い言葉を使うなよ…ただでさえ弱いのに、更に弱く見えるぞ?」

「なっ…!?き、貴様ぁー!!」


俺の言葉に激昂したのか、そいつは全身全霊を以って俺に襲い掛かった。だが、その攻撃も…

(セイバー、村の大人の攻撃を躱し、首筋に突きを入れる)


「ぐへぇえっ!?」

「雑魚は何処まで行っても雑魚だ…だが、心が綺麗で強い雑魚は好きだ。だからさ、お前みたいな心も体も汚くて弱い雑魚は見るだけで虫唾が走るんだよ?だから、もう二度と俺の目の前に現れるな?分かったな?」

「わ、分かりましたぁ…!?」


そう言うと、その男は気を失った。


「ひいぃぃっ!?」

「化け物め…こうなったら…ルルイさぁーん!」

「セイバーが暴れていますぅー、助けてくださーい!」

「アイツ等…まだセイバーを…!」

「君は下がってろ、大丈夫…俺は心が腐った奴には負けない。自分に正義の心がある限り俺は決して挫けない、それに…守らないといけない…君を守る為に、あんな相手なんかに負けないよ?絶対に、ね?」


俺がメリアさんにそう言葉を掛けていると、後ろから大きな足音が聞こえた。


「ルルイさん、コイツが僕達のお父さん達を…!」

「僕達を虐めた挙句、罪のないパパ達にも危害を…」

「大丈夫だ、坊主…お兄さんがアイツをやっつけるからね?」


なるほど、ガタイが良い男だ。奴がさっきあの餓鬼が言ってた「ルルイ」か…


「おい、クソガキ…?」

「何ですか、もしかして…俺にボコされに来たんですかぁ~?」

「きっ…貴様ぁー!!」


俺が軽く煽りを入れると、ルルイは俺に剣で鋭い攻撃を仕掛けてきた。


「おっと、危ない危ない…」


おいおい、ルルイが使っているのは魔物を討伐する時に使う「鉄の剣」じゃねぇか?生身の人間、しかも小さい子供相手に使う武器じゃねぇぞ、おい?だが、本気で殺しに来ているのなら好都合だ。

(セイバー、ルルイの横腹を蹴り抜く)


「ぐふぉおっ…!?」


俺も形振り構わず戦える!俺はモンスターを討伐する際に使う思考、「戦闘モード」に入った。子供相手に本気の武器で襲って来たんだ、それ相応の罰を与えてやらねばな!俺はまず、本気度5%でルルイの周りを駆け抜けた。


「何だ、この餓鬼…動きが速い…!?」

「どうした、おっさん?この程度のスピードも追えないとは、もう戦士引退した方が良いんじゃないか?」

「こんの野郎、調子に乗るのも大概にしろよ!」


俺のスピードを追うのを止め、辺りを剣で振り下ろす攻撃に切り替えて来た様だ。だが、それも想定の範囲を超えていない。俺は更に攻撃のスピードを上げた。今度は本気度8%だ!


「コイツ…!?まだ速くなるのか、こうなったら…俺も本気で行かせてもらうぜぇー!」


ルルイが剣を二本構えて攻撃してきた。よし、なんとかルルイに本気を出させる事が出来たみたいだな?これも計画通り…あとはアレをするだけだ!俺は一瞬でルルイの間合いに入り込み、睾丸に向けて蹴りを放った。


「ぎぃやぁああああああーっ!?」

「お前みたいな馬鹿の遺伝子は永久に消えてもらう!」


俺の渾身の蹴りはルルイに途轍もないダメージを与えたみたいだ。ルルイは痛みに耐えきれず、悶絶している。俺は悶絶する彼の頭の方に歩み寄り、炎属性の技で作った小さな火で彼のおでこを炙りながらこう言葉を投げた。


「おい、こんな小さな餓鬼にコテンパンにされた気分はどうだ?」

「てめぇ…卑怯だぞ!」

「『卑怯』…?何を言っているんだ、俺は正当な戦いに勝利しただけだ」

「俺は…お前を本気で殺そうとしていない、ただの遊びのつもりだったんだ!それなのに、お前は容赦なく俺のタマを…蹴り抜きやがって…許せねぇ…!」

「そうか、それがお前の言い分か…」


そう喚き散らすルルイのもう一つの睾丸も蹴り抜いた。


「ぎぃやぁああああああーっ!?」

「何が『お前を本気殺そうとしていない』だ?さっき俺に『俺も本気で行かせてもらうぜぇー!』とか喚いてた奴が言える台詞じゃねぇだろ、おぉん?」

「そんな事…言ってないぃっ…!!」

「悪い子には罰が必要だねぇ…?試しに膝を逆に曲げようか?」


俺は悶絶するルルイの右膝の関節を逆にへし折った。


「ぐわぁあああーっっ!?」

「おいおい、この程度で弱音を吐くとは…もっと虐められたいみたいだねぇ?」


更に左膝の関節も逆にへし折ってあげた。


「喜べ、俺からの最高のプレゼントだ!」

「うわぁぁーっ!?」

「そんなに大きな声で叫ぶなんて…そんなに嬉しいんだね?だったら、次は足の指を千切り取って…あ・げ・る・♪」

「ひぃぃっ!?」


おいおい、俺の本気はここからだというのに…もうちびり散らかしてやがる…


「何で…何で…こんな事するんだ!?俺達はお前に何もしていないのに!!」

「なんだと」


次の瞬間、奴の口から出て来たのは…あまりに醜悪で自己中心的な言葉だった。


「お前のレベルが高いのが悪いんだよ、子供は大人しく大人の言う事を聞いていれば良いんだよ!いくらレベルが高いからって調子に乗り過ぎなんだよ、だから殺すんだよ!この子達の成長にお前は必要ない、だから俺の取った行動も正当化出来る、悪いのはお前だセイバー・クラニカル!」


なるほど、それがお前達の理論家…だったら、こちらも容赦する必要はあるまい!


「だったら、お前が普通に生きている必要はないな?」

「え…?」

「俺がこんな事するのには理由があるんだよ、知りたいか?」

「何で…もう罰は受けた…だから…解放して…!!」


命乞いを始めるルルイに向けて俺はこう言い放つ。


「お前のレベルが低いから悪いんだよ、弱者は大人しく俺達強者の言う事を聞いていれば良いんだよ?年が上だからって調子に乗り過ぎなんだよ、だから壊すんだよ?俺の人生の過程にお前達腐った大人は必要ない、だから俺の取った行動も正当化出来る、悪いのはアンタだよ、ルルイ?」

「うわぁぁーっ!?」


なにを喚いている、これはお前の理論だろうが?さて、ここからどう調教してあげようかな?俺がそんな事を考えていると、ルルイは白目になって気絶した。おいおい、ここからがパーティーの本番なのに…


「さぁ…お前等もこうなる?」

「ひぃぃっ!?」

「に、逃げろぉー!!」

「この狂人が、覚えてろぉー!!」


俺を殺そうとした子供達は一目散に逃げようとした。だが、お前等…

(セイバー、子供達に超強力な殺気を放つ)


「「「うぅっ…!?」」」

「お前等さ…子供だから何しても許されるとでも思ってんの?大人が小さくなっただけの一人の人間だろうが、子供だからって調子乗って犯罪犯してんじゃねぇぞ?今回は長老の前に連れて行かせるだけだが、次…似た様な事しでかしたら…」


(セイバー、最大出力の殺気を子供達に向ける)


「もう命はねぇと思え(怒)?」

「ひぃぃーっ!?」

「ごめんなさい!許して!」

「『許して』…だと?」


俺は奴等の髪を引っ張りながら長老の居る家へと連れて行った。


「セイバー…あの人は…私達の村にとって…危険だ…」


 長老の家に悪さをした子供達を連れて行った後、メリアさんと二人で祭りの様子を見ていた。一難あったが、こうしてメリアさんと一緒にゆっくりと過ごす事が出来て何よりだ。


「セイバー?」

「何…!?」


(メリア、セイバーにキスをする)

な、何だ?いきなり俺に口付けを…


「んんっ…はふぅっ…ぅう~ん♡」

「…………君に言いたい事がある、良いかな?」

「良いよ…言ってみて?」


俺は長年抱えていた想いをメリアさんに伝えた。


「メリア・ルージュさん…貴方の事をずっと好きでした…将来、俺と結婚してください…よろしくお願いします!」


届け…俺の想いよ、彼女に届け…!


「良いですよ…私も…貴方がずっと好きでした…」

「…!!」

「ねぇ…キスの続き…しよ?」

「あぁ…」


こうして、俺はメリアさんと将来を共にする事を誓ったのでした。

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