第六章 神の剣士v.s〈獣仁志・創神〉の弟子 第三話 最強の剣士の師匠
ま、まさか…この町でバリカンと再会するとは思わなんだ。一体何故俺がこの町に居る事が分かったんだ?
「まず、セイバー…」
「何だ?」
「お前に決闘を申し込む、真なる力を解放した僕…私と今度こそ決着を付けようじゃないか?」
「いやいや、決着もなにも…前回も前々回も、俺がフルボッコにしただろ?良いかバリカン、お前との戦いは、俺が全戦全勝だ!事実のない勝利を作るなよ、弱く見えるぞ?」
俺はバリカンに微量の殺気を放った。さて、いつものバリカンなら怯えて逃げるところだが…今回は全く物怖じていない!おぉ、成長したな、バリカン!いやいや、そんな事はどうでも良いんだ。
「俺と決闘する為にここまで来たのか?」
「あぁ、僕…私は勇者、民の希望となるべき存在だ…その役目を果たす為には…お前に決闘で勝利する必要がある!」
「ほう…ようやく勇者みたいな事を言う様になったんだねぇ~?お兄ちゃん感激だよぉ~?」
「煽るな…確かに、お前の言う通り私はお前に二度も惨敗した…だが、神より賜ったこの力さえあれば…超人化したお前を遥か凌ぐ事が出来る…」
『「神」…サファイアルさんの生みの親か?』
「さぁ、今度こそ私が勝つ!」
さてさてさーて、これは面倒な事になってきましたね?髪から賜ったか何だか知らんが、人がせっかく戦いを楽しんでいたのに、それを見事に邪魔されたんだ…それ相応の罰は受けるべきだよなぁ…あぁん?
「セイバー、まずは俺がコイツと戦う」
「ロデオンさん!?コイツは俺の不始末、アンタには関係ない事だ、俺が戦いますよ!」
「いいや、前々から思ってたんだ…」
すると、ロデオンさんは心の底から溢れ出る憎悪をバリカンにこれでもかと放った。
「セイバー…お前にはこの話をしても良いと思ってる。聞いてくれるか?」
「あ、はい…分かりました?」
「あれは、俺がまだお前みたいに小さかった頃の話だ」
─ 20年前 ─
昔々、と言っても割と最近の話なんだけど…俺はロデオン、王都ロデスで騎士見習いの職に就いている者だ。騎士見習いだが、剣の腕に関しては…騎士のもう一つ上の職の聖騎士にも引けを取らない腕だった。なので、同期の騎士見習い達とは練習試合にもならない。そんな俺の練習相手になってくれたのが…
「おい、ロデオン?お前の本気はそんな物か?」
「クソォッ…まだまだぁ!」
俺がまだ餓鬼んちょの頃に聖騎士長を務めていた「ラウアー・レペゼール」さんだ。ラウアーとは騎士見習いになる前からの知り合いで、生まれて間もなく両親を失った俺の育ての親になってくれたんだ。と言っても、ラウアーは生憎戦う事しか教えられない。だから、いつも俺に剣の指導を毎日してくれたんだ!その時の俺にとって、ラウアーは憧れ以外の何者でもなかったよ…自分の命以上に大事な存在だったんだ。そうして、今日もラウアーと剣の修行をしているという訳だ。
「ラウアー?俺はいつになったら騎士見習いを卒業出来るんだ?」
「お前の実力は凄まじいが、経験が浅い。まぁ、そう焦る事はねぇ!いずれその時が来るさ、そもそもの話…まだ12で騎士見習いになれる事すら凄い事なんだからな?」
「俺は凄くねぇよ、これくらい当たり前だ」
俺がそう言うと、ラウアーは思いっきり俺の頭に拳骨した。
「つーぅ!?……何すんだよ、ラウアー!」
「まだ12の癖にそんな大人みたいな事言うな!」
「けどよぉ…」
「それに、当たり前な事なんかどこにも存在しない…」
「どういう事だ、ラウアー?」
「今からお前に良い言葉を教えてやる…人間はな、そいつ自身が頑張ればそれが宝物になるんだ。どんなに小さい事でも良い、大切な物かどうかを決めるのはそいつ自身だ」
「なに当たり前な事言って…」
また拳骨された。
