第六章 神の剣士v.s〈獣仁志・創神〉の弟子 第四話 正義の断罪

 伝説の悪しき勇者二人と俺の戦いが始まった。さて、最近まで俺にフルボッコにされたバリカンは急成長を遂げ、かなり厄介だが…問題は父親の力だ。彼の情報は殆ど無いに等しい。さて、どう立ち回ろうか?


「低俗な獣人族の娘…ここで死ね!」


そう言うと、勇者の父親は俺に襲い掛かった。俺は間一髪で攻撃を剣で受けた。


「どうした?お主の力はそんなものか?」

「そっちこそ…まだ全力を出していない様ですね?本気を出さなくても勝てる様な雑魚じゃないですからね、俺は?」

「ほう、だったら…バリアン!」

「はい、お父さん!」


卑怯だな…勇者ともあろう者がか弱き獣人族相手に二対一で掛かって来るとは…だが、こうしてもらった方が色々と都合が良い。


「はぁ…失望したよ?」

「何だと」

「勇者ともあろう者が、ただのか弱き冒険者を相手に二対一で挑むなんて…勇者の名前が泣く…」

「くっ…息子までなく儂をも侮辱するとは…万死に値する!」


そう言うと、極悪人勇者親子は俺に鋭い斬撃で攻撃してきた。


「セイバー!?危ねぇぞ、避けろぉー!!」


しかし、俺は敢えて彼等の攻撃を生身で受けてやった。


「よし、これでアイツは死んだ」

「すべてはアイツが悪いんだよ、僕を愚弄したからな!」

「まだ…俺は死んでねぇぞ…?」

「「なっ…!?」」


この俺が…こんなドロドロに腐った斬撃如きで死ぬかよ、馬鹿野郎…しかも、このダメージは想定の範囲内だ。俺は驚愕する勇者親子に向けてこう言い放った。


「大体さ?お前等勇者は民を守り、悪を討つのが責務じゃなかったのか?」

「あぁん?んなもん知るかよ、ばぁーか!」

「何だと?」


その言葉に激昂する俺に向けて、勇者の父親は続け様にこう喚き散らした。


「民を守る?そんな事どうでも良い、儂等が幸せであればそれで良い。そもそも、あんな自分の身も守れない雑魚共を守って何になる?どうせ助けても感謝の言葉だけで何も対価を払わない、そんな不作法な奴等に苦しみを与えるのが儂等の責務なんじゃないのか?お主もなかなかに強い、だったら分かるんじゃないのか?弱き者を守る時代はもう終わった。これからは、強き者が生き残り、弱き者は滅びる、それが今の時代じゃ!」


なるほど、お前等の意見はよぉーく分かった。だから─

(セイバー、勇者親子のアキレス腱を切る)


「「ぐぎゃぁー!?」」

「もう喋るな…耳障りだ」

「き、貴様ぁ…私達にこんな事して、ただで済むと思うなよ!?」

「儂等は勇者、神々に選ばれし存在だぞ!?」

「あぁん?んな事どうだって良いんだよ?」


俺は痛み藻掻き苦しむ勇者親子の頭を足で踏み潰しながら奴等に激昂した。


「お前等は…力を、権威を…何だと思ってんだ?」

「自分の…為だ…」

「儂等の特権…じゃぞ!」

「いいや違う…全ては弱き者を助ける為、強きを挫く為だろうが!お前等は強者でも何でもねぇ、権力に溺れた中身のねぇ脆弱者だ!良いか、本物の強者ってのはな…誰も辿り着けねぇくらい貴重な存在なんだ!誰にもなる事が出来ないから、民達弱者は頑張るんだよ!守りたい存在の為、自分の夢の為、皆何かの使命を以って毎日を生きているんだよ!それを、苦労も努力も何も知らねぇお前等は当たり前の様に奪う…被害者の気持ちを考えられるならそんな事しねぇよ…」

「な、何を言うかと思えば…」

「そんな下らない綺麗事の為に私達に説教を…思い上がりも良い所だぞ!」


俺は反論する二人の膝関節を逆に曲げた。


「「ぎぃやぁああああああ!?」」

「黙れ…被害者の気持ちも何も考えず、ただ私利私欲の為に罪のない民から幸せを当たり前の様に奪い去る。お前等も職業は違えど同じ人間だろう?だったら何故分からねぇんだ?」

