第五章 国王会議 第四話 進化する邪神族v.s〈獣仁志・創神〉の弟子

 俺は挨拶代わりにアイマの腹部を変色剣で斬り裂いた。




「ぐうあぁぁぁ!?」


「おいおい、この程度の攻撃でそこまで大袈裟に痛がる事はないだろう?それとも、進化前のお前みたいに、変身しても中身はへなちょこなままなのかぁ~(煽り)?」




俺が少し挑発すると、アイマは顔を真っ赤にして俺に突撃して来た。ここは攻撃を避けるのが善策だが、奴の攻撃がどのくらい強いのか確かめたいし…腕一本で受けてみよう。




「思い上がるなよ、獣人族がぁぁぁ!!」




(アイマの攻撃がセイバーに命中する)


(セイバー、衝撃で体が5回転する)




「ぐぅおおおっ!?」




俺よりレベルは低いとはいえ、流石は伝説の〈邪王四皇聖〉…たった一発の拳でここまでの威力を出すとは…だが、お前の本気はこの程度じゃないんだろう?俺はすぐに体勢を直し、アイマの次の攻撃に備えた。




「フフッ…どうだ、さっきの攻撃で君の体力はかなり減ったんじゃないか?」


「そっちこそ、さっきの攻撃は後先考えずに放った物としか思えない…もう防御だけで手一杯って感じじゃないのかなぁ~?」


「甘いな、アレが僕の本気だと勘違いしているみたいだね…実は、今の形態はまだ最終形態じじゃないんだ。でも、いきなり最終形態で戦うのもつまらないから…少しずつ変身していこうかな?次は第二形態だ!」




アイマがそう言うと、彼の体が光り出した。進化の形態が変わると体に起こる変化にも差が生まれてくるという事だな?だが、アイマは俺の事を想像の何百倍も弱く見積もっているみたいだ。なるほど、やはり〈邪王四皇聖〉という事もあってある程度のプライドを持っているみたいだ。じゃあ、そのプライドを持った事を後悔させる程の絶望を少しずつ味あわせるだけだ。フフッ、確かにアイマは強い。だが、俺は伝説の〈獣仁志・創神〉に毎日稽古を付けてもらっている。その稽古の辛さと比べれば、お前の今の力なんか痛くも痒くもないという事!!




「これが第二形態だ…言っておくけど、僕の全力はこの程度ではない。あともう一段階上の形態があるからね?」


「それを見る為には…今の形態の攻撃を凌ぐしかないという事か?」


「あぁ、そうさ?でも、君はこの形態での攻撃で悪くて即死、良くても全身麻痺状態になるからさ…僕と戦う羽目になった事を後悔するんだね!!」




そう言うと、アイマはさっきの攻撃より速く強烈な拳を構えて突進してきた。なぁーる程、これが第二形態の力か…想定の範囲内の進化内容だな?俺はもう一度敢えて腕一本で攻撃を受ける事にした。




「また腕一本で僕の攻撃を受けるつもりなのか!だが、今度はさっきの様にはいかないぞ!」


「あぁ、もしかしたら…俺の腕が使えなくなるかもしれねぇな(煽り)?」


「この攻撃を前にしてまだそんな戯言を…死んでも後悔しないでくれよぉ!?」




(アイマの攻撃がセイバーの右腕に着弾する)


(衝撃波による爆発が起こる)




「うぅっ…お兄ちゃん、信じているからね…」


「これが…〈邪王四皇聖〉の力…でも、なんだかセイバーの奴…さっきから余裕そうに戦っているけど…」




そう、ミネラルアの言う通りだ。そもそもの話、俺はアイマを敵として見ていない。だって…




(セイバー、アイマの攻撃を受けた右腕を即座に回復させる)




「なぁっ…!?僕の攻撃によるダメージをほぼなかった事にしてるだと!?」


「あぁ、この程度のダメージは…想定の範囲内だから(煽り)?」


「へぇ…まさかこの攻撃をも耐えるなんて…これは、僕の全力を出して良い相手だという事になるね?」


「何だ、まだ本気を出していなかったのか?通りで攻撃の速度といい、威力といい、生温く感じた訳だ」


「何だと…(怒)?」


「早く本気を出してくれよ?あぁ、言っとくけど…お前は俺が全力を出す間もなく力尽きるだろう」


「フフッ…まさか、僕をここまでコケにするとは…相当死にたいみたいだねぇっ!!」




よし、上手く挑発出来たみたいだ。これでようやく少しは本気で戦えるぞ…




「見るがいい…これが僕の全てだぁ!!」




アイマはそう言うと、彼の体が今度は深い闇に包まれた。え、ナニアレ?もしや、俗に言う「厨二病」が憧れる「闇の力」と言うヤツなのぉ?まぁ、アレは彼等から見れば目標の代物だが、俺から見れば「超次元大戦」でもない限りあんな痛い物は見たくもないんですけどぉ?その闇が暫くアイマの体を包み込んだ後に、奴の最終形態が姿を現した。




「フハハハハハ!!これが、僕の…至高なる姿だ!」




ほう、それがお前の全てか…思っていたより強い力を感じるな?これは、思っていたより戦いを楽しめそうだ!