「だからお前みたいな餓鬼が大人みたいな事言うんじゃねぇよ、良いか?お前等餓鬼は『今』を楽しめば良いんだ、将来は大人になっても好きに変えられる。だから、今後俺の前で『当たり前』と言う言葉を使うのは禁止にする!」
「何だよー、その訳の分からねぇ約束はぁ?」
─ 現在 ─
「それが…俺の師匠、ラウアーと最期に交わした言葉だった」
「さ、『最期』ってどういう意味ですか?」
すると、怒りで顔が染まったロデオンさんは重い口を開いてこう話した。
「ラウアーはな…勇者によって殺されたんだ」
「なっ…!?」
ゆ、勇者に殺された!?例え勇者でも人を、しかも何の罪もない人を殺すのは御法度のはず…それに、この町の聖騎士長という大きな役割を持つ人が殺されたのなら、最悪の歴史として語られているはず…
「そ、そんな話聞いた事がありません…初耳です」
「そうだろうな?だって、アイツが…バリカンがその事実を揉み消したんだから!」
やはりそうか…ロデオンさんの師匠を殺したのはバリカンではないものの、その事件に関与しているなら話は違う。
「だから…ラウアーの仇を…俺が取る…!!」
そう言って、ロデオンさんはバリカンに襲い掛かった。しかも、俺との戦い以上のスピードとパワーで…
「おらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおら…!!」
「遅い…そんな緩い拳で私に傷を付けれるとでも思っているのかな?」
ロデオンさんの剣のスピードは凄まじかったが、それを全くもろともしなかったバリカンは容赦なくロデオンの肩に剣を突き刺す。
「グゥッ!?」
「どうした?先程までの威勢は何処に行ったのやら?」
「ま、まだだぁ!!」
すると、ロデオンさんは見た事のある技を使いだした。まさか、あれは…
「『神剣・クロニカル・四の技〈断〉』!!」
「これは…セイバーの技を真似したのか…?」
そう、俺しか使えないはずの「神剣・クロニカル」を使ったのだ。しかも、再現度がかなり高い…怒りで新たなる力が目覚めたのか?ロデオンさんはその技でバリカンを圧倒していた。
「どうした勇者様?アンタの力はこんなものか、おぉん?」
「思い上がるなよ、聖騎士長の分際で僕を愚弄するなぁ!!」
次の瞬間、バリカンが放った剣がロデオンさんの腹を貫いた。
「かはぁっ…!?」
「フフッ…所詮聖騎士長の実力はこの程度だ」
「ロデオンさん!?」
俺は急いでロデオンさんの元へ走った。
「ロデオンさん、しっかりしてください!今、傷を塞ぐので…」
傷が深い、早く手当てしないと死んでしまう!しかし、ロデオンさんは治療の途中で立ち上がった。
「セイバァー…治療はこの戦いが終わってからにしてくれ…」
「駄目ですよ、このままだと貴方は死んでしまう!」
「死んでも良い、ラウアーと約束したんだ、あの時にぃぃっ!」
─ 20年前 ─
「何で…何で何で何で!?」
(城が燃えている)
俺はラウアーが居る城が目の前で燃えているのをただ眺める事しか出来ないのか?いいや、俺も見習いとはいえ、騎士の端くれだ!俺は火傷・酸欠覚悟で燃え盛る城の中へと駆け込んだ。
城の中の燃え具合は尋常じゃなかった。城内の一部が炭化して崩れていた…いいや、そんな事はどうでも良いんだ。早くラウアーを見つけなくては…きっと、城の異変に気付いて脱出しようとしているのかもしれない!俺は希望を胸にラウアーの居る部屋へと走った。しかし、俺を待ち受けていたのは─
「ぐふっ…ロ、ロデオン…まだ稽古がしたいのか?」
腹からたくさんの血を流しているラウアーだった。
「ラ、ラウアー!?どうしたんだよ、その傷!?」
「どうやら俺は…勇者様に嫌われていたみたいだ…」
ゆ、勇者!?この世界に十人しか居ないと云われている伝説の存在に…何故ラウアーが狙われたんだ!?
