外伝 少年が罪を背負う理由 第一話 運命の出会い

 皆は「罪」を背負う事についてどう考えているだろうか?俺はこう考えている…「全て仕方の無い事」だと、な?まぁ、この考えがズレている事は重々承知の事だ。だが、俺も好きでこの考えに至った訳ではない。少なくとも、あの事件が起こる前まではこんな考えは持とうとはしなかった。そう、俺の記憶に深い傷を作ったあの事件が起こるまでは…


─ 8年前 ─

 俺はセイバー・クラニカル、どこにでも居るごく普通の子供だ。しかし、生き方が他の子供と違っていたので、毎日同年代の子供から暴力や嫌がらせを受けていた。そんな俺の唯一の味方が両親と、もう一人いる。それは…


「セイバー君!」

「わわっ!?女の子が異性の体に毎日抱き付くんじゃありません!」


俺に背後から抱き付く特殊な挨拶をする…『メリア・ルージュ』さんだ。同年代の友達なんて一人も居なかった俺なのだが、この人とは一年前のあの日からの親友となった人だ。おっと、せっかくだし…その時の話をするか─


─ 7年前 夏のある日 ─

 俺はレベル上げの為に毎日村近くの森へと向かうのだが、今日は別の目的で森へと向かった。そう、その目的とは…


「ここなら自由に絵を描けるな、いつも邪魔してくる雑魚共もここまで来れまい!」


そう、俺の新しい趣味「絵描き」だ。いつも部屋に籠もる俺は魔法の創造以外にやる事が見つからないか探してみた。すると、何気なく描いていた数枚の似顔絵に目が行った。自分で言うのもなんだが、かなり上手く描けているじゃないか!もしや、これは新たな趣味の芽が出来たんじゃないか?そう思い、俺は毎日時間が空けば絵をひたすら描く様に過ごしてきた。そうして、自分の家の中にある物を全て描き尽くした俺は、外に出て絵を描く様になった。しかし、家の近くに絵を描きに行くと、毎回幼稚な子供が喧嘩を売ってくるので絵を描いている場合じゃない。なので、今日は誰にも邪魔されないこの森へと足を運んだという事なんだ。


「さぁーて…まずは開けたこの場を描くとするか…」


俺は「創造」で作った椅子を「収納」から取り出し、腰掛けて絵を描き始めた。それにしても、毎日モンスターを狩る為に通っていたこの森は、本当はこんなに温かい空気を感じるんだな?毎日血の雨を降らしていた俺を殴りたい!!そうして、一枚の絵を描き終えた俺は森の中にある異変に気付いた。


「何か居る…?」


何者かは分からないが、気配を感じる…敵意はなさそうだが、気を付けていた方が良いだろう。俺は念の為、辺りに殺気を籠めたオーラを出した。すると、それに怖気付いたのか…一人の人影が現れた。


「何者だ………って、女の子?」

「あ…あぁ…あぁぁ…」


てっきり山賊だと思ったが、違うらしい。俺の目の前に現れたのは猫耳の獣人族の女の子だった。しかも、だいぶ痩せ細っている…ついでに言うなら服も体もボロボロだ…


「君、何故ここに居る?ここは君みたいな力のない子供が来る場所ではない、お兄さんが一緒に安全な場所まで連れて行ってあげるから、手を貸して?」


俺は優しい表情で彼女に手を差し伸べた。すると、彼女の表情から緊張がなくなり、そのまま…


「うぇぇーん!!怖かったよぉー!!」

「お、おぉ…よしよし…」


いきなり感情が爆発したのか、俺に泣きじゃくりながら抱き付いて来た。もしや、余程辛い事を、酷い事をされたのだろうか?その恐怖感から解放され、緊張の糸が緩み、こうして俺に泣き付いて来たのだろう…


「お兄さんは…私に…ヒグッ…酷い事はしない…?」

「あぁ…君はもう、苦しむ必要はないんだからね?」

「うわぁぁーん(嬉)!!」


よし、ここは彼女の気が落ち着くまで泣いてもらうのが善処だろう。さて、これからこの子を家で引き取る事になるだろうが、どうしたものか…ウチの村は血気盛んな輩が多いからなぁ…見るからに純粋無垢なこの少女が生きれる世界とは到底思えない…