「それがお前の全てか…かかって来い、お前の全力に敬意を示して、全力で相手してやる。兄貴の仇を取りたいんだろう?だったら、ここで無様に負ける訳にはいかないだろう?」


「あぁ、そうさ…この力さえあれば、僕は敗けない!」




アイマはそう言うと、先程とは比べ物にならないスピードとパワーで俺を強く吹き飛ばした。おっと、少しばかり油断し過ぎたか。だが、ただやられる訳にもいかないんだよな?俺は右手に変色剣を、左手にダイヤの剣を構えてアイマの攻撃に備えた。




「まだまだ!『破光線・究極・十二連』!」


「〈万物の道具・琵琶の盾&幸の弓〉!」




(セイバーの攻撃とアイマの攻撃が打ち消し合った)


ほう、俺の〈万物の道具〉の攻撃を打ち消すか…




「おい?お前はロリアンより強い力を持っている…殺すのは惜しいよ?」


「それはこちらも同じだ、君は強い、僕の攻撃をほぼノーダメージで耐えきっているじゃないか?これは僕達〈邪神族〉にとっては大号外物だよ、願うのなら…君と高みを目指したいよ?」


「けれども、俺とお前は敵同士…」


「話し合う事等出来ない…」


「「だから、この戦いを以って…悔いなきものとする!」」




俺とアイマは互いに剣で応戦した。




「す…凄いわ…伝説の〈邪王四皇聖〉と互角に渡り合ってるわ…」


「流石お兄ちゃん…でも?」


「『でも?』…?」


「何だかお兄ちゃんは全力で戦っていなさそうだよ?」


「え!?あのレベルの敵を前に手を抜いているって事なの!?」




あぁ、ローズには見破られていたか…そう、俺はまだ全力を出していない。理由は一つだ。




(セイバーの剣がアイマに弾き飛ばされる)




「ぐうぅっ!?」


「フン、剣がなければ戦う事は出来ないだろう?」


「クソォッ…」




俺が剣を取りに行く猶予も与えられないまま、アイマは俺に追撃を与えてきた。




「これで終わりにしてやる!覚悟しろ、ロリアン様の仇だぁー!!」




この状況、傍から見れば大ピンチだろう?でも、俺は余裕そうにその攻撃を待ち構えていた。何故なら、ようやく本気を出せるからだ。




「はぁーっ!!君の人生の最期の華、盛大に咲かせてあげるよ!」


「では、俺も一言言うとしよう」




俺は自身の体にある魔法を付与した。そして、勝利を信じるアイマに向けてこう言い放った。




「一体いつから、俺から武器を取れば勝てると錯覚していた?」


「なっ…!?」




アイマの攻撃は俺の心臓部分に命中した…だが、残念ながら俺を殺す事は出来なかったみたいだな?




『な、何故なんだ!?僕の渾身の攻撃を防御なしで耐えただと!?コイツの体は鋼鉄の様に硬いのか?いやいや、僕の今の姿の攻撃はどんなに硬い物質でも粉々に砕く事が出来るはず…それなのに、全く攻撃が通用していないだと!?』


「どうした?お前の本気はこんなものか?」


「ま、まだまだぁー!!」




アイマはひたすらに攻撃を続けた。全ての攻撃が即死レベルの超威力の攻撃だ。しかし、その攻撃が俺に通用する事はなかった。やはり、サファイアルさんから教わったこの魔法は重宝出来る。だって、伝説の〈邪王四皇聖〉の攻撃を無効か出来る上に長時間効果が続くのだから。このままアイマの体力が切れるのを待つのも良いが、それでは戦いが楽しめないからな?俺は反撃する事にした。


(セイバー、アイマをデコピンで弾き飛ばす)




「がはぁっ!?」


「おいおい?ただのデコピンでそんなに痛がるなよ?」


「フンッ…さっきの攻撃は偶然僕の力を一瞬上回っただけだ!今度は上手く行かないぞ!」


「そうさ、その気で掛かって来ないと…準備運動にもならない(煽り)!」


「そうか…そんなに僕を怒らせるのが楽しいか…舐めんじゃんねぇよ、獣人族の分際でぇー!!」




よし、また上手く挑発出来た。これで奴は俺に集中して戦ってくれるはずだ…奴が全力を超えた力で戦うのなら、俺も少しは力を見せないといけないよな?




「このおっ…このこのぉっ!!」


「どうした?攻撃が滅茶苦茶になっているぞ?」


「黙れ、獣人族の分際でこの僕を愚弄するとは…万死に値する!」


「はぁ…もう良いよ?」


「何だと…!?」


「一つ言っておこう…俺より弱いのに、強い言葉ばかり使うんじゃないよ?余計に雑魚みたいに見えて仕方なくなるぞ?」


「この野郎…もう…お前を残酷なやり方で殺してやる(殺)…!」




ほう、まだ上の力が…いや違う!?さらに進化しようとしているのか?面白い、そう来ないと楽しめなかったからな?




「はぁぁぁぁぁぁーっ!!」




アイマの体が赤い光に包まれ、進化の際に汚い血が大量に溢れ出ていた。




「はぁっ…はぁっ…どうだ!まだ僕は進化する…お前を遥か凌ぐ力を僕は手に入れた!さぁ、絶望に染まるがいい!!」




あ、はーい。思ったより強くならなかったから…もう終わりにしてやる。俺はあの技を発動した。




「『神剣・クロニカル・最終奥義・十の技〈創造〉』!!」


「フン、そんな攻撃如きで…何っ!?」




俺の技がアイマの体を斬り裂いた。




『馬鹿なっ…更なる力を手に入れた僕が…たった一発の剣技で…体を裂かれるだと!?だが、心臓は残っている…まだ戦える!』


「と、思ったでしょ?でも、この『絶眼』の前ではそんなのうたかたの希望に過ぎねぇんだよ?」


「何だと!?」


「『絶眼』よ、アイマの心臓を全て貫け!」




俺は体が崩れて露わになったアイマの心臓を全て「絶眼」で貫き、破壊した。




「がはぁっ…!?」


「チェックメイトだな?お前の負けだ、アイマ…」


『馬鹿な…この僕が敗ける…だと!?…………ロリアン様、仇を討てずに申し訳ない…』


『気にするな、お前はよく戦ったよ?』


『ロリアン様…?』


『俺達が居なくなっても、アイツ等が仇を取ってくれるさ?だから、俺達はそれを空で見守るとしようじゃないか?』


『そうですね…アイザン、メリアル…あとは託しましたよ?』




心の中でロリアンとアイマが会話している…死に際の兄弟の最期の会話か…なんか殺したのが後ろめたくなってきたんですけど?それに、あの言葉が少し引っ掛かるんだよな?




『危険を…排除…?ふざけるな、君はまだ何も知らない、何故僕達があんな罪を犯す事になったのか、好きで人々を殺した訳じゃない、仕方の無かった事なんだ!』




もしかしたら、サファイアルさんなら何か知っているのかもしれな…


(セイバー、謎の頭痛に襲われる)


グゥッ!?何だ!?いきなり変な頭痛に襲われたんだけど!?これは…簡単に解決出来る疑問ではなさそうだな?まぁ、脅威は無事に排除出来た訳だし…ミッションコンプリート、犠牲者0で済んだぞ!




「お兄ちゃーん!」


「セイバー!」




戦闘が終わり、ローズとミネラルアが俺の元へ駆け寄ってきた。




「アンタ凄いわね?伝説の〈邪王四皇聖〉を倒しちゃうなんて…決めたわ、アタシ…」


「何だ?もったいぶらず早く言いなよ?」


「アンタの弟子になるわ!」




…………え?………え?……え?…えぇーっ!?




「い、良いのか!?俺まだ15歳だけど!?」


「えぇーっ!?アンタアタシの10分の1しか生きてないじゃないの!?それなのに、アンタ桁外れな力を持っているんて…余計に楽しくなったわ、アンタを師匠として見る事にしたわ!」


「あのぉ~?貴方この島で一番の強さを誇る〈トライデント・キャラバン〉のメンバーですよね?そのプライドはないんですか?」


「まぁ…あの苦しみと比べれば屁でもないわ!」




マ、マジかよ…という訳で、俺、セイバー・クラニカル…初めての弟子をゲットしました。




 ライアナに帰ってからの話です。


「僕も弟子になるミャウ!」


「わっちもぉー!」


「私も…弟子にしてください!」




えぇっ!?んんえぇっ!?何でこうなったのかな?




「セイバーさん、リーダー達は強い人が大好きなんですよ?」


「ネルヴィンさん?それは一体どういう事ですか?」


「まぁ、俗に言う『強い男は大好きよ♡』という事ですよ?」




マ、マジかよ…という訳で、〈邪王四皇聖〉をもう一人討伐&弟子が四人になりました。チャンチャン♪


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る