「ど、どういう意味だよ!?何で勇者に嫌われただけでこんな事されなきゃいけないんだよ!?」
俺が泣きながらラウアーにそう問いかけると、ラウアーは泣きながらこう答えたんだ。
「この世界じゃ…勇者様の言う事、取る行動全てが…絶対だ。俺は勇者様…いや、勇者を騙る極悪人に嫌われたから…邪魔だから殺される…それだけに過ぎねぇ…」
「何で…ラウアーは何も悪い事もしていないのに、何で…勇者って弱き者を助け、救いの手を差し伸べる平和の象徴じゃないのか?」
「確かに…一昔まではそうだった…だが、最近の勇者は…名前だけの人殺しだ!」
「ひ、人殺し!?」
「あぁ、民は守る者ではなく…搾取する為に存在する者に変わり、自分が最強に在りたいが為に強い者を平然と殺す…今の俺がそうだ…」
「そ、そんな…それだけの理由でラウアーは襲われたのか…!?勇者め…俺が仇を取ってやる…」
「ロデオン…俺はもう…助からない…だから、最期の言葉を聞いてくれるか?」
「あぁ…」
ラウアーは最後の力を振り絞って、俺にこう言葉を投げた。
「俺より強い騎士…いや、聖騎士長になるんだぞ?これが、俺との最期の約束だ…」
「ヒグッ…うん、俺はいつか…ラウアーを超える聖騎士長に…」
俺がそう言い切る前に、ラウアーの体から力が抜けていった。
「何で…幸せって…儚いんだな?ラウアー…」
─ 現在 ─
そうか、ロデオンさんは師匠であるラウアーさんに誓ったんだな…だから、勇者が相手でも戦いを止めようとはしなかったんだな?
「だからよぉ…俺は死んでもコイツに勝つ!この体が…二度と使い物にならなくなったとしても!!」
(セイバー、ロデオンに平手打ちをする)
「ぐふぉっ…!?」
俺は怒りの感情をロデオンさんに向けながら彼の裾を掴んだ。
「何で死のうとしたんですか?」
「それがラウアーの望みだからだ!」
「ラウアーさんはそんな事望んじゃいない、貴方に強く生きて欲しかったんじゃないんですか!」
「でも、アイツの仇だ…俺は死んでもその責務を全うする!」
「死ぬなんて馬鹿げた事言ってんじゃねぇ!」
「なっ…!?」
「良いか、死ぬのは人間が一番犯しちゃいけねぇ罪だ!それに、死のうとするのは強い人間がする事じゃねぇ、弱い人間が取る最悪で卑怯な事だ!」
「セイバー…でも、天国に居るラウアーに合わせる顔がねぇよ…」
俺の激昂に胸を打たれ、改心したロデオンさんだったが…同時に自身への無力感から生まれた絶望が彼の顔を支配した。そんなロデオンさんに俺は笑顔でこう言葉を投げた。
「安心してください、貴方の苦しみ、怒り、悔しさ…俺が全て代行致します」
俺はそう言うと、バリカンの目の前に立ち、彼にこう警告した。
「おい、外道の息子?ここで一つ警告しておく…お前の親父をここに連れて来い。さもないとお前を殺す」
すると、その答えを待っていたかの様にバリカンは何かを召喚した。
「へっへっへ…正直お前と一対一だと勝機がない…だから、お父さんをいつでも召喚出来る様に準備してたんだよ?」
「もう儂の出番か…目の前に居る奴が、儂の息子を愚弄した極悪人か?」
「アイツが…ラウアーをっ…!!」
話しを聞く限り、会話に応じるつもりはないらしい。まぁ、その方が都合が良い…だって、強い奴が二人も…こんなにゾクゾクする事は滅多に無いぞ?戦いを楽しむのも大事だが、ロデオンさんの恨みも背負っている…さて、伝説の勇者二人が相手…どう楽しもうかなぁ!
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