「わ、分かるものか!」

「大体、何も奪われていないお前が言えた台詞じゃねぇだろうが!」

「『何も奪われていない』…かぁ?言っておくが、実は俺も勇者に家族を殺されているんだ」

「ふん、弱者に相応しい末路だ」

「黙れ、もう何も喋るな!」


俺は父親の勇者のもう一方の膝関節も逆に曲げた。


「ぐわぁあああーっ!?」

「大体、何故弱者だから奪われて当然だと思っている?立場が低ければお前等権力者が何をしても許されるとでも思っているのか?」

「そうだ、それの何が間違っているとでも…」

「お前も喋るな」


俺はバリカンも同じ様に膝関節を逆に曲げた。


「うわあぁぁぁぁぁぁぁーっ!?」

「お前等に一言言っておく…強者だから何だ?立場が違うだけで、中身は同じ生き物だ。そんな当たり前な事も分からないお前等の方が強者から奪い去られるべきだ。勇者という選ばれた存在になったからって強い言葉ばかり使うんじゃない、殺したくなるから?」

「「ひぃいっ!?」」


さて、これで二人の無力化は完了した。あとは…


「喜べ、下種共…お前等がお望みな地獄の時間の始まりだぞ?」

「「ひぃいっ!?」」

「お前等が踏み躙った弱き民の怨恨、憤怒…その全ての悪行をここで償ってもらわないとな?」


そう、俺はコイツ等を生かして帰すつもりではない。「万里眼」で奴等の頭の中を覗いてみたが、少なく見積もっても1500人以上の罪なき人間を殺している。しかも、これも「万里眼」の能力なのか、奴等の周りに物凄く濃い恨みを持った魂達が纏わり付いている様に見える。だったら、この魂達の為にもここで断罪しておかないと示しがつかない。


「さぁ、バリカン…じゃなかったバリアン?まずは手の指を一本ずつ折っていくからな?」

「え…?」


怯えるバリカンの事等気にする事もなく、俺はバリカンの手の指を強い力で一本ずつへし折っていった。


「いだぁぁぁーいっ!?」

「おいおい、この程度の地獄で弱音を吐くんじゃないよ?本番はここからだというのに、そんなに喚くという事は…メインディッシュをお望みの様だな?」


俺は土属性の魔法で作った重石をバリカンの膝に置いた。しかも、一度に十枚も…


「いだだだだだ!?重い重い重いぃー!?」

「どうだ?これで少しはお前から全てを奪われた人間達の痛みが分かったか?」

「はいぃっ!!分かりました…だから、助けてぇー!」


バリカンは涙を流しながら俺に命乞いを始めた。しかし、俺の答えはもう決まっている。


「言っておくが、俺は強者だ。強ければ何をしても許されるんだろ?それに、俺も勇者なんだ。気分を害する害虫は駆除しないとな?さぁ、俺の為に死んでくれ?」

「あぁぁぁぁ~!?」


そうして、暫く経つと…バリカンは息を引き取った。


「バ、バリアーン!?」

「さぁ、次はアンタだ…まずは手の指全ての爪を剝がさせてもらうからな?」


俺はそう言うと、勇者の父親の手の指の爪を全て無理矢理引き剝がした。さぁ、ここからが断罪の真骨頂だ。


「ロデオンさん?コイツは貴方がケリを付けてください」

「お、俺が…良いのか?」

「だって、コイツがラウアーさんを殺したんですよね?」

「だけど…俺には人殺しは出来ねぇ…」

「そうですか…」


俺はロデオンさんの肩を軽く叩き、こう話し掛けた。


「良い選択です。貴方みたいな善人は罪を重ねる必要はない、それに…」

「ん?」

「俺は決めたんです、罪を背負うのは俺だけで良いって…」


俺はそうロデオンさんに言った後で、勇者の父親の首を斬り、鮮血の雨を浴びた。


「よし、これで問題は無事解決と言う事で…」


俺はこうして、勇者による侵略を無事に防ぎ終えて、一仕事を終えた。


「セ、セイバー?さっき、お前…『罪を背負うのは俺だけで良い』って言ってたよな?」

「えぇ、そうですか?」

「何で、そんな事を言ったんだ?」

「貴方には話しても良いのかもしれませんね?俺の過去に何があったのかを…」

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