第四章 「無」の少女と「真面目」な囚人 第二話 エッチなあの子と無知なその子(part2)

 受け付けの人曰く…


「しかし、このクエストに協力して下さる方が貴方達しか居ないという厳しい現実がございます。なので、仲間集めをしてはいかがでしょうか?」


と、言われたはいいものの…仲間集めって…伝手が全くないからな。困ったものだ…




「ミャーウ…」




なぁーんかさっきからスノウがある一定方向をずーっと見つめ続けているんだよな?まるで、何かお宝でも見つけたかのような雰囲気で。




「スノウ?何か気になる事でもあるのか?」


「ミャウ、なんかさっきからこっちをずーっと見ている人が居る様な気が…」




これが「野生の勘」と言うヤツか?人間族と獣人族のハーフの俺には全く気付かなかったが、誰かに監視されているという事か?気になるな、少しカマを掛けてみるか。俺は〈闇属性・超級「影分身」〉を使用し、俺達と同じ数の分身体を生成して少し歩かせてみせた。すると、建物の陰から一人の少女が現れた。そこですかさずスノウが彼女を取り押さえた。




「イタタッ…」


「僕達の何の用ミャウ…ってマヤ!?」


「ス、スノウ様…すみません…」




マヤ…確か〈トライデント・キャラバン〉のメンバーの中にそんな名前の奴が居た気がする。となれば三人目を発見したという事になるが、まさか、こんな形で発見する事になるとは…しかし、不審者に付き纏われている訳ではなかったので良かった。そもそも、彼女は何故俺達を尾行していたんだ?まさか、俺達の秘密を武器に脅しにでも来たのか!?




「何故…〈獣仁志・創神〉と生活しているのですか!?」


「へ?」


「そ、その御方は伝説と謳われる存在…スノウ様と同じ道を歩くべき存在ではないんです…!!」




俺は彼女の口を塞いだ。マズい、町のど真ん中でこんな大きな秘密をバラされでもしてみろ?町中が大パニックになるぞ!?危ない危ない、危うく大きな秘密が公開される所だったよ。




「も、もごごごご!?もごもごごぉー!!」


「少し黙ってろ、そんな秘密をここでバラすな!」


「す、すみません…」


「それと…」




ずっと気にはしてたが…俺の体にずーっと抱き付く人が居た。そう、それは店を出た時からずっと…




「サクシャイン?いい加減俺から離れてくれよ?」


「えぇ~?良いじゃないかや、お主から離れたくないんじゃ!」


「サ、サクシャインさん…?この女たらし、サクシャインさんに何をした!」


「え!?俺は何もしていないぞ、どちらかと言うとサクシャインが俺に抱き付きたいって言うからこうなっただけで…」


「言い訳ですか…問答無用、マヤ・スプリング…貴方の心ごと滅してみせます!」




えぇ…ここで戦うのぉ?普通に考えて迷惑になるって分からないのかなぁ?仕方ない、俺の〈無属性〉魔法で無力化するか…俺が魔法を放とうとした時だった─


(スノウ、マヤに拳骨)




「もう、ここで戦うなんて常識知らずにも程があるミャウ!」


「イタタァー…何するんですか、スノウ様!私は聖なる裁きをこの男擬きに与えようとしただけなのに!」


「おーい?誰が『男擬き』だってぇー?お兄さん怒っちゃうよぉ~、こっちが聖なる裁きを与えちゃうよぉ~?」


「コ、コイツ…私の方が、何百歳も年上なんだよ!!」




あ、煽っちゃった。仕方ない、今度こそこの技で無力化しよう。




「『無属性・超級〈魂食【ソウル・イーター】〉』…一旦宿へ帰ろうか?そこで話は聞いてやる」


「うぅっ…!?」




よし、発動成功だな?正直無属性の魔法を使うのは久し振りだったから成功するか正直不安だったが、何とか成功して良かったよ…あれ、今何で「正直」って二回も言ったの、俺?




「とりあえず、彼女は仲間になるとして…」


「仲間になる事前提で話を進めるの止めません?想定がズレたらその後の展開がグチャグチャになるんで!」


「とりあえず、彼女は仲間になるとして…」


「話を聞けぇー!!」




はぁ、まさかここで「一方通行ゲーム」が始まるとは…とにかく、いつまでもこうしている訳にもいかないし…早く宿へ向かって話を聞いてあげなくては…俺はサクシャインを背負い、マヤを担いで皆と一緒に近くの宿まで向かうつもりだったが、宿がどこも空き部屋がないとの事だったので、サファイアルさんが「エリア・バキューム」で大きな家を召喚してそこに寝泊まりする事にした。あれ?広告が落ちてる…俺はそれを拾った。そこに書いてあったのは…




「『指名手配『ネルヴィン・レルリアム』、情報求む』…か。あれ?この名前もどこかで聞いた事がある様な…」




まぁ、彼についての話はまた今度にしよう。




 暫く経ってサファイアルさんの家の中。マヤは俺の目の前で目を覚ました。




「あれ…ここは?」


「サファイアルさんの家の中だ。それにしても、俺のレベルが分かるのに喧嘩を売って来るとは…度胸はあるんだな?」


「ア、アンタは…!」




やっぱり、まだ俺に敵意を見せている。実際、こちらに槍を向けているし…全く、これだから女心とは分からないものなのだよ。ていうか、何でアイツは俺に敵意丸出しな訳!?確かにサクシャインの醜態は凄まじかったけど、俺は何もしてないよ!?




「サクシャインさんみたいに私の事も堕とすつもりなのね、でもそうはいかないわ!」


「あ、あのさ?俺は別にそんな事するつもりなんか欠片もないから…」


「黙れ、この淫乱男擬きが!」


「あ(怒)?やんのかこら?おぉん?初対面の相手に掛けるべき言葉じゃねぇよ、少し頭を使ってから言葉を使え!」


「い、淫乱男擬きじゃないの!?」


「淫乱男擬きじゃないよ!」


「え、嘘でしょ!?その見た目、性格、性癖…全てをとって淫乱男擬きだと思っていたわ」


「お前の中で俺の印象どうなってんだよ、全てをとってもお前の勘違いとしか言いようがねぇよ!」




俺がそう言い終えると、何と彼女は敵意から反転…




「体で御奉仕します…」




俺に抱き付いて来たのだ。え?何?獣人族の女って常に性欲がフルスロットルしてる仕組みになってるの?だとしたら迷惑な事この上ないんですけど?




「い、良いから!誤解が解ければそれで良いから!」


「そ、そうですか…てっきり男の人って女のア〇ルにペ○スを○れないと怒りが収まらない者だと思っていましたが、貴方は違うんですね?」


「お前は男を何だと思ってんだ、そんな卑猥な事しないと落ち着かない程男はムラムラしてねぇわ!」




ヤ、ヤベェなコイツの脳内での偏見…危うく男の人格を勝手に決めつけられて炎上する所だったよ。そもそも、確か〈トライデント・キャラバン〉のマヤって色々な事に無関心の「The 無」の女だったと聞く。その彼女が何故こんな卑猥な言葉を発しているのか不思議だった。あーもう、俺の中で〈トライデント・キャラバン〉の印象ががらりと変わってしまうなぁー…恐らく今後登場するメンバー達も何かしらギャップがあるのだろう。あ、そうだ。これを聞いておかないと…




「それでマヤさん?何でサクシャインが俺に抱き付く姿を見てあんなに怒っていたんだ?」


「じ、実は…サクシャインさんは昔から男嫌いで有名で、例えどんなにイケメンな男にも振り向かない程男が嫌いだったんです」




あ、あの淫乱猫が「男嫌い」?全く想像もつかない…いや、想像出来ない。四六時中俺に抱き付くあのエッチなあの子が…何があったら「男嫌い」から「男好き」に180°シフトチェンジするんだ!?




「ち、ちなみに?いつまで「男嫌い」だったんだ?」


「少なくとも私達がバラバラになる二週間前まではそうだったと思います」




に、二週間でそんなに大きな変化が訪れるとは到底思えないが?まぁ、実際今も彼女は俺にべったりだ。しかも、サクシャインは胸が恐らくG以上はあるので何だか締め付けられているみたいでキツイ…




「でも、あのサクシャインさんが貴方にここまで懐いてくれて良かったです。私、心配してたんです…あの人はあのままだったら運命の人にも出会えないまま一生を終えてしまうと思っていたので…ありがとうございます、えっと、名前は?」


「セイバー、『セイバー・クラニカル』だ」


「セイバーさん、ありがとうございます。彼女の運命の相手になってくれて」




へ?「運命の相手」?




「い、いやいやいやいや!?俺とサクシャインが『運命の相手』だなんて…俺には到底釣り合わない人だよ!」


「そんな照れなくても良いじゃないですか?それに、貴方は無自覚に女性を引き付ける力があるみたいです。もしや、『好眼』を持っていたりしますか?」


「ま…まぁ、少し前まで持っていたが…交換してもらった」


「交換…魔眼とは交換できる物なのですか?」


「あぁ、サファイアルさんの能力の賜物だ」


「流石は〈獣仁志・創神〉…」




あ、そういえばさっきの時間で拾ったこの手配書の事も聞かないといけないんだった。俺の予想が当たっていればこの人もスノウ達の仲間という事になる。




「この手配書の名前に心覚えはないかな?」


「あぁ、ネルヴィン君ね?私の弟だから名前だけじゃなくて顔も覚えているよ…でも、まさか手配書で再会するとは思わなんだぁ…あの子何してるんだか」




やはりそうか、この男は〈トライデント・キャラバン〉のメンバー、「ネルヴィン・レルリアム」本人に間違いない。あの、この人仮にも冒険者ですよね?何で監獄に投降されているんですか、何か悪い事でもしたんですか、だとしたら資格剝奪されててもおかしくはないですよね?まぁ、彼に会ったら話を聞こう。ここで話していても埒が明かないし、今日はもう寝よう。




「マヤさん?」


「マヤで良い、『さん付け』はうずうずする」


「『うずうずする』って何?もしやお前もムラムラしてたりしする?」


「ち、違うわよ!別に○V見て○コ○コしてるからってセイバーとセ〇クスしたい訳じゃないから!」


『すっげぇ生々しい事言ってるんですけどぉー!?聞きたくないんですけどぉー!?』


「そ、そんな事は後にするとして…『今日はこの部屋を貸してやる』、そうサファイアルさんが言ってたからこの部屋を自由に使って良いぞ?」


「あ、ありがと…その、少しチ○コ舐めて良い?」


「駄目に決まってんでしょーが、そんな卑猥な表現、ヤ○グジャ○プは許してもこのサイトが許す訳がないだろうが!」


「は~い!」


「何だよその不貞腐れた返事は、言っとくけどサクシャインにもそんな事してないから!」




はぁ…ここにも「隠れ変態」が居たな、おい?まぁ、犬猿の仲は解消出来たので良しとしますか。そんな訳で、魔王討伐の仲間集めは明日以降にしますか。




 あれから数日が過ぎて、俺達は何とか20人の仲間を集める事に成功した。しかし、全員サファイアルさんと顔見知りらしい。しかも今後とも力になるとの事…いやぁー、彼が居なかったら何も出来なかっただろうな。いやぁー、感謝カンゲキ雨嵐ですよ!そういう訳で、俺達は魔王を討伐しに…




「たぁーすけてくれぇー!!」




向かおうと思ったが、その前に一つ大きな問題にぶつかったみたいだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る