 そんなこんなで、俺は泣き止んで眠ってしまった彼女を抱き抱えながら村へと戻った。すると、案の定…


「おい、セイバー!」

「今日こそぶちのめす!」

「またお前等か?いい加減懲りて真面目にレベルアップしろよ?」

「うるさい!僕達はお前より年上だぞ、口の利き方がなっていないみたいだな!」

「だったら、何だと言うんだ(殺)?」


俺は取り囲む子供達に向けて強めの殺気を放った。すると、ほぼ全員の子供は気絶した。だが、一人だけ悠々と立っている子供がいた。


「お前…俺と戦え…」

「見るからに同い年には見えないけど…アンタ幾つなの?」

「12だ」

「4つも年が離れてるじゃねぇか…良い齢したアンタが俺みたいな餓鬼相手に大人げないと思わないのか?」

「思わん…お前は強くなり過ぎた、だからここで挫く!」

「なるほど…死にたいんだな?」


俺は抱き抱えていた女の子を「創造」で作ったクッションの上にそっと降ろして、目の前の大男と戦った。


「うらぁぁー!!」

「遅い…」

「えぇっ!?」


しかし、戦いは一瞬で終わってしまった。仕方ないよな、この年なのにレベルが120もあるんだから…


「ぐふぇえっ…」


俺は痛みで悶絶する大男の紙を掴み上げながらこう警告した。


「言い忘れていたんだが、俺は少し頭のネジが外れているんだ」

「えっ…!?」

「だからお前を再起不能にしないと俺の気が済まないんだよ?だから…大人しく嬲られような?そして、もう二度と俺の目の前に現れる事が出来なくなる様にしてやるからな?」

「ヒィィィーッ!?」


俺はその大男を完全に完全復活出来なくなるまで嬲った。仕方ないよな?だって、何もしていない無垢な年下の子供を恐怖に陥れたのだから。


 翌日、俺は彼女がゆっくり寝る事が出来る様に添い寝してあげた。


「むにゅぅぅっ…えへへ…」


見てるだけで癒される寝顔だ。それにしても、家で預かる事が出来て良かった。もし、他の家で引き取る事になった場合、何をされるか分からなかったので不安だった。だが、俺の両親は快く受け入れてくれた訳だし…これで、良かったのかな?


「むぅぅぅっ…んんぅっ…」


おや、起こしてしまったみたいだな?


「あっ………す、すみません…」

「何を謝っているんだい?」

「助けていただいた上に、ベッドもお借りしてしまって…」

「良いんだよ、君はもう家の家族の一員なんだからさ?」

「え…?」

「気にする必要はない、子供の俺が言うのも何だけど…子供が遠慮なんかするんじゃない、子供は自分のやりたいように生きるべきなんだ。そう俺の父が言っていたよ?」

「うぅっ…はいっ…ありがとう…ヒグッ…ございます…」

「うーん、でも一つ直してもらいたい所がある」

「何ですか?」

「俺と君は、もう赤の他人なんかじゃない。立派な家族の一人だ。だから、俺に敬語を使うのは禁止!」

「は…はい!分かったよ…えっとー、名前を聞いていなかった…」


おっと、まだ自己紹介がまだだったな?せっかく家族の一員になったんだから、名前は教えてあげないとな?


「俺は『セイバー・クラニカル』、この家の一人息子だった者だ。えっと、君の名前は何て言うのかな?」


すると、彼女は顔を暗くしてこう答えてきた。


「私に名前はないよ…私の家は…名前を付ける前に虐めるのが当たり前だったから…なので、セイバーさんに名前を付けてもらいたいな?」


な、なるほど…名付けか…いやいや、生まれてこの方一度もそんな事した覚えありませんっ!!でも、こんなキラキラした目で見つめられては、断る訳にもいかないし…うーん、名前は…


「よし、今から君の名前は『メリア・ルージュ』、メリアとでも呼ぼう!」

「あ、ありがとう!」


そう言うと、謎の女の子改めメリアは感謝の言葉を述べると、俺に抱き付いて…

(メリア、セイバーの顔を舌でペロペロと舐める)


「ちょっ…止めっ…くすぐったいよぉ…」

「はふっ…はふっ…」


まぁ、これで彼女が落ち着くならこれで良いだろう。それに、大事な家族のお願い事だ。いやでも受け入れたくなるのが普通だよね?俺は暫くメリアをあやしていたのだった